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私は幽霊はさほど怖くはない。というか、ザクロ君がここまで怯えていると、ここまでは怖くないなと冷静になるのだった。けれど、ザクロ君はそこで退かない。


「……小夜子も行くなら僕も行く」

「えっ?」

「相手が幽霊なら小夜子の盾は一人でも多い方がいい」


ザクロ君は決心したかのように私の名前を出した。この中で一番小さい体をしているのに、一番大きな体の私を守ろうとしてくれている。

女の子の前で格好悪い事はできない、というより女の子だけは守らなければならない、という気持ちが強いのかもしれない。

それにしても、ザクロ君の中で幽霊はどれだけ強く恐ろしい存在なのだろう。






■■■






初等部の生徒が中等部に入るというのは思っているより簡単だ。エスカレーター式の学校はなにかと合同で何かする機会が多いから、生徒であれば受付で理由をかけば簡単に許可を得られる。


初等部からやや歩いた所に中等部はあって、リーチ君は受付の人に話を通す。

『研究課題のための資料を探しているけど初等部にはないから中等部の図書室を探したい』

そんな理由で私達四人は中等部の図書室に入る許可を得た。

ちなみに今日は図書室の解放日ではないらしいが、その辺りの事情は幽霊には関係ないだろう。


「僕、中等部の図書室はじめて」

「初等部のとは違うからたすくも楽しめるんじゃないか?」

「うん。でも目的は幽霊だからね」


前を歩くリーチ君とたすく君はピクニック感が出てる。それとは真逆に私の隣のザクロ君は震えている。


図書室は噂のせいか、周囲に人はほぼいなかった。私達はまず卒業アルバムコーナーを見る。当然誰もいない。


「幽霊が出るってのはここ、持ち出し禁止の本コーナーだったな」

「うん。卒業アルバムは悪用する人もいるからね」

「じゃあ二手に別れて隠れよう。こっちの鍵つき本棚の裏と、あっちの図書委員のカウンターな」


言うとザクロ君がたすく君の背後にそっと寄った。

たすく君は幽霊を信じてないし背が高い。ザクロ君が『側にいて一番安全』と判断したのだろう。

リーチ君じゃからかいそうだし、私はザクロ君にとって守るべき存在らしいから消去法でもある。


だから私とリーチ君は普段図書委員がいるカウンター裏、たすく君とザクロ君は鍵つき本棚の影に隠れて待機する事にした。

私の体でもカウンターに隠れられるので、それには一安心だ。


「よっと」


隣にリーチ君がしゃがみこむ。リーチ君はサイズ的に全然余裕だった。


「初仕事、どうだった?」

「え?」

「ミロワールの仕事だよ。……成功したってねーちゃんからは聞いてるけどさ」


聞き返したのはその質問をされるとは思っていなかったからだ

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