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なるほど、と少しだけ私は納得した。

私がさっきの怪談をあまり怖いとは思えなかったのは幽霊よりも怖いものを知っているから。

うふふと笑う幽霊なんてご機嫌なんだから無害だ。

けれど人間は人の髪を切ったりするから有害で、私的にはこっちの方が怖い。

でもザクロ君は優れた身体能力がある。だから逃げ切れる人間を怖いとは思わないので、幽霊が怖いんだと思う。


「とにかく藤子ねーちゃんがそれ以来一人で夜トイレに行けねぇんだ。幽霊いるならなんとか解決してやりたくてさ」


藤子さん、それは内緒にして欲しかったんじゃないかな。無情にもリーチ君はそれを私達にバラす。

そんな状態なら中等部の事でもなんとかしてやりたいけど、幽霊をどうしろというのだろう。

考えがあるのか、たすく君が手を上げた。


「リーチ君、目撃者はお姉さんとお友達だけなの?」

「ん、いや、実は結構同じような事を経験した生徒もいるらしくてさ、中等部じゃ有名な話みたいだ」

「時間は?アルバムが散らばっていたならそのアルバムの世代はわかる?」


たすく君は細かく状況を尋ねた。

幽霊の騒ぎになっているけれど、自然現象や人間の行動が複雑に絡み合い、幽霊のせいにされているだけかもしれない。

その可能性を考えて、たすく君は確認している。

多分、たすく君なら証言や状況を全て記憶して矛盾をつきとめられるだろう。


「何人かはねーちゃんから聞いてる。あ、でもアルバムは何年か前かの三年分ばかりが散らかってたって話だったな」

「何年か前で、三年分?」

「おう。だから自殺したいじめられっ子がいじめっ子達に復讐しようとしてアルバム見てるって話がまとまったんだと思う」

「それじゃ三年分も探す必要ないんじゃないかな?」

「先輩や後輩にもいじめられたかもしれねーじゃん」


噂とはいえ幽霊もなかなかに世知辛い。恨んでいる人がいてもすぐに恨みを晴らせず、卒アルで個人情報を得なきゃいけないなんて。

そう考えると幽霊説はやっぱりおかしい。


「証言は後で揃えるとして、現場を今すぐにでも確認しておきたいかな」

「ああ、だからこれから中等部に行こうと思う。早く解決したいしな」


たすく君の好奇心とリーチ君の親切心からの提案。するとザクロ君はぶるぶると震えだした。現地の確認、幽霊の居た場所に行くだなんて、幽霊が苦手なザクロ君には恐ろしい事だろう。


「いや、ザクロは来なくていいよ。怖がりなら無理すんな」

「うん。僕が覚えてリーチ君が携帯で記録すればなんとかなると思うし。あ、小夜子ちゃんは幽霊大丈夫?」

「私は大丈夫。藤子さんの事も心配だし、行くよ」

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