3

なんてわかりやすいいじめだ。

しかもいじめっこ三人は全て阿藤の元とりまき。今は太田率いるいじめっこグループだった。

そしていじめられっこは神田君という、私も知っている子だった。

神田君は眼鏡をかけた、本が好きな大人しい子だ。そしてザクロ君並みに背が低く、運動も苦手なほうだから、こんな事されたら勝ち目はない。

図書室の本は渡り廊下の屋根に投げ込まれるだろう。


だから私は太田がシュートする前の本を、上から奪い取った。


「リーチ君パス」

「ほいよー。で、神田にパス」


パスとは言っても私とリーチ君は歩いて手渡しだ。これがバスケなら反則になるけど、本は大事に扱わなくてはならない。


「おい、デカ女。俺らの遊びの邪魔してんじゃねーよ!」


太田はありきたりな文句を言う。

私はため息をついた。相手にしたくはないが、彼らは無視しても付け上がるから何か言わなきゃならない。


「身長低いのにこんな遊びやって楽しい?」

「なっ!?」

「身長高い人に割り込まれたら終わりな遊びなんて楽しい?」


シンプルな言葉だが、それが太田の心をえぐったらしい。怒りでぷるぷる震えている。

彼らは意外にもつまらない人間として扱われる事を気にするらしい。それなりにプライドはあるようだ。


「……もういいや。デカ女が関わるとほんとつまんねー」


悔し紛れに呟いてから太田達は去ってゆく。

身長で勝てないし前の一件で暴力もダメとなれば、諦めるしかないからだろう。


「こ、小松さんっ、青柳君、ありがとう!」


神田君は本を抱きしめるようにしてから私達にお礼を言ってくれた。そして遅刻してはいけないと教室へ向かう。


「太田もほんとこりねー奴だな。まぁ、そろそろ飽きてくれりゃあいいけど」

「うん……」


リーチ君もため息をついた。

いじめっこに飽きる日が来るのだろうか。こちらがマメに阻止するくらいでないと、きっと何も変える事はできない。





■■■





バドミントンは総当たり戦をして、ザクロ君→リーチ君→私→たすく君という順位の結果で終わった。やっぱりザクロ君の運動神経には勝てない。

四時間目の体育の授業が終わってお昼時間、着替えた私は教室に戻り、ゼロ組の皆と合流してからランチルームに向かう。

その前に、ゼロ組に二人のお客さんがあった。


「小夜子ちゃんっ、一緒にご飯食べよ!」

「ううん小夜子ちゃん、私と一緒に食べよ!」


一組に居たときのお友達、アリカちゃんとほしなちゃんだった。

二人は見るからに対抗意識をもって、競うように私を誘う。

ゼロ組の皆と食事をしようとしていた私は困った。


「ええと、皆で食べよっか?」


とりあえず問題回避として六人で食べようと提案してみた。しかしそれは二人の戦いに火に油を注いでしまったようだ。


「皆じゃだめ!小夜子ちゃんはアリカと食べるの!」

「ほしなと食べるんだよ!」


二人は絶対に譲らなかった。

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