比翼惨歌

透明日蝕劇場テスカトリポカ

序章


  在天願作比翼鳥 在地願爲連理枝

 (天に在りては願はくは比翼ひよくの鳥と

  地に在りては願はくは連理れんりの枝とらんと)

                          白居易『長恨歌』より


    *


 食事とは、何を食べるか以上に、誰と食べるかが重要なのだ。

 この一週間ほど、食事のたびに、私はそう強く噛みしめていた。

 今日のメニューは肉じゃがと小松菜のおひたしだ。特段ご馳走というわけではない、ごく日常的で食べ慣れた料理である。にもかかわらず、この美味と幸福感はどうしたことであろう。


 時刻はちょうど十八時。近頃は日も長くなり、この時間でも外はまだ明るいの色だ。窓から差し込んできた夕陽がちょうど逆光になって、食卓を挟んで窓側に座るユウの表情を見えづらくする。


 それにしても、まさかこうやって、一緒に食卓を囲めるような日々が来ようとは。

 私は涙腺が緩まないように努めていたが、目が多少潤んでしまうのはどうしようもないことだった。せめて笑顔だけは保とうとしているのだが、もしかすると相当に滑稽な表情になっているかもしれない。

 ユウはそんな私を見つめ、優しく微笑んでくれているようだった。きっと同じ気持ちに違いない。


「色んなことがあったけど、これからは兄弟仲良く、力を合わせて生きていこう」

「そう。もうお互いしかいない、二人だけの家族だけど、一緒ならなんだって平気だよ」


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