傘
花山パンダ
入りたい
先週自転車を盗まれた。
鍵をちゃんとしてなかったとは言えあんなボロチャリ盗まれるとは思ってなかった。
お小遣い節約のため盗まれて以来1時間半かけて歩いて登下校している。
水泳部の練習で疲れているのに歩いて下校しなくちゃいけない。
こんなに面倒なことはない。
そして今日。朝は晴れていたのに午後から大雨が降りだしていた。部活が終わっても止む様子は無い。
傘は持っていない。
「やっべ、結構雨強いよ。全然止まねぇし最悪だわ」
下駄箱で友達と雨が止まないかと少しグダる。
自転車がある時はいつも一緒にかえっていた友達だ。
「お疲れ様です!」
そんな時後輩マネージャーの佐伯が帰ろうと俺たちの横を通り過ぎた。
さすが女子、ちゃんと傘を持っている。
そして今日も可愛い。いい匂いがする。
その瞬間、俺はふと気がついた。
(これチャンスじゃねぇか?マイナスをプラスにせねば)
「佐伯って電車通学だったよね?一緒に帰ろうよ!」
俺は歩いて帰る選択肢を捨て電車に切り替えた。お小遣いよりもこちらが大事だ。
友達に別れを告げ佐伯と共に学校を出た。
俺は一時期マネージャー業も兼任してたため、仕事のやり方を教えたりしていて仲がいい。プライベートな話もできる仲だ。
そして俺は彼女に恋してた。
彼氏がいない事は確認済み。
「マネージャーどう?慣れてきた?」
「んー。そうですね。まだたまにミスったりしちゃいますけど楽しいです!」
一緒に話しながら下校する。夢みたいだ。
ただし、彼女は傘、俺はびしょ濡れという状況でなければ。
(なんとか相合傘に・・・いや、風邪ひいちゃうし傘に入れてもらうことは出来ないだろうか)
何故か心の中で下心に言い訳をする。
「今日雨強いね〜!ワイシャツがスケスケだわぁ〜」
「そうですね〜。今日は雨の中みなさん練習大変そうでしたね〜。練習中私だけ傘さしてなんか申し訳ない気分でした。」
いや、今もだよ。入れてくれ。
「いつもなら置き傘あるんだけどパクられちゃってさ〜先週自転車も盗まれるし最悪」
置き傘の件は嘘である。俺は置き傘なんてするタイプじゃない。
「あははは!ドンマイです!先輩!」
入れてくれない。
入れてくれって言えよ!って思うかもしれないが、男子高校生にとって女子にその一言を言う難しさを男なら分かるはずだ。
でもここは勇気を出して言うしかない!
「あのさ・・・」
「そういえば先輩!最近私彼氏できたんです!先輩には報告しなきゃって思って!」
「あ・・・え!?マジで!?よ、良かったじゃん!どんな人?」
「クラスメイトでサッカー部の人です」
「おめでとう!」
俺は笑顔で祝福した。
もう傘なんていらない。
俺の目に豪雨注意報。
サッカー部は嫌いだ。
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