神の山
アルスリア地方を南北に二分するロアの山脈は、その
但し、これはアレス教に根差した感性であり、アレスに反目する彼らは知った事では無しと、ロアの天地に唾吐いた。
ロア山脈の開発を見張る『監視』たちの目を金に晦ませ、山脈の東西を貫通する様に作った
部屋に続々と
全員が着席し終え、会合を始めようといった所で、最も
「ああ……」
「
その吐息に一番乗りで反応を示したのはこの場において二番目に高位な
「……今、帝都にて……
男は厳かな口調でそう語った。
「――私がここに居る意味はもうないでしょう。今日中にカルーニアへ発ちます。出立の準備を」
「そんな、
ロベリアが甲高い金切り声で、感情を爆発させた。しかし、自分がこの場で最も
「……いえ、これも偉大なる神々へ報いる為なのですね……!
「……」
男は無言でうなずいた。ロベリアを含めた
「励みなさい……
「――はい!」
男の言葉に
「それで、その、皆さん。準備を任せ、少し……一人きりにして頂きたいのですが」
「一人、ですか?」
「えぇ……神々の
「交信!?」
“交信”なる概念はロベリアたちに初耳である。されど、驚いて見上げた面々の目に映ったのは
なんということだ。きっと、あるのだろう。彼らは皆、
「ご、ごゆるりと……」
ロベリアは胸に抱いた恥を外に漏れ出さぬよう、厳かにそう発して退室する。
儀式について
その波に紛れていたロベリアは一人でそっと抜け出し、扉に耳を当てた。
「――――」
「――」
「――――――」
二人、居る。話し声から判断するならば、確実に
このままでは怪しまれてしまう。ロベリアは名残惜しそうに扉から離れた。
少し先の部屋、先程の部屋よりは幾らか生活感のある場に、ロベリアは堂々と遅参する。彼女が最も位が高い
「ロベリア様、出立の準備は
「それは結構」
そして、流れるように生活感のある机に着席し、
「長く生き残っていたダリ側の
「問題ない。
残念そうな
過ぎた事をぐちぐちと言い募る性分は彼らに無く、誰もが目新しい成果を求めて、議題は『次』の儀式へと移っていく。
「次の実験だが……素体を変えるのはどうだろう」
「確かに、リザードマンを素体にする理由……『
その言葉に獣人の
「いや……。リザードマンが素体というのは、かつての
こと議論となると、熱くなりがちな獣人の
「待て待て、理由は聖碑に合ったかも知れんが、それも今は失われている。我々がするべきはひとまず『復元』。後世の
議論時にこうして熱くなる者を抑えるのが、彼女の役回りでも合った。その言葉に、獣人の
ロベリアはそれを満足そうに見届けてから続けた。
「資金は私が用意する。やってみよう」
「おお、さすがロベリア様……!」
「次の種族は……そうだな、エルフにしよう。あれはアレス教に
「教皇区を!?」
教皇区といえばアレス教の総本山。そこへ殴り込ませる、など……。一歩間違えればジャンミー教の拠点が割れ、ややもすれば叩き潰されてしまう可能性もある。
ロベリアも当然その可能性には至っており、場のざわめきを片手で制した。十分に静まった所で激昂にも近い宣言を叫ぶ。
「
ロベリアは天を指す。無論、この支部はロア山脈をくり抜いたつくりである為に、指先にあるのは唯の『土』だが、彼らはそこに天上の神々を見た。
すぐさま跪いて拝む
「所で“レイテ”……イーテ持ちのアイツは何処に待機させていたかな……」
その呟きに
「丁度、帝都へ向かう途中、『教皇区』辺りです。ロベリア様」
「なんと! これも神々の導きか……!」
恐らく偶然であろうそれも、彼らには神の御業に思えて仕方がなかった。跪く輪にロベリアも加わり、彼らは暫くの間土に祈り、拝み続けていた。
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