兄妹

夏蓮

第1話

「お姉ちゃん、この部屋暑くない?」

少年がそう言うが、少年の姉は、ヘッドホンをつけているから、少年の声が聞こえていなかった。

この部屋が暑いのは、当たり前のことであった。

エアコンはついておらず、扇風機だけで、風通しは良いが、陽射しを直接当たっているのだから。

「…………こんなじゃ、あんまり本を読む気になれないな。かといって、宿題をやるかといえば、宿題の方がやりたくないから、することといえば、本を読むことぐらいしかないしなーー。ひとまず、喉が渇いたから、お姉ちゃんが買ってきたこの透明の飲みものでも飲むかな」

そう、言うと少年は、本を自分の身体の横におき、少年の姉が買ってきたという透明の炭酸飲料水を飲みのだった。

「………ごく、ごく………うん、これおいしいな。それにしても、お姉ちゃんもよくやるもんだよね。こんな暑いなかで勉強なんてさ」

少年は、極度の勉強嫌いであった。一方少年の姉は、県内屈指の進学校に通っているために、宿題におわれていたのだ。

それから、少年は、少しの間身体を横にして、自分に姉をじっと見るのだった。

少年の姉は、自分がじっと見られていることの気がつくと、ヘッドホンを外して少年を方を向いた。

「なに、なにかようでもあるの?」

「いいや、なにもないよ。唯見ていただけ。あ、そういえば、この部屋暑くない?」

「まあ、暑いわね。だって、もう夏だもの。暑くて当たり前だし、この暑さこそが夏って感じでしょ」

少年の姉は、そう言うとクスリと笑うのだった。

「まあ、そうかもね。………それと、お姉ちゃんこれありがとうね。おいしかったよ」

「あら、そう?それは、良かった。実は、私も初めて飲むのよね。それ」

少年の姉が、少年の横に置いてあったペットボトルを指指してそう言う。

「え?そうなの?お姉ちゃん如何いかにもこれは美味しいから飲んでみろ的な感じだったけど?」

「あら、そうだったけ。まあ、優人ゆうとが美味しいというのだからたぶん、美味しいんだろうね」

「…………お姉ちゃん、実は、僕を毒味役としたかっただけでしょ?」

「はて?なんのことやら?」

そして、少年と少年の姉は目が合うとお互いに笑うのだった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

兄妹 夏蓮 @ennka

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ