うつぼかずら

宿川花梨

第1話


妻の葬儀を終わらせるとやけ酒による二日酔いを忘れるように迎え酒をする。妻は病弱であり若すぎて死んだ。25歳という若さであった。結婚して9年目である。妻が16歳の時できちゃった婚をしたのだ。だから長女が9歳になる。妻は癌で床についた。発見が遅れ発覚した時には手後れであった。妻の遺品のパソコンを立ち上げてみる。大きなうつぼかずらの写真。妻は変わった人で真夏の暑い暑い熱帯夜のある日[あ~うつぼかずらの中で眠りたいわ]と言うので私は[え~溶けちゃわない]と言うと妻は[大丈夫よ]とごまかす。パソコンのネットでうつぼかずらを検索して[このうつぼかずらの窓から顔だけだして記念写真撮りたいわ]と言う。こういう無敵の明るさが妻の取り柄だった。私は妻のパソコンでうつぼかずらの写真に妻の顔写真を貼り付け画像加工してみる。不謹慎ながら笑いが込み上げてくるがパソコンがそのとき何かが反応したように作動し始める。今のパソコンはOSに簡単な人工知能が使われていて条件が揃えばプログラムが作動するようになっているのだ。プログラムは妻の雫の書いたらしき文章を立ち上げる。[あなたへ。こうしてあなたがこの手紙を読む頃は私は死んでいるのよね。なんだか不思議な気分。あなたは覚えているかしら?出会った頃の紅葉が繁る公園。あそこに来て。娘の楓を連れて私達の出会った頃の話をしましょう。] 


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