第32話 『探索』その8
ぼくの『保護者』からは、各種情報が逐一伝えられていた。
同僚が消えた場所は、あの晩、ぼくが社長と飲み歩いた酒場町のすぐそばだ。
そのとき、社長がうっすらと誘った場所が、きっとそれに当たるのではないか。
まあ、そう考えるのが至極妥当なようには思った。
社長が言ったのは『隠し保養施設』である。
まあ、どうせ、ろくなことはないだろうから、あまり気は進まないけれど、ここは仕事上行かねばなるまい。
そこで、休日の前日に、ぼくはタイミングを見て社長に言った。
「あの、前に飲み屋街に行ったときにおっしゃっていた『隠し保養施設』って、どこなんですか?」
「ほはああ! 興味出たかしら。うん、まあ仕事も順調でよくやってくれてるし、いいわよ。明日があなたは、お休みね。じゃあ、午前10時に、あの公園の入り口に行ってください。あすは、私、ちょっと来客があってね、全部は付き合えないけど、入口まで行って差し上げましょう。」
「あの、地球からお客様というのは聞いておりますし、社長はお忙しいでしょうから、許可と、あと場所だけ教えていただいたら、自分で行きますが・・・。」
「まあまあ、そうおっしゃらずに。いい?」
「はい。ではお願いいたします。」
「うんうん・・・・」
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地球からの来客を乗せた豪華な宇宙艇は、通常の宇宙空港ではなく、小惑星の反対側にあるB.I.P専用の空港に到着していました。
わたくしは、偵察物体を小惑星全体にばら撒いておいたので、その事実はすぐに分かったのです。
乗ってきたのは、地球政府のナンバー2である、バンク副首相と側近のターナベ氏、それから、お付きの人たち沢山と、この星の生産物に興味がきっとあるんだろう、地球企業のトップの人たち、総勢100人余りでした。
この情報は、もちろん、我が被保護者にも伝えております。
社長はじめ、この資源小惑星の偉いさんたちも、また警部部門も、大忙しで、それ以外の細かいことには、気が回りかねるでしょう。まあ、多少は。
我が被保護者は、新入りで、幹部でもなく、特にこれに関しての仕事もなく、まあ、非常に動きやすい状況、のはず、・・・でございました。
まさか、社長がまた、彼を森の入り口にまで案内に出る、と言うとは、予測しておりませんでした。
少し気には、なりましたのです。
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