『第十資源小惑星』第1部・第2部

やましん(テンパー)

【第1部】 第1話 『発端』

 課長に呼び出されたのは、今月の初め。


 あまり上昇意欲がなく、現状維持派のぼくにとっては、遠方での長期出張は歓迎してはいないことがらだ。


「こいつをあたってくれ。ちょっと長期になるかもしれないが。」


「はあ・・・『第十資源小惑星 ヘレナ』ですか。」


「そうだ。文字通り、十番目に許可された資源小惑星だ。所有者は、ミス・カンプ。謎の多い女性だ。巨大な富を築いていて、内部でなにやってるやらさっぱりわからないが、脱税や従業員の傷害や監禁などの疑いが濃い。違法なハーレムを作っているとも言われるが、しかし、容易なことではしっぽは出さない。帰還者は記憶の一部を消去されているらしいが、立証できない。内部調査が必要と見た。」


「もっと腕利きが良いんじゃないですか?」


「いやいや、君くらいが疑われなくてよい。まあ、がんばれ、はい、これ命令書と職務仕様閲覧許可証ね。外にはもって出ないように。」


「はあ・・・お給料は?」


「三割増し。ただし、君の『相方』への支払いね。」


「ほう。気前が良いですね。」


「重要任務だ。期待している。」



 **********   **********


 『相方』というのは、ぼくの相棒のアンドロイドである。


 ぼくは、表向き大体無職の身であって、アンドロイド君の保護のもとで暮らしている。


 今回は、指示に従って、まずは地域のスローワークで、求人募集に応募した。


 会計士の資格を持つが、ちょっとうつぎみなのである。


 偽物の経歴が、公式につくられていた。


 一方、求人主は、『特定宇宙開発個人会社『ヘレナ』の代表、ミス・カンプ』


 仕事は、鉱山開発事務所の事務員。


 就労場所は、第十資源小惑星『ヘレナ』。


 就労期間は、半年で、更新の可能性あり。


 お給料は、月額100万ドリム。・・・悪くない。


 賞与あり。


 住居費、食費は実費支給。


 週休二日で、有給休暇は法定による。


 保健福祉施設あり。


 赴任旅費は、会社が負担。

 

 まあまあ、というところである。


 紹介状を手にしたぼくは、面接に赴いたのである。



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