第53話
後半パートで勢いを見せた蒼風(あおかぜ)ハルトのスキルは、レーヴァテインのそれを軽く凌駕した。
最終的に、彼はFPSのスキルで応用できると考えていた事が――直接の敗因と言える。
終盤は発狂地帯とも言われているのだが、今の彼には――何でもないエリアにも見えた。ウィキ等で炎上目的の戯言やフェイクニュースには――惑わされない。
それこそ、未プレイ勢力が超有名アイドルによる絶対支配を理想とするコンテンツ業界を築くために――と書くと、WEB小説で流行りのジャンル見たく見えるかもしれないが、おそらくは――。
「リズムゲームには、リズムゲームの――必要スキルが存在する」
ハルトの目つきは――ある意味でも本物と言える物だった。一方で、レーヴァテインはその眼すらも分からない。
リザルトを見れば、そのスコアは一目瞭然と言える。ダブルスコアではないが、結果として勝利をしたのはハルトだった。
周囲はレーヴァテイン勝利があり得るような話ではない――と言う様子だったのだが、これを彼はどう思っていたのか?
なりすましの方は大した実力ではなく、それこそ他プレイヤーのかませ犬と言うレベルなのは明らかだろう。もしくは、モブキャラがレーヴァテインを名乗って成り代わり、自分が主役にでもなるつもりだったのか?
『ARゲームには、それぞれのジャンルで必要スキルが違う――そう言いたいのだろう』
レーヴァテインの声がARメットのスピーカー経由で聞こえている。おそらく、向こうもARメットを被っているのだろう。
「他のゲームも炎上させて、まとめサイトや様々な媒体で目立とうとする――それがレーヴァテインのやり方なのか?」
明らかに見た目では、分かりづらい事この上ないが――この人物が本物だと信じ、ハルトは本音を彼にぶつける。
『それらのプレイヤーは、自分がレーヴァテインへ成り代わろうという偽者に過ぎない。二次創作のオリ主夢小説でよくある手法だ』
その発言を聞き、さすがのハルトも動揺をしていた。彼は、一体何を知っているのか?
それこそ、全ての元凶と言われかねないような事――ネット上でも言及されているような様々な事件、それを裏で操っているのは彼と書かれているサイトだってある。
「一体、何が言いたい?」
『ARゲームは無価値なものではない。それを――』
(このタイミングで、ノイズ?)
『リズムドライバーは本来の目的として、コンテンツ流通の正常化を目的としていた物。それを――』
(やはり――何が、リズムドライバーで起きているのか)
『これで勝ったと思うな――リズムドライバーを、俺は――』
途中からはノイズが激しく聞き取れない部分もあった。一体、何があったのだろうか?
しかし、他の筺体では特にノイズを含めた不具合やエラーは確認されていない。この筺体だけの状態なのか――?
センターモニターの方を振り向くまでもなく、リザルトの方を再チェックしたが――レーヴァテインとのマッチングログが消されている形跡はない。
確かにハルトはレーヴァテインとマッチングしていたのは間違いないようである。
ハルトとのマッチングが終わった後、レーヴァテインの姿を目撃したプレイヤーはいない。
誰かのコスプレだったのか――という説もあるのだが、そうした噂は拡散していない所を見ると――そう言う事なのだろう。
【あれからレーヴァテインの姿は見ないが――】
【ハルトとマッチングしたのは本物と言う事らしい。プレイ動画もアップされているはずだ】
【一体、彼は何者なのか?】
【プレイスタイル等を踏まえると、まとめサイトの話はフェイクだった事になる】
【うまい具合に踊らされた――と言う事か】
つぶやきサイト上では、様々な話題も上がっているが――プレイ動画におけるプレイスタイルを見ると、まとめサイト等の記事は嘘だった事が分かった。
しかし、一度拡散したニュースが修正されるとしても、時間がかかる場合が多い。それに加えて、中には更にフェイクニュースを加えて炎上を狙う勢力だってある。
こうしたフェイクニュースを利用したSNSテロを――ARゲーム運営側も把握していたのかは分からない。レーヴァテインの件は放置されていたと言ってもいいほどに対応が遅れているのも、その証拠だろうか?
(この様子を見ると、あの時に炎上したのが一握りのプレイヤーによるストレス解消等とは――)
オケアノスを歩き回り、周囲の盛り上がりを見て――ある種の目的は達成されたと考えている。
(あの時とは、SNS環境も変化したというべきか――?)
しかし、それに納得をしていない人物も――いるのだろう。
レーヴァテインの目の前に、見覚えのあるような外見の人物――別エリアの通路からファフニールが姿を見せる。
「レーヴァテイン、あなたは何をしようとしていたの?」
彼女はファフニールと呼ばれていたプレイヤーのARアーマーを装着し、ARメットだけは脱いでいた――エリアの通路でばったりとレーヴァテインに遭遇するシチュエーションは、想定していなかっただろう。
やはりというか――赤いコートのフードを取るような様子は一切ない。誰にも素顔を見せるつもりがないのだろうか?
彼女としては、レーヴァテインをおびき寄せるという目的もファフニールを演じていた理由にはあった。
「まとめサイトに取り上げられ、炎上していたような人物に言われる筋合いはない」
しかし、それは逆の意味でも悪目立ちをする結果となり、まとめサイトに取り上げられることにはなったのだが――。
それはレーヴァテインにも言えるはずなので、この発言は彼にとってもブーメランするはずである。
「それはお互いさまでしょう? こちらとしては――本来の目的のために、影を演じていたのだから」
「その割には、フェイクニュースとしてサイトに拡散していたのは――誤算ではないのか? 高難易度譜面に挑み――玉砕する捨てゲープレイヤーとして」
「高難易度を一発でクリアできるようなプレイヤーなんて、それこそチートプレイヤーよ。それを分からないようなサイト管理人がフィクションをノンフィクションに見せる為に演出した――」
「リズムゲームで捨てゲーと言うのは推奨されないだろう」
「よく言うわね。あなたの得意ジャンルはFPSのはずなのに――」
「ソレは別のプレイヤーにも言われた。リズムゲームの必要スキルが存在する――と」
別のプレイヤーと言う発言を聞き、ファフニールは他にも誰かとマッチングしたのか――と考える。
しかし、その人物が誰なのか――対話に集中している時には全く気付かない。
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