第50話
レーヴァテインが全ての元凶と言う訳ではないのだが――ネット上では案の定という展開になっている。
エイプリルフールのネタやフェイクニュース等も混ざる中で、ネット上ではどのニュースが真実なのか――情報ソースを見比べる展開となっていた。
【レーヴァテイン、あいつさえ倒せば――】
【一連のSNSテロを終わらせる為にも】
【奴だけを倒しても解決しないだろう。全ての――】
【そうだ! リズムドライバーを炎上させればいい】
【我々が信じるコンテンツは三次元のリアルアイドルだけだ――】
【そうだ、あの芸能事務所が世界を征服すれば――】
レーヴァテインを倒せば解決する訳ではないのだが――ネット上では、そう言った雰囲気になっている。フェイクニュースやまとめサイトも原因の一つかもしれないが―ー。
しかし、これらのつぶやきも一部はWEB小説の台詞をコピペした物であり、明らかに炎上目的と言えるだろう。つまり、このつぶやき自体がマッチポンプと断言できた
これではレーヴァテインの望む世界とは逆の結末――つまり、バッドエンディングを迎えかねない。
超有名アイドルコンテンツのみが唯一神として存在し続ける世界、それはWEB小説上のフィクションであり――特定ユーザーが生み出した夢小説の世界でしかないというのに。
「まとめサイトは閉鎖されたはずなのに、まだ続けるつもりか――これでは、コンテンツを無差別に消費する時代と変わりがない」
つぶやきサイトのつぶやきがコピペだと見破り、これらの状況を何とかしようとしているアイオワは――リズムドライバーの整理券を発行しようか悩んでいる。
今は他プレイヤーのプレイを様子見しておくのが正解なのか、それとも――駒が揃うのを待つか。
(SNS炎上を利用したマーケティングは無価値だという事に――未だ気付かないのか。広告会社と芸能事務所は)
オケアノス上のモニターで報道されているニュースには、やはりというか炎上マーケティングの一件で告発を受けたとする報道が――。
そういったニュースをアイオワは――周囲の状況と比較して確かめている。明らかに周囲はニュースをスルーしているので、誰も信じていないようでもあった。
(どちらが正義とどちらが悪なのか――もはや、それさえもネット上の承認欲求等に依存するというのか)
シリアスそうな表情をするアイオワは、この状況を変えようとする方法はないのでは――と思った事もある。
しかし、闇ばかりが世界を蹂躙した歴史は――存在しない。闇ある所に――光もあるのだ。
「そういえば、ネット上でランクⅩプレイヤーがアカウント凍結って話があったけど、それもエイプリル――?」
しばらくして、アイオワがゲーム筺体近くまで到着し、センターモニターを見るとランクⅩのプレイヤーがいないことを示すインフォメーションが表示されている。
《ランクⅩプレイヤーは現在不在です。目指せ! ランカーの高みを》
(どうなってるの? 昨日までは数人いたという話もあったのに――)
「エイプリルフールじゃなかったのか?」
「まとめサイト以外のニュースで確認した。どうやら、本当らしいな」
「エイプリルフールと思って、フェイクニュースと思っていたら――本当だったとは」
「だからと言って拡散しても承認欲求狙いとか言われて炎上しかねない」
アイオワが動揺している中で、モニターを見ていたギャラリーも驚いていた。
実際、彼らもフェイクニュースとして疑っていたのだが――こうして事実だと知ると、言葉に出来ない思いがある。
「不正と言っても、チートのような行為もあれば――プレイヤー自身が犯罪行為で逮捕されたようなケースもあるだろう」
「プレイヤーネームを見ても、あまり有名な名前ではなかったから怪しいと思ったが――」
「同じようなプロゲーマーのネームを騙れば、通報されるのは当然だろう」
「しかし、レーヴァテインを名乗って――」
ふと、アイオワは別のプレイヤーがつぶやいた単語に――瞬間的なプレッシャーを感じた。
以前にもなりすましプレイヤーの存在が問題視されていた事もあり、運営側も即座に対応した結果が――これだったのだろうか。
(有名になり過ぎた名前を使えば、それなりの代償を求められるという事か――)
しばらくは他人のプレイ動画を――と言うよりも、慌ててレーヴァテインの動画を再確認する。
センターモニターにも、先ほどのプレイは録画されているので視聴は可能だろう。それを視聴して偽者か確認するプレイヤーがいるかどうかは、別になるが。
午前一一時四五分、別のアンテナショップでリズムドライバーにログインしたのは――スノードロップだった。
このアンテナショップは昨日までリズムドライバーは設置されておらず、今日になって設置した場所でもある。
その為か、混雑している具合もないので穴場と言う事なのだろう。実際、整理券発行なしでプレイ出来るのは非常に大きい事実でもあった。
(ユニコーンや他のプレイヤーは気にしない。自分が目指すべきは――ひとつだけ)
彼女の身に付けているARインナースーツは、ログインと同時に白銀のアーマーが装着され――ARメットも形状が変化する。
メットの方は最初から被っている影響もあって、素体のメットにパーツが装着された印象なのだが。
『私は――ランクⅩを目指す!』
彼女が様々なプレイを目撃し、多数のプレイヤーともマッチングをしたりもした。
その中で今までは目的もなく、モブ同然に名前だけが独り歩きをする状態だった自分と――決別する為に目標を決めたのである。
それから二分後、スノードロップとマッチングしたプレイヤーがいた。
【ランクⅧ】
スノードロップは、名前には見向きもせずにランクだけを確認する。ランクⅧ表記だった事を確認し、細いレイピアの様なブレードを構えた。
構えると言っても剣道とか剣術をかじっていた訳ではない。単純に、プレイ動画を見て見栄えがするようなポーズをとっているだけだろう。
構えはゲームのプレイに全く関係ないし、その構えでボーナススコアが加算される訳でもない。単純に集中する為だろうか。
《ランク昇格のチャンス!》
ゲーム画面上に昇格チャンスが表示され、それを見た一部のギャラリーがざわつき始めた。
スノードロップは、これに勝利すれば――ランクⅨである。ランクⅩへ到達したプレイヤーは確認されていないが、最低でも都市伝説だった一人は不正だったに違いない。
午前一二時、お昼時にプレイするプレイヤーもいるが、その中に有名プレイヤーはいない。
何人かは昼食を取っているかもしれないが、その中でもアイオワだけは
――プレイ動画をチェックしていて、昼食どころではないようだ。
整理券を発行していない事もあって、動画を視聴するのにモニター前を占拠していても問題がないからなのだが――それでも、稀に他のプレイヤーが来るようだったら譲るようにはしている。
(エイプリルフールの種明かしをしているサイトもあったが、それさえも忘れている一部サイトは――やはり、ゲーム系迷惑サイトの類と見るべきか)
ARメットを被り、プレイの準備に入ろうとしているアイオワだが――まだプレイを始めようという気持ちにはならなかった。
テンションが上がらないという訳でも、他のプレイヤーの様子をもう少し見たい訳でもない。他プレイヤーのプレイは、充分と言えるだろう。
(しかし、ネット炎上やSNSテロの事を考えて――リズムドライバーに集中できるのか?)
特に大きなイベントもなく、公式のスコアランキング大会も行われてはいない。その状況で、まとめサイトの事等を考えてプレイ出来るのか――。
リズムゲームをプレイする以上は雑念を捨てるべき――と言うのは都市伝説でも書かれているが、リズムゲームのまとめサイトでも書かれていた。
目的を持つ事、モチベを上げる為に何か別の事を――と言うのが間違いと言う訳ではない。しかし、リズムゲームと無関係な事を持ち出して勝てるのか?
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