第23話


 二番台でプレイしていた蒼風(あおかぜ)ハルトのプレイスタイルにも若干の変化があった。

最初の内は偶然の産物と言えるようなスコアが連続したが、途中から思うようにスコアが出くなっている。

これはリズムドライバーをリズムゲームが進化したような機種と判断していた事もあるかもしれない。

そうした意識を変えたことで、一つの壁を突破する事に成功し――現在に至っている。

『楽曲の方は――既に対策済。それに――』

 ハルトは既にブレードモードへシフトし、後半のパートで難関と言われる配置をクリアしていく。

それに対して、一番台のプレイヤーはビームライフルを連射しており――その段階で何かを察するプレイヤーもいた。

『こちらはこっちで――全力を出すまで!』

 彼が振り下ろすブレードは青い光の刃であり、実体剣ではない。

他の武器にも言える事だったが、全ての武器に光る部分が存在している。

もしかすると、あの光部分がリズムゲームで言う判定バーの部分に該当するのだろうか?

ビームライフルの方も放たれるビームだけが光っており、そこが判定バーなのかもしれない。

しかし、ガンシューティングの場合とリズムゲームでは判定が異なる箇所もあり、そこを同じと考えている彼には勝ち目がなかったと言える。

「やはり、そうなるか」

「これは相手が悪かったとしか言いようがない」

「しかし、この台では同じ楽曲にしないとマッチングは成立しないのでは?」

「確かにそのはずだな。違う楽曲でマッチングするリズムゲームもあるにはあるが、リズムドライバーは――?」

 ギャラリーの一人がある発言をしたことで、周囲がざわつく事になった。

ハルトがプレイした曲は――隣の一番台でプレイしていたプレイヤーと違う曲を選んでいたのである。

演奏時間が異なる事もあって、向こうの終了に合わせてのリザルト表示だったが――この展開には驚きを隠せない。

【やはり、予想通りの結果になったのか】

【マッチングシステムの変更があったという話もあったが、まさか――】

【マッチングと言っても、レベル差が激しかったら――無理ゲーだぞ】


【それを調整したのが――今回のシステムでは?】

【ロケテストの段階でもマッチングは調整が必要なレベルだったな】

【あの時はプレイヤーが少なかった説もあるが】

 ネット上では様々なつぶやきが流れてくるが、中には炎上を誘発させるような物も混ざっている。

その為、ソースを探ろうと言うプレイヤーが多いのは言うまでもない。



 二曲目のプレイでも同じ対戦になっていたので、もしかするとローカルマッチングモードになっていた可能性はあるだろう。

その辺りはセンターモニターで設定を確認出来るような物だが、それを一番台のプレイヤーが怠ったのも原因の一つかもしれない。

マッチングオフモードもあることにはあるが、チュートリアルチェックを大雑把で途中をカットしたのが――致命的だった。

向こうはFPS感覚でプレイしていた事も――致命的である。向こうは対戦をしている感覚なんてないのかもしれないが――。

「あのプレイ結果、どう思う?」

「相手がご愁傷さま――では駄目か?」

「それではネット炎上勢力等と反応が同じだ。もう少し個人の意見が欲しい」

「単純な話では? 向こうはリズムゲームではなくFPSとしてプレイしていたのが、敗因だと」

「それでも多数派だな。慢心があった――でもまだ多数だろう」

「どういう意見を望んでいる? 君の意見も聞きたい」

「経験値の差だな――。例え、プロゲーマーでも知識なしでハルトに挑めば同じ結果になる」

「プロゲーマー? 本気で言っているのか?」

「こちらは大まじめだ――」

 ギャラリーからは色々な話が飛び出すのだが、やはりというか話題はハルトの方に集中している。

結局、彼が負けたのはハルトが単純に強かったから――が大半を占めているのは確実だが、それ以外の意見があるのも事実だった。

(ハルトの実力は――明らかに上がっている。それを踏まえれば――)

 ギャラリーの一角とは別の場所からマッチングを見ていたのは、私服姿のアイオワだった。

今回は野球帽を被っているので、そう簡単にはばれないだろう――と考えていたが、やはりいつもの服装だったので目立ちやすい。

それでもあまり周囲が騒がないのは、ハウスルールが徹底されているのも大きいのだろう。

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