第6話
リズムドライバーとは、インターネット上で都市伝説となっていたリズムゲームである。
プレイ感覚としてはガンシューティング系統に近く、類似したシステムのゲームは過去にもリリースされていた。
しかし、それとは圧倒的に違っていたのは――。
「あのスーツって必要なのか?」
「事故防止では?」
それは、専用スーツを着用してのプレイである。
レンタルスーツはない為、レンタル用にはレンタル専用のARメットが用意されているが――。
この光景を見て、どう考えてもリズムゲームとは違うと感じる人間がいるのは――避けられない現実だが。
しかし、実際には専用スーツを着用してのプレイだが――見た目には別の映像が見えている。
その正体こそが、リズムドライバーを別ゲーと認識させている最大の理由でもあった。
【あの動画を見た時、何かと思った】
【プロも動画の事か。確かに――】
【まるでFPSだったな。リアルでコスプレするヤツ】
つぶやきサイト上での評価は、こう言う感じだった。
このゲームはリズムゲームの皮を被ったFPSと言えるような代物だったのである。
センターモニターでは、実際のプレイヤーがプレイしている光景にCGのアーマー等が合成された動画として出力されていた。
動画を見た後で一連のプレイ光景を見ると、特撮やモーションキャプチャー等を連想るという意見も納得かもしれない。
リズムドライバーの設置場所から若干離れた受付、そこでは両替機なども置かれているが――電子マネーの購入マシンもあった。
「リズムドライバーなら、専用のタブレットが必要だよ」
「その値段は?」
「他のARリズムゲームと共通で使用出来て、一〇〇〇円かな」
「一〇〇〇円は高いような――」
「確かに専用カードとして考えるのであれば高いだろう。しかし、これが電子マネーのチャージ等にも使えるとしたら――?」
受付の男性スタッフに蒼風(あおかぜ)ハルトはリズムドライバーのプレイする為に必要な物を尋ねた。
単純にレンタルガジェットだけでプレイ可能かと尋ねたが、ガジェットだけではプレイ不能らしい。
他のリズムゲームでもデータ記録用に専用カードを使用している事が多く、例えるならばソレに似たような物が専用タブレットらしい。
せっかくなので、専用タブレットを一個購入する。専用のケースに入っており、タブレット本体以外には説明書も同封されていた。
「――タブレットに関しては太陽光発電システムが採用されていて、相当な事がない限りは電源が切れないようになっている」
スタッフから説明されるが、いまいちパッとしない話であり――疑問に思う部分もある。
何故に太陽光発電を採用しているのか、電源が切れないようにする理由が何処にあるのか――ゲームで使用するICカードの代わりなのに、どういう事なのだろうか?
その理由は、電源を入れて――プレイヤー名を入力し終わった後で判明する。
《現在位置を検索中です》
タブレット端末のインフォメーションメッセージを見て、別の意味でも衝撃を受けた。
《オケアノス内のマップを表示します》
このメッセージが表示されたのち、まるでGPS機能付き携帯を思わせるようなマップが表示されたのである。
このマップがあれば、オケアノス内で迷子になる事もないだろう。それに加え――。
「フレンド登録をしているプレイヤーであれば、オケアノス施設内限定で居場所をサーチ出来る。ゲームエリア限定――だが」
「それって、もしかして――」
スタッフのさらりと話した説明に関し、ハルトは別の意味でも驚きを隠せずにいた。
これではプライバシーが――。しかし、男性スタッフは補足として――。
「フレンド登録をしていないプレイヤーの居場所はサーチ出来ないし、このデータが悪用されないように暗号化もされている。失踪者通知がされれば、警察にデータは提供するだろうが」
これもまさかの発言と言えるだろうか。ゲームの技術が様々な部分で批判されるのは――今に始まった事ではないが、ここまでの事をするのか?
特にフレンドを登録するような状況ではないので、現状では気にしなくてもよいのかもしれない。
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