第2話


 西暦二〇一九年、世界ではとある法案が賛否両論となっていた。

その法案とは、デスゲーム禁止法案――命のやりとりをする紛争や戦争と言った物を全面禁止する法案である。

しかし、正確には更に長い名称だったのがデスゲーム禁止法案と略されたのには理由があり、日本でデスゲーム系のWEB小説が盛り上がっていた事に由来すると言う。

これにはネット上も困惑の声が上がったのは言うまでもないが――すぐに開き直ったりした為に数日で鎮静化した。

そして、この法案によって戦争や紛争と言った物が全面禁止となり、世界から紛争は消滅したという。

それからしばらくして、暴動などをどうするか――と言う部分に関しても議論される事になるのだが――。

 この件に関して日本が遅れていたのには理由があり、ネット掲示板等では一時期盛り上がっている時期もあった。

しかし、そのニュースが霞むような巨大ニュースが拡散した事が理由である。

デスゲーム禁止法案のニュースもリズムゲーマーの間では話題になったが、便乗して悪目立ちする方が逆に炎上の原因――と認識されてスルーされているのが現状だろう。

【聞いたか? 草加市に例のアレが出来たらしい】

【噂になっていたアレだな】

【まさか、本当にARゲーム施設が出来るとは――】

【こちらも予想外だった。他の場所でもオープンしているが――】

【しかし、あちらは草加市が出資したという話もある】

 ネット上で話題となっていたそれは、草加市にオープンしたARゲーム施設の事だった。

その名は『オケアノス』と言い、すぐにネット上で拡散する事になる。

そして、気付けば様々なネット炎上案件のニュースよりも話題となり――日本で最もホットなニュースとなっていた。



 西暦二〇二〇年二月、オープンから一年が経過して――過熱していた一時期よりも状況は落ち着きつつある。

それでも海外からの観光客がここを目当てに来日する事さえあった。電車やバスの乗り継ぎも大変だと言う中で――。

『ここの施設は面白い。海外でも、ここまでARゲームやVRゲームをメインとした施設は少ない。それを踏まえても――』

『海外でも施設は増えつつあるだろう。しかし、日本でも――ここまで充実した場所は少ない以上――来る価値はある』

『驚いたよ! これだけの施設が日本の――埼玉県にあるなんて』

 海外からの観光客にインタビューでも絶賛とまではいかないが、驚きの声があったのは事実だ。

そして、オケアノスの話題は現在もホットワード上位に入る程の存在となっている。



 目の前には駐輪場への誘導する看板が見えていた。隣には駐車場もあるのだが、駐車場は別施設扱いになっている。

見た感じとしてドーム球場二個分以上の広さはありそうで――こうした施設をどうやって誘致できたのか、という疑問も浮上するが――。

「これがオケアノス――」

 インターネットの公式ホームページでも既に見ているが、実物はそれ以上と言えるインパクトを誇る。

それを改めて知った蒼風(あおかぜ)ハルトは看板の誘導に従う形で駐輪場へ移動し始めた。周囲を見回すと、ショッピングモールやレストランも発見出来る。

まるで、ここだけで完結している様なテーマパークを思わせるが――駐輪場へ到着すると、予想以上の物を目撃する事になった。

(これは――想像以上か)

 駐輪場は次世代のオートロックシステムを実装しており、盗難自転車が出てくるのを防止する仕組みが確立されている。

《赤いラインまで前輪を移動してください》

《前輪がロックされたのを確認後、自分の自転車をロックします》

《ロック後にカードロックの機械から排出されるカードを取り出して、ロック完了となります》

《カードを紛失した場合はロックを外せません。紛失した場合は駐輪場のヘルプダイヤルへご連絡ください》

《ヘルプダイヤルへの通話料は無料です。二四時間受け付けしますが、施設定休日の場合には受付できませんのでご注意ください》

 駐輪場の入り口には駐輪方法が書かれた看板が設置されており、そこで駐輪方法をチェックしてから自転車を移動する事にした。

方法が分からなくても、駐輪スペースにも同じ事が書かれた小さな看板があり、そこで改めてチェックする事も可能らしい。

さすがに施設の定休日に駐輪する人はいないだろうと思うが、ここを駅利用の為に駐輪するスペースに転用したりするケースに対応している可能性も高いだろう。

 駐輪場は一階だけにあるのだが、駐輪可能台数は驚きの三〇〇である。一般的なゲーセンとはケタが違う。

バイクの駐車スペースは別に用意されているので、ここは自転車専用と言うべきだろうか。さりげなく、電動自転車の充電スペースなども完備している。

ここまでの対応がされているのも驚きだが、草加市が出資しているという部分を踏まえると納得するかもしれない。

「これで、よし――」

 ハルトは何とか無事に自転車を駐輪スペースに置き、カードの方も発行してもらう。

カードの方はスマホにも対応しているので、そちらへ電子カードを発行してもらう事も可能だ。この方が紛失の危険性は減るだろうか。

ハルトはスマホ未所持なので、カードの方を発行してもらった。駐輪の時間制限はなく、無料と言うのも非常に大きい。

駐車に関しては一時間三〇〇円、施設的な部分を踏まえると――これでも安いと言えるだろうか。

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