終末の恐怖

タルト生地

最後の五分間へ


 20XX年、都内某所。

 高まる世界の緊張を危機と見た政府は、政府と有識者による極秘の国防会議を開催していた。


「つまり最悪の場合、核戦争という事態になると?」

「ええ、アメリカと北朝鮮の緊張はこれまでになく高まっています。日本としてもこれまでは静観していましたが何か手を打たなければ不味いかと」


 出席者の何人かから声ともため息ともない声が漏れる。


「かといってどうするつもりですか? 核戦争となると攻撃を受けてからでは遅い。打ち込まれればあっという間にそこは更地です」

「そもそもこれまでにない対応を取るに足る確固たる情報はあるのでしょうか。国民の不安と反感を煽るだけに過ぎないのでは?」


 賛同の声がちらほらと出る。


「不安を与えることはある程度仕方がないことと考えています」


 会場から口々に非難の声が飛ぶ。


「それは国民のためにという建前で戦争に参加し、日本の世界的立場を押し上げようという考えの現れではないのですか?」

「国を守るために国の成す国民を蔑ろにするなど本末転倒ではないですか!」


「しかしですね! 事態は切迫しているのです! 今こうしている間にも他国は戦争の準備を進めているかもしれないんですよ?」


「みなさん、落ち着きましょう! まずは情報を得ることが先決ではないでしょうか。現実的に考えて、ある日突然核が打ち込まれることはないでしょう。宣戦布告やそのための大義名分があるはずです。アメリカとの情報連携を図るべきでは?」


 ざわついた雰囲気が少し冷めていく。


「なるほど、それは優先すべきかもしれません。しかし急な事態に対応するため、一時的に自衛隊等の指揮を独立させる法案の制定なども進めてはいかがでしょう」

「それはもはや日本に軍隊を設立することでは?」

「それは違います。が、そうだとしても有事にはとにかく素早く、厳格な対応が求められます。何よりも優先されるべきは国民の生命です」


 会議は紛糾していく。


「自衛隊員は国民の1人ではないというのですか!」

「今はそんな言葉遊びじみた事を話している場合ではないでしょう! 」

「そもそも自衛隊にはその覚悟があるはずだ!」

「かといって命を落としても良い理由にはならないだろう!」

「みなさんお静かに! 落ち着いてください! 感情で話しても問題は解決できませんよ!」


 その場にいる全員が思想のズレ、不安に飲み込まれつつあった。


「では万が一にも核戦争が起こってしまった場合、どのようにして国民の生命を守るかを考えた方が今は賢明ではないでしょうか」

「いや、やはり何より日本の領域内にミサイルや敵の戦力を侵入させない事を考えるべきでしょう。憲法や倫理は本来国民を守るためにあるべきです」

「それでは話が堂々巡りではないですか。そもそもその責任はどこに求めるつもりですか!」


 また会議は荒れ始める。


「みなさん落ち着いてください! 先ほども申し上げたように、今この瞬間にも他国の核ミサイルが発射されているかもしれな








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