4.第二形態
「うう、しょうがない……戦うかぁ……」
気を取り直して、丸くなったネクロちゃんに向き直る。
ネクロちゃんの第二形態のスピードは、第一形態よりもかなり遅い。
まるで、なめくじみたいに壁づたいをゆっくりと移動している。繰り出してくる攻撃もゆっくり突進してくるだけ。大振りでわかりやすい。
隙だらけだ。これはすぐに倒せるんじゃないか?
そう思って大きくなった目玉に向かって、キックをするべく飛びかかってみる。
しかし、攻撃が届くまでに、ネクロちゃんは突然消えて、全く別の場所から現れた。
え……消えた?
体勢を立て直して、もう一度攻撃してみる。
またしてもネクロちゃんは消えて、全く別の場所から現れた。これじゃ、いくら攻撃しても当たらない。
きっと、がむしゃらに向かっていくだけじゃ駄目なんだな……。
弱点はきっと、またあの大きな目。
分かりやすいけど、当たらなきゃ意味がない。
ネクロちゃんの単調な攻撃をひょいひょいと避けながら、攻撃を当てる方法を考える。ワープを繰り返しているネクロちゃんをじっと観察した。
「んん……? 何だアレ」
観察しているうちに、あるものが見えて目を細める。
ネクロちゃんが消えて別の場所に現れる直前。空中にうっすらと黒いもやのようなものがわずかに浮かんでいるのだ。
……もしかして。
思い立って、もやに近づき、中心をじっと眺める。
突然、ぷく、と何もない所からネクロちゃんが浮き上がってきた。やっぱり思った通り。この黒いもやはネクロちゃんが現れる前兆なんだ。
ネクロちゃんがまた消えたので、周囲をよく観察する。
もやが発生した瞬間。私は思い切りパンチを繰り出した。
「くらえっ!」
もやから現れたネクロちゃんの大きな目に、私の拳がめりこんだ。
私のパンチなんてたかが知れてるだろうから、ちゃんと効くのか心配だったけど、ネクロちゃんはギャァアア、と凄まじい悲鳴を上げた。よかった! ちゃんと効いた!
第一形態のときは何発も食らわせなきゃ倒せなかったのに、今回は一発殴っただけで、ネクロちゃんは動かなくなってしまった。大きな球体だったネクロちゃんは穴が開いた風船のようにしぼんで、ドロドロと溶けていく。ちょっと気持ち悪い。ちょっと吐きそうになって、思わず口を押えた。
とにかくやった! ネクロちゃんをついに倒したぞ!
一瞬そう思ってから、打ち消すように首を振った。
――いやいや騙されるな。きっとこのドロドロに溶けたネクロちゃんは第三形態になって、襲いかかってくるに違いない。
「そう何度も騙されてたまるか! 来るなら来い!」
そう叫んで、溶けたネクロちゃんに向かって、ファイティングポーズをかまえてみせる。
しかしネクロちゃんはヘドロのようにどんどん溶けて、やがて跡形もなく消えた。
ネクロちゃんが消えてすぐに、部屋の中心に扉が現れる。金色の装飾が飾られている豪華な扉だ。
しーん、と部屋が静まりかえる。
大きく息を吸った。
「変身しないのかよ!」
……警戒したのに損したよ、もう。
気を取り直して、突然現れた金ぴかの扉に近づく。
扉は今までで一番、なんていうか、それっぽい。いかにも開けたらお宝がありそうだ。もしかしたらここがゴールなのかもしれない。っていうかそうであってほしい。
……そういえば、ネクロちゃんと戦っているとき、突然自分の身体じゃないみたいに動けるようになったんだ。一体私の身体に何が起きたんだろう。
よくよく思いだせば、一つ目のエリアを抜けたときの看板に、『君は一つ目の能力を手に入れた』って書いてあった。もしかしてこの身体の変化のことなのかな。
それにネクロちゃんが消えてからも、何だか身体がヘンだ。
頭がちょっと熱くて、でも嫌な感じはしない。知らない能力と知識を詰め込まれているみたい。
……いや、今は余計なことを考えないようにしよう。
それより、早くここを抜け出さないと。
自分を落ち着かせるように大きく息を吸って、ゆっくりと金色の扉を開き、中に歩みを進めた。
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