第4話 ソウチョウの季節

 中学時代の同級生から年賀状が届く。

『ふと懐かしいことを思い出したので、筆を執りました』。毛筆で綺麗な字だった。連絡先はご丁寧に赤で囲われていた。

 彼女とは小さいころはとても仲が良かったのだけれど、組体操での裏切り以降、一切口を利いていない。ただただわたしが彼女を避けまくっただけとも言えるので、今さらこちらから連絡してまで気まずい思いをするのも気が引けた。

 ひとまずシゲさんに抗議の電話を入れる。

「もしもし」

「シゲさんでしょ住所教えたの」

「あ、モリか。明けましておめでとう」

「おめでとう」

「で、何て?」

「浦島さんにあたしの住所教えたでしょ」

「ああ、なんか手紙送りたいからって聞かれた気がするわ」

「個人情報を勝手に他人に教えないで」

「実家隣じゃん」

「実家がご近所さんでも他人は他人でしょ」

 あーなるほどと嫌な感じの声をシゲさんは上げた。

「おまえまだ中学んときのこと気にしてんのか。子供だなあ」

 ぶちりと電話を切る。

 今さら、気にしてなどいない。裏切られた、なんて、とんだ身勝手な感情だったと、今なら思える。それよりなにより、とにかく、今さらなのだ。今さらどの面下げて会いに行けというのだ。

 気分を変えようとテレビをつけると、ちょうどニュースが季節予報に切り替わるところだった。

「今年は大変珍しく、シの季節が巡ってくるでしょう」

 シの季節?

 聞いたことのない季節だった。

「日ごろ口にできていない言葉があれば、早めに伝えるようにしましょう」

 季節予報士がいい笑顔で告げ、再び画面が切り替わった。

 わたしはハガキと電話を交互に見つめる。

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