いろと色

 しゃんこ しゃんこ


 ころりんしゃん


 夜店のやきそばを頬張り、舞を見る。


 琴と神楽鈴、そして篝火かがりびに彩られた神事舞しんじまいは、厳かに進行していた。


「もぐもぐ……しょうもない。」(味が薄い)


「しぃー、だよ?」


 縁日は活況だった。鈴生すずなりかすかに聞こえる。

 飲み下した後の香ばしい余韻を楽しんでいると、袖を引かれた。

 耳を隣に傾けていく。吐息が耳をくすぐった。


「あっ、近づきすぎやちゃ……。」


 ボソっと呟くので聞き取れなかった。

 顏を向けると、うつむき加減の幼馴染の上目遣いと交錯こうさくした。

 頬の赤味は、薄化粧のようで。潤む双瞳そうとうは、気弱な性格ゆえ再び俯こうとする。


「もう、からかわんで……。」


 軽く謝り要件を問うと、後方を小さな所作にて示した。淡紅色の塗料つまべには、今日のための化粧めかしだろう。

 いつものように手を差し伸べ、触れた指をそっと引く。


「うん……。」


 神楽舞への称賛を傍目に、私たちは祭を抜け出した。


―――――――――――


補足


 しゃんこしゃんこ:馬の鈴の音を表わす語であり、物事が絶え間なく続くさまを表わす語とも


 ころりんしゃん:琴の弾き方や音色を表わす語

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