第70話弱体化ゆえの苦戦
レミュアの姿が消えたことを確かめてから、地上へ降りたランクスたちはソルたちへ向き直った。
いつ攻撃されても対処できるよう、リーンハルトは槍を構え、エミリオは手の平を光らせて魔力を貯め込んでいる。
前方では結界の光が弱まっており、徐々にソルとベルゼが前へ進み始めていた。
ランクスはエミリオの隣に並んで囁く。
「エミリオ。結界が破られる前に、オレの剣に魔法をかけてくれ」
「元からそのつもりですよ。リーンハルト、貴方はどうします?」
エミリオに尋ねられ、リーンハルトは目だけを動かして二人を見た。
「頼む。少しでも攻撃力は上げておきたい」
「分かりましたよ。……村へ戻ったら必ずお金を払ってもらいますからね、二人とも」
どんな場面でも変わんねーな、コイツは。
呆れてしまうが、断れば本当に力を貸さなくなる。リーンハルトもそれを知っているので、渋い顔をしながらランクスと同時に「「分かった」」と口にした。
結界の光が完全に消え、ソルとベルゼが一気にこちらへ迫ってくる。
空を飛行していたベルゼが、先に追いついき、目を細めて三人を見下ろす。
「なにかしらの企みはあると思っておったが、まさか人間が紛れ込んでいようとは。目的はエナージュの杖か? 人間風情の手に渡るなど、宝の持ち腐れになるのう」
地を疾走していたソルも追いつき、目を血走らせながら三人を睨む。
「よくも一族の秘宝を奪いやがったな。貴様ら、楽に死ねると思うなよ!」
ソルとベルゼは完全にランクスたちを正面に捕らえ、臨戦体勢を取る。
ついさっきまで戦い合っていた敵同士とは思えない切り替わりに、ランクスは頭痛がして思わず口元を歪ませた。
ソルが拳を振り上げ、三人を叩き潰す勢いで殴りかかる。
各々に後ろへ跳び引くと同時に、エミリオは素早く炎の玉をふたつ作り出し、それぞれランクスとリーンハルトの得物にぶつける。
火は刃にまとわりつき、たいまつが灯ったように燃え出した。
ランクスは炎の剣を振りかざし、ベルゼへ斬りかかる。リーンハルトも炎が揺らめく槍の穂先をソルに向け、その体を穿とうと攻撃を繰り出す。
魔王たちもわずかに退こうとした時――。
――エミリオが再び光の矢を放ち、ソルとベルゼの足に結界を絡ませた。
一瞬だけ彼らの動きがとまり、ランクスとリーンハルトの斬撃が的中する。火の魔法が加わり、普段の攻撃よりも威力は倍になっていた。
見事に魔王たちの体へ傷がつき、ベルゼは脇腹を負傷し、ソルの右腕は半分ほど斬られて骨が覗く。
しかし致命傷にはならず、どちらもブクブクと傷口に泡を出しながら治っていった。
(げっ……魔界だと力だけじゃなくて、自己治癒の能力も上がるのか。面倒くせー)
舌打ちをしてからランクスはすぐに気を取り直し、再びベルゼへ斬りかかろうとする。
ベルゼはまだ結界に足を取られたままだったが、
「こんな軟弱なモノに、このオレが縛れるか!」
怪力のソルは力業で地面を蹴って結界から抜け出すと、三人の頭上へ飛び上がる。
そして近くの木を蹴り倒しながら、またたく間に地上へ降り立った。
その衝撃に大地が震える。
ランクスが揺れに耐え、反撃に備えていると……視界の脇に、体勢を崩したエミリオが映った。
隙を見逃さず、ソルはエミリオへ噛み付こうとしていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます