第7話 クエスト
「ちょっと何で効かないのー!!」
ブコォオオオオオ‼︎!
森の中には、少女の叫び声と、獣のうなり声が響く。
先程から戦闘とは呼べないほどに稚拙だが、それに近いものが行われている。
魔法を放ちながら逃げているメイド服の少女に、それを追いかけているどう猛な牙をもつ二足歩行の猪。
木の上にはその光景を傍観している、着物を着た少年と、黒装束の少女がいる。
「しつこーい!」
もう体力も限界に近い。
先程から私は、拡散する氷を放つ氷魔法、アイスバレットを使用し、目標を攻撃し続けているのだが、明らかに無理ゲーだ。
ちなみに現在受けているクエストで、ちょうど10個目となる。
クエストの内容は、
危険度3クエスト
オークキング1頭の狩猟。
危険度とは5段階で区切られており、危険度ごとに適性ランクがある。
危険度1 ランク F〜E
危険度2 ランク E〜D
危険度3 ランク D〜C
危険度4 ランク C〜B
危険度5 ランク B〜A
ちなみに私が今まで受けていたクエストは、
薬草採取に、小型モンスターの狩猟などで、
危険度は一のものばかりだ。
それも当然だろう。
何故なら私はランクFなのだから。
その簡単なクエストをこなしながら、並行して上田君には基礎を教えて貰っていた。
しかし何故か現在のクエストの危険度は3。
ちょっと急にレベル上がりすぎじゃないですか?……。
ランクFの私にとって、適性ランクから2つも3つも離れている、危険度の3クエストは受けられない筈なのだが……。
時は遡り、冒険者登録をしたその日の夜、急にギルドマスターに呼び出された上田君と、ゆあちゃん。
帰ってきたらなんと、上田君はいきなりAランク、ゆあちゃんもCランクになっていた。
上田君に尋ねてみても、少しギルマスと話たら上がったらしい。
何を話したらそんな簡単に上がるの?
Aランクって、現在この大陸に数える程しか居ないって言ってなかった?
こうして、適性ランク以上である2人がクエストを受け、代わりに私が倒していると言う訳なんですよ…。
現在目標めがけ、氷魔法を連発しているのだけど、まったくはなしになっていない。
どう考えても無理ゲーです。
「楓様!止まってでも的確に、弱点を狙うんです!」
ゆあちゃんからのアドバイスが入った。
なるほど、弱点か!
ってどこ⁈
私オークキングの弱点知らないんだけど!
いや考えろ、普通の動物なら頭だよね?
でも先程から効いてないし、柔らかそうな首とか目を狙う?
走りながら、手の平に魔力を出来るだけ貯める。
よし今!
急ストップして振り返り、オークキングの
目をめがけて魔法を発動する。
「アイススピア!」
オークキングの顔に氷で出来た槍が迫る。
バンッ
やったか??
ブコォオオオオオ‼︎!
オークキングは一瞬足を止めるも、何事も無かったかの様に私に急接近し、左腕を振り上げる。
これは、やばい!
え?
オークキングの腕が私を捉える前に、
いつの間にか私の前に立っていた、上田君の指によって止められていた。
「…上出来だ。」
オーヌクキングが次の動作に移る前に、上田君はオークキングの避退の前に指を構え、放つ。
ドォン‼︎
上田君のデコピンによって、オークキングの頭部の一部が弾け飛んだ。
今のは怖かった……。
本当に怖かった……。
やっぱり、命の危機に慣れるなんて無理だよ。
「…上田君遅いよ……助けに来てくれないのかと思ったよ…?」
涙目になりながら上田君に訴える。
確かに少しでも戦闘時間が長かったり、
ダメージを与えてから倒した方が、
振り分けられる経験値は美味しいとは言ってたけど。
ギリギリ過ぎだよ…。
「…それはな…いや何でもない、悪かった。」
「楓様には甘々ですね、殿!しかし問題無いですよ楓様!多分殿は今の一連の動作の間に、楓様の服を脱がしきるぐらいの余裕はありましたから!」
「えっ…上田君そんな事しようとしてたの…?」
「た、確かにそれくらい出来たが、
って、違う!ゆあも例えが悪いぞ。」
「申し訳ありません…。殿……。」
「そんな事より、柊…さん。
レベルはどうなった?」
「呼びにくいなら楓で良いよ、上田君」
前々から呼びにくそうだったしね。
でもそんなに柊って呼びにくいかな?
「それだともっと呼びにくく、いや何でもない。分かった、か、かえ、かえで、楓!」
「そ、そんなに呼ばなくても…。」
そう何回も呼ばれると少し恥ずかしい…
「す、すまん。」
「たったら楓様も、上田君何て変なあだ名では無く、月神様、もしくは帝様と呼ばれた方が良いんじゃないですか?」
「それもそうだね!分かったよ帝様!」
上田君がまた赤面している。
ゆあちゃん天然であれだがら、やるねぇ。
っと、上田君いじりはこの辺にしておいて、
レベルの確認だったね。
ステータスオープン
ヒイラギ カエデ
lv14
HP 980
MP 2200
AKT 275
DEF 260
MAD 2100
MDE 650
AGI 290
魔法適正:氷(lv 2)
スキル :⁇?、魅惑の魔眼lv 1
フェロモンlv 1
うーん、魔法方面は伸びてるね!
物理方面はひどいけど……。
あと俊敏性も酷いな、足の遅いオークキング相手にギリだったからね……。
あっでも、魅惑の魔眼が使える様になってるし、新しいスキル増えてる!
えっとなになに、
魅惑の魔眼lv1
効果
対象の意識レベル、脳の活動を僅かに低下させる。
ふむふむ、自白剤的な感じかな?
フェロモンlv1
効果
対象のヘイト値を僅かに上げる。
私後方だから、使えなさそう…。
それにしても何で、フェロモンなんてスキル手に入ったんだろ?
魅惑の魔眼の取得条件からしても、
間違いなくろくな理由じゃないよね…
まあ一応ステータスは順調なのかな?
「レベルは14、スキルは魅惑の魔眼と
フェロモンがレベル1、氷魔法はレベル2って感じだよ。」
「…ふむ、ではスキルについても説明しておくか、スキルとはな…」
********************
「疲れたぁ〜」
宿のベッドにダイブする。
「お疲れの様ですね楓様。」
「お疲れだよ〜」
だって凄いハードなんだもん。
「でも全ては楓様の為ですよ」
まあ分かってるけどさ。
今時のjkにこの仕打ちはキツキツだよ〜。
「ちなみに明日はお休みです。」
ようやく休みか〜。
「明日は一日中ねてるね。」
「何を言ってるんですか楓様!明日は街でお買い物ですよ!」
えーでもお金殆ど宿代で消えてるから、何も買えないんだよね……。
「ちなみに何買いに行くの?」
「それは内緒です!」
「えー内緒?」
「明日のお楽しみです!」
凄い気になるんだけど。
「それより楓様!お風呂行きましょう!」
まあ明日のことより、今入る風呂の方が大事だよね!
お風呂♪お風呂♪〜
********************
「ふわぁ〜」
やっぱり日本人たるもの、お風呂に限るよね。
この世界にお風呂あって良かったよ〜。
「生き返るわ〜」
「ですね〜楓様〜」
まったくゆあちゃんは可愛いな〜、
まるで妹が出来たみたいだよ。
まあ、この世界じゃ私のほうが弱いし、
ダメダメ系お姉ちゃんだけど………。
「そう言えば、上田君は?」
「殿なら今日も出掛けられてますね。」
何か毎日出掛けてるね。
朝起きるといつの間にか帰ってきてるし、
夜遅くまで何やってるんだろ。
それにしてもお風呂気持ちいね〜。
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