第4話 チート主人公
目を開けると天井からは無数の鍾乳石が垂れ下がっている。
どうやら私は鍾乳洞的な洞穴に運ばれたらしい。
しかし、
「…何で急に眠くなったんだろ……。」
「急激なレベルアップによる過負荷が原因ですよ!」
「きゃっ!?」
驚き咄嗟に後ろを振り向く。
……
「伊藤君、気配を消して後ろから話しかけるのはやめて欲しい、かな?」
「気配消しいたつもりはないんですけど…」
ならもう少し存在感出るように頑張ってね。
後ろの、しかも息がかかる距離に居て気付かれないってやばいからね?
それより急激なレベルアップ?
まあ見てみるのが早いか
「ステータスオープン」
ヒイラギ カエデ
lv11
HP 800
MP 2000
AKT 250
DEF 200
MAD 2000
MDE 500
AGI 280
魔法適正:氷
スキル :⁇?、魅惑の魔眼(習得可能)
めっちゃ上がってるやん!
「八岐大蛇との戦闘による経験値が振り分けられたみたいですね。」
「伊藤君、気配を消すのもアレだけど、今後心を読むのもやめてね?」
っというか、私石くらいしか投げて無いんだけど…
もしかして良くある相手が高レベルだから、ほんの少しの経験値でもlv 1にしては多かった的なあれかな?
学習装置的な?
まあ上がる分にはオッケーだよね!
それより、
「伊藤君なんでそんなに詳しいの?」
「上田に教えてもらったんですよ」
伊藤が親指で洞穴の入り口付近を指す。
「上田君⁈」
指差された方向を見ると、和服を着た上田君が、入り口付近の壁に腕を組んでもたれかかっていた。
手には狐のお面を持っているし、あの時のはやっぱり上田君が…。
っというか2人とも気配を消すのが上手いのか、存在感が無いのか…。
「…ようやく起きたか。」
静かに目を開け此方を向く。
「上田君が助けてくれたんだよね?」
「…ああ」
「ありがとう上田君。」
お礼は言っておかないとね!
「…そんな事は良い、それより伊藤約束は守れよ?」
そんな事って……
それより約束?
「ええ、分かっています」
いや、なにが?
「姉さん、ちょっと良いですかい?」
誰が姉さんやねん!
伊藤君が私の耳に顔を近づける。
「姉さんは今銀髪のメイドちゃんじゃないですか、それで上田から情報を聞き出す代わりに約束しちゃったんですよ…」
嫌な予感しかしないんだけど…
「何を約束したの?」
「…姉さんが上田にメイドプレイをしてあげると……」
…
「お願いです姉さん!上田の情報は必要なんです!」
伊藤は頭を地面につけている。
…
…
「……伊藤君、借り1、ね?」
まあ確かに上田君から情報を聞き出すのは重要だけど、勝手に決められるのは腹立つよ。
これも多分山田君の知恵だよね?
2人とも後で体育館裏決定ね。
しかし、どんな言葉がいいんだろうか。
上田君、あの怪物を倒すくらい強かったし、
過負荷の事とか、他にも重要な情報を持っている筈だよね。
上田君がチート系主人公ポジなのはほぼ決まりだ。
少しくらい恥ずかしい台詞を言ってでも、
気に入られるべき!
ここは、あれしか、無い!
「ご、ご主人様、お風呂になさいますか?
お食事になさいますか?
それとも、わ、わた、わた……」
って、言えるかぁああああ!
恥ずかし過ぎて顔から火がでそうなんだけど!
し、しかしこのままでは上田君に気に入って貰えなくなってしまう!
って、あれ?
上田君の動きが止まった。
ん?
「ご主人、様?」
徐々に顔が赤くなっていく。
どうしたんだろう?
うーん
これは、もしや…
ニヤニヤッ
上田君の前に膝を立てて座る。
「ご主人様?体調がよろしく無いのですか?」
さらに上田君の顔が赤くなった。
間違いない!
効果は抜群だ。
何だか恥ずかしさより楽しさが勝ってきた。
次の手は、もっと顔を寄せてと、
あっ…
上田君が鼻血を吹き出し、こてんと倒れた。
え?
「柊さん、充分です……
C boyの上田にはこれ以上の刺激は……」
伊藤君がそっと手を私の肩におく。
********************
「…それで、何が聞きたい?
伊藤にもある程度話たがな……」
上田君は石の上に座り、某司令官の様に手を前で組み、重々しい口を開く。
鼻にティッシュを差しながら…
……
「よくティッシュあったね?」
「たまたまポケットに入っていた……」
「その話し方は元々?それともロールプレイ?」
……
「柊さん、上田のライフはもう……」
純粋に気になってんです……。
色々聞きたいことはあるけど、まずは…
「上田君はこの状況をどこまで知っているの?」
「フッ…」
上田君の目が光り口角があがる。
鼻にティッシュを差しながら……
********************
ふむふむ
上田の話を纏めるとこうだ。
・上田はこの世界に来る前に、ある体感型ゲームのテストプレイのバイトをしていた。
・あるゲームの内容がこの世界と似ている。
・あるゲームのテストプレイ中のデータがこの世界で再現されている。
・今の服装や刀もテストプレイ中に手に入れたらしい。
脳内会議により満場一致で、媚びを売る方向に決定!
しかし上田君ペラペラ話したな。
まあ、ありがたいんだけどさ。
「ついでにステータスで聞きたい事あるんだけど、???とか未発動ってどういう意味なの??」
前から気になってたんだよね。
「⁇?はレベル不足だ、未発動ってのは
レベルは達しているが、条件が満たさせれ無い状態だな。
未発動の所を押してみろ、条件が出る。
あと前から気になっていたが、声に出さなくても頭の中で考えれば、ステータス画面は浮き上がるぞ。」
ステータスオープン
あっ本当だ。
えっとなになに。
魅惑の魔眼
「性的興奮を与える2/10……」
なにこれ……
「ごめんなさい。」
「…すまない。他意はないんだ。」
2人とも綺麗に90度腰を折っている。
いや、他意は無いってそれそれで……。
それに説明文もっとマシなのにしてよ……
性的興奮を与えるって、もっと別の言い方あるでしょ…
2人に対して軽く罵っておいた。
おい田中ニヤつくんじゃない!
「ちなみに、上田君はこの後どうするの?」
「…とりあえず近くの街に行って情報収集だな。」
まあ王道な流れね。
「私達も、」
「僕達も連れていって貰えないですか?」
伊藤君の声に消されてしまった。
上田君は1度目を瞑ると、ゆっくりと口を開く。
「…足手まといはいらない。」
…まあそうだろうね。
ってなに?
伊藤君が肘でツンツンしてきた。
なに?またあれ行けってこと?
えぇ…
でも、まあ行くしか無いよね…
「ご主人様、私達もお供させてください!」
手を組んで上目遣いでお願いする。
上田君は一瞬狼狽えるが、ぐっと堪える。
「…くっ、しかしダメだ!何があるか分からない世界で、荷物は抱えれない!」
ぐぬぬっ
これが効かぬとは
「柊さん、次はお兄ちゃんでいきましょう。」
伊藤が耳元でボソッと呟く。
えぇ…
それ君が見たいだけじゃないの?
まあ…伊藤君よ、借り2だぞ。
「お、お兄ちゃん!私達を置いて行くの?」
目をウルウルさせ、涙目になりながらお願いする。
どう?
上田が頭を抱えて唸っている。
効いてる効いてる。
もう一押し!
「お兄ちゃん、お礼なら、するよ?」
どうだ!
「……勝手についてこい。」
上田は鼻血を指で押さえながら立ち上がる。
「流石です姉さん!」
ふっふっふっ
銀髪メイド妹強し!
……
けど何か大切な物を失った気がする……。
それに私この世界に来てからずっと夜のテンションみたいな感じになってるし…
まあ成功したしいっか。
上田君いじるの楽しいし!
私と伊藤君も立ち上がり、上田君の後をついていく。
「リーダー…任務成功だ」
洞穴から出た瞬間に伊藤君が呟く。
今何か言った?
突如岩壁の辺りがバチバチと鳴り4つの人影が現れる。
え?何?
山田、田中、雪、真央の4人だった。
「楓〜!」
真央が勢いよく抱きついてくる。
「みんなどこにいたの?」
「田中のスキルだったみたい。」
あっ、田中君のこと完全に忘れてた……
「良くやった伊藤、それとすまない。
連れ来れたのは2人だけだ。
他の奴らには上田の重要性が理解出来なか ったらしい。 」
まあこういう内容のラノベでも読んでない限り、理解は出来ないだろうね…。
「それより上田、俺達も付いて行かせて貰うぞ。」
「……」
上田君は無言で首筋にある魔法陣に触れる。
いや、急にどうした?
私全く理解できてないんだけど!
「伊藤君どういう事なの?」
説明プリーズ!
「リーダー達は田中のスキル隠密の効果の一つ、気配遮断によって岩壁に隠れていました。
上田に僕達を連れていくかどうか、尋ねていた時からね。
尋ねる時に僕は契約のスキルを声に乗せて発動したんです。
僕達(この洞窟内に居る者)も連れて行って貰えないかと。
それに彼は頷いた事によって契約完了しました。彼の首筋の魔法陣が証拠です。
この契約を破ると爆発します。」
なん、だと!
あと、説明お疲れ田中君。
君をバトル漫画に1人はいる、解説役に任命するよ!
それにしても、この世界に来てから、
何出来る男連続で発揮しちゃってるの!
前の世界であんなにパッとしなかったのに!
これ女によっては惚れる案件だよ!
私?私は君達の変態っぷりを目の当たりにしているから、あり得ないけどね!
「そういう事だ。問題無いな上田?」
山田が自信ありげに顎を少し上げ、上田に尋ねる。
田中、伊藤もそれに続き、今世紀最大のドヤ顔を決める。
上田は先程から黙っている。
チート主人公でも出来る男達の前では無力なのか!
「…知っていたさ。出なければあれ程迷わなかった。
話が終わったのなら早くいくぞ。」
上田はフンッと鼻を鳴らし、歩き始める。
立ち尽くすオタクトリオ。
私は3人に心の中で手を合わせる。
ご愁傷様…
やっぱり主人公は違うね!
まあ何にせよ、
主人公側に付けたって事で、第1段階はクリア。
後は捨てられないようにしないと……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます