第2話 分岐点

上田君を連れ戻すとのなら、今すぐにでも追いかけないといけない。


だけどこの空気の中、上田君を連れ戻してくるとも言いにくいし……。


「ねえ楓、楓!どうしたの?体調でも悪い

の?」


「あ!ごめん なんだった?」


「だから、このまま居ても始まらないから

探索でもするかって話!」


探索か、探索と言って上田君を探しに行くのもありかも…


「上田がどうしたの?」


「え⁈」


もしかして声に出てた?


「上田が何たらって言ってたじゃない。」


「いや、上田君を追い出しても良かったのかな、とか思っちゃったりして…」


「楓正気⁈!」


「おい柊!あんな奴ほっとけって!」


「お前まじか?」


「柊さん、彼はもう無理だ」


うわ!凄い勢いで反対された


「だ、だよね…」


正直これが私が読んだことのある、テンプレ異世界転移系だとしたら、上田君を仲間にするか、上田君の仲間になるのが正解の筈なんだけど…


もし普通に空気読めてないだけだったり、

異世界に来て舞い上がっちゃってるだけという可能性も…


あるね、うん


どうしよう本当に


「柊さん」


「へっ⁉︎」


急に後ろから声をかけられて変な声が出てしまった。


「なんだ、山田君かびっくりさせないでよ」


「ああ、悪い

それより柊!」


両手で肩をガシッと掴まれる。


「な、なに?」


山田君が耳に顔を近づける。


「…柊、実はお前も察してるんだろ?

俺の経験則から考えるにも上田は間違いなく

黒だ、今後主要人物になるか、

もしくは…

何か知っている可能性さえある。

アイツには接触して置くべきだと俺も思う。

そこで今、田中に追跡させている。

田中のスキルが何か覚えているか?」


山田君出来るやつ過ぎない⁈

私の知っている山田君じゃないんだけど!


それにしても田中君のスキルか…

そんな全員分のステースなんか、覚えてないんだけど…

でもスキルは前いた世界での、個性や特技に関連していた気がする…。


思い出すんだ、彼のことを!


あっ、そう言えば田中君はアイドルの追っかけをしていると聞いたがある!


はっ!


「田中君のスキルはストーカーね!!どう?」


「どうじゃねえよ!バカか柊!」


両肩を掴んでいる手の力が強くなる。


「ひゃい⁉︎」


肩痛いし、顔が近い!


「こっちは真面目にやってるのに、つったく…」


「ご、ごめんなさい!」


山田君こんなキャラだった?……


「田中のスキルは隠密、追跡には持ってこいのスキルだ。奴はお前らが言い争っている間に既に息をするように使いこなせていた。」


それって、ストーカーみたいなものじゃ…


「それで今田中は上田を追っている。

そこでだ柊!田中には目印を残すように

言ってある。それを辿り上田を追え!

俺はみんなを説得し、上田の重要性を理解させる。

その間に柊は

うおっ!! 何だ?」


山田は男子3人に私から引き剥がされた。


「何だじゃないでしょ!何だじゃ!

楓が怯えてるでしょ!こんな時に襲うなんて何考えてるの?」


「俺が柊を襲うわけねえだろ!」


山田は顔を真っ赤にし、

抑えつけられながらも叫ぶ。


「楓大丈夫だった?」


「私は大丈夫だけど、そこまでしなくても…」


「ダメよ楓、ああいうのは徐々に距離を近づいて来て危険だから!」


「う、うん…」


「だから楓!次同じような事があったら、

って、ちょっと待って!

山田は何をやっているの⁉︎」


山田の右手の手の平に、

黒色の小さな魔法陣が出現した。


「おい!何してるんだ山田!」


「おい山田!おい!」


山田の手の平の魔法陣が輝きを増す。


「フッ、くらえ!スモークボム!」


山田の手の平から黒色の塊がこぼれ落ち、

地面に触れると同時に洞窟内に黒煙が広がる。


「ごほっ!ごほっ!山田てめぇ何してやがる!」


「何この煙!」


「ふざけんなよ!おい山田!」



洞窟内に黒煙が充満する中、山田は1人二ヒルな笑みを浮かべていた。









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