とある旅人のお話

ビターラビット

とある旅人のお話

 昔々、ある旅人がいました。


 これは、その旅人がいつものようにあてもなく放浪していたときの話です。



 ある日、旅人がいつもの様にのんびりとあてもなく歩いていると、次の国の入口近くの森に、一人の少女が突っ立っていました。

 旅人は急ぎのようも無いので、暇つぶしに少女に話しかけてみることにしました。


「ねぇ、お嬢さん!どうしてそんなところに立っているの?」

少女は何も答えません

「おーい!聞こえていますか?」

少女は目以外はビクともしません。そこで旅人はYESなら一瞬き/NOなら二瞬きするように少女に指示しました。

 すると少女は一瞬きしました。


「じゃ、まず最初の質問。あなたが突っ立っているのは自分の意思ですか?」

少女は二瞬きしました。

「このことを知っている人はいますか?」

少女は一瞬きしました。

「あなたは自分が可愛いと思いますか?」

二瞬き

「売春婦ですか?」

「!?」

二瞬き

「へ〜そういう趣味なんだ」

「!?!!!!!!!」

 その時、少女の後ろの木が揺れ熊が現れました。そして、熊は、少女の後ろに隠れるような姿勢で旅人に話しかけ始めました。

「驚かしたようならすいません。私はこの人の弟です。私達兄弟は、魔法使いが困っているのを助けてあげなかったのでこんな風にされてしまったのです。どうかその魔法使いに魔法を解いてくれるように頼んでは貰えませんか?」

「う〜ん、どうしょっかな?そんなに急いでもいないからしてあげよかっかな?やっぱ辞めよっかな?」

「そこをどうかお願い致します。この道は人がめったに通らないのです。私達はあなただけが頼りなのです。どうか、この通りです。お願い致します。」

「そこまで頼まれたらやるしかない!って言う展開になっちゃいますよね…まあ、お嬢さんのためならやりますけど!」


 旅人は熊の弟君から住所と電話番号の書かれた紙を貰うと、国の中に入国しました。


 プルルル…プルルル…


「はい、こちら"とんがり帽子の薬局屋"です。」

「もしもし、旅人です。国に入国できたので今から向かうね!」

「はぁ?すいませんが用件を教えてもらえますか?」


 カチャ…


数分後… 


 プルルル…プルルル…


「はい」

「今大通りを曲がったよ!」


 カチャ…


また数分後…


 プルルル…プルルル…


「はい」

「今お宅の近くだよ!」


更に数分後… 

 

 プルルル…プルルル…


「はい、あのそろそろ用件を話してもらえませんか!?」

「ああ、怒ってる?ごめんね!今、喫茶店で店長さんと話してるから、下りてきて!」

「なっ…そんな勝手な!」

魔法使いは、仕方なく下に下りることにした。


 下におりた魔法使いを待っていたのは、何かの話で盛り上がっているオカマ店長と、旅人だった。

 魔法使いは溜息を吐きながら、旅人の近くに歩いて行きました。


「で、何のようですか?」

「あっ、君が魔法使いさんですか?実は、(省略)…それで、魔法使いに魔法をといてくれるように頼んできて欲しいと頼まれて来たんです。」

「それをやったのは、多分師匠ですね。あいにく師匠は今旅に出かけられていておられないのですが、それは、かけられてると思っているだけで、本当はもう呪いは解けて動けるし、ただの着ぐるみなんです。」

「えっ!じゃあ急いで知らせてあげたほうがいいよね。」

 そこで旅は、連絡用の魔術道具のコンパスを取り出して、少年に電話をかけた。



 プルルル…プルルル…


「あっ!もしもし、さっき会った旅人だよ!お嬢さん達の魔法もう解けてるって!」

「えっ!もう動いて家に帰ってるって!?」「えっ!あれアルバイトなの?うっ、嘘!騙すなんて酷いな〜」

「ドンマイ…スバル」

「本当に、こんな芝居までするなんてリンも酷いな!まあ、そういう所が昔から変わんないんだけどね…って…あっ!今のは何でもないですよ〜。今のは…そう!僕の故郷の幼馴染の女の子の話です。あはははっ…全く!僕は何で、こんな可憐で美しい人を彼女と重ねてしまったんだろうか?だからどうか今の話は忘れてくださいね…。あー!もうこんな時間!僕はもうそろそろ出ていかないと!では、さようなら…」

「そんな大根芝居までうって逃げようとしても、逃さないよスバル!」

「総員突撃!」

 魔法使いがスバルの襟を掴んだその瞬間、喫茶店のドアがいきよい良く開けられ、大勢の王宮兵隊たちが喫茶店に入ってきた。

「もっ、ちょっと今度は何?うちの店で暴れないでもらえるかしら」

「この喫茶のママ殿、無礼をお許し下さい。事は一刻を争うのです。」

「あらっ、イイ男。まあ…貴方がそう言うなら…」

「感謝いたします。さて…」

 その兵隊たちの先頭で、スバルに話を始めた美青年は、この国一の騎士で、舞踏会では〈華麗なる貴公子〉と呼ばれている王宮第一騎士団長のリンネルだった。

「…ともかく、さあ、スバル殿下。お城に帰って来ていただきますよ!」


 そして、スバルは一度は逃亡しようとしたが、最終的にリンとリンネルに両腕を塞がれて、馬車で城に帰ることになったとさ。




その日の夜…

 ずっと行方不明だった第二王子のスバルのが帰って来たということで、街はお祭りムードで盛り上がっていました。

「お前とか、旅の途中に死ねばよかったのにな」

「まあまあ、国王様、そんなこといわないでくださいよ」

「ふん、心配させやがって……まあ、その、おかえりスバル」

「…うん、只今、兄さん」

                  END

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