レベル260 ☆

「ヘイ、アニキ。鴨が葱しょってあるいてまっせ」


 とりあえず、街を見て回ろうと外に出た途端、さっそく攫われそうになるオレ。

 しかしあの頃のオレとは違う。

 きっちり返り討ちにして衛兵さんに差し出す。


「さすがですね! 敵の武器を全部撃ち落とすなんて」


 一緒に来てたサヤラがそう褒めてくれる。

 まあティニーのアシストもあるからな。

 今のオレの武器は聖銃ティニーのみ。


 オレ達が戦っている敵は、レベルが高過ぎて普通の武器じゃダメージがでない。


 なのでホーリークラウンはラピスが、ドラスレはロゥリが使っている。

 古代王国の名剣シリーズを借りればまた別なのだろうが、どんな地雷が潜んでいるか分からない。

 奴等の攻撃力は高く、ステータスの落ちた今のオレでは一撃死もありうる。


 なので、遠間からライフルモードで敵を削り、近づくとハンドガンで援護。

 雑魚が大量の場合は直接ティニーが戦うのでオレは応援のみだ。

 オレが魔法を使ってる間はアポロが使えなくなるので、基本見ている事しかできない。


 そして、意外と使えないのがサテライトキャノン。


 範囲攻撃のため、接近されていると味方を巻き込んでしまう。

 動いている敵には、着弾までのタイムラグの所為であたりゃしない。

 特にあそこらの敵は、上から落ちてくるのを見てから軽々と避けられるスピードを持ってる奴が多い。


 あと地味に不味いのが地形を破壊してしまうという点。


 サテライトが当たった場所は沸き立つマグマみたいになる。

 冷えて固まった後でも草木一本生える気配がない。

 完全な自然破壊ですよね?


 敵に気づかれない距離からの一方的な殲滅にはいいのだが、あちこちを不毛の大地にしたんじゃ開拓も何もないだろう。


 それにしても、敵とのレベル差が大きい分、レベルが上がるスピードは速い。

 ティニーなんてあっという間に20レベルを超えた。

 それにより増えた機関銃モードは大変役に立ってくれている。


 なお、今のオレの手持ちのカードは、


『スーパースター・ラピス』

 ☆12・レベル53

 スキル:超繁殖→聖母、カード統率・極、命名(使用不可)、テンカウント

 備考:モンスターCカード+1


ロゥリ・竜型スタイル

『天竜王・ロゥリ』

 ☆13・レベル45

 スキル:ホワイトブレス、天の岩戸

 備考:クイーズ特効


ロゥリ・人型スタイル

『神竜騎士・ロゥリ』

 ☆12・レベル45

 スキル:擬態+、万有引力・神

 備考:竜種特効、モンスターCカード+1、メテオブレイカー


『メタルスライム・スラミィ』所持者・アスカ

 ☆2・レベル37

 スキル:擬態・極


『聖王ホーリークラウン・カシュア』

 ☆7・レベル49

 スキル:未来予見・極、聖王

 備考:天敵・オーク、アンデッド特効、モンスターCカード+1、ホーリーノヴァ


『マンドラゴラ・ギター』

 ☆7・レベル31

 スキル:オート演奏、擬態

 備考:音の世界


『骸骨王・ダンディ』所持者・パセアラ

 ☆8・レベル23

 スキル:天啓


『お料理セット』所持者・エクサリー

 ☆4・レベル32

 スキル:オート料理、料理人召喚


『鉱石M』

 ☆1・レベル44

 スキル:素材変化・変形、素材吸収・破棄

 備考:モンスターCカード+1


『グランドピアノ・セレナーデ』所持者・カユサル

 ☆9・レベル35

 スキル:擬態+、英雄の旋律

 備考:一子出産


『ソーサー』所持者・カユサル

 ☆1・レベル2


『グリフォン・アイリスブラッド・カイザー』所持者・エルメラダス

 ☆8・レベル32

 スキル:龍風圧無効、超加速、擬態+

 備考:獣種特効


『竜王・ニース』

 ☆10・レベル10

 スキル:聖剣の担い手、竜化、輪廻転生(1)

 備考:全属性特効(小)


『ウィンディーネ亜種・アクア』所持者・サヤラ

 ☆7・レベル38

 スキル:混合魔法、科学知識

 備考:水系統倍化、火系統倍化


『ライオンハート・ハーモア』

 ☆5・レベル30

 スキル:獣人化


『ダークエルフ・サウ』

 ☆2・レベル34

 スキル:幻惑+


『エルフ・レリン』

 ☆2・レベル28

 スキル:器用貧乏


『パワードスーツ』

 ☆6・レベル39

 スキル:全パラメーター+

 備考:魔法無効(エリア・調整可能)、リミットブレイク


『スカウター』所持者・ラピス

 ☆9・レベル1

 スキル:叡智


『ミュージックプレイヤー』所持者・カシュア

 ☆11・レベル1

 スキル:聴覚探知・極、鷹の目


『エンゲージリング』所持者・エクサリー

 ☆10・レベル16

 スキル:精霊化


『烏天狗・ムハク』

 ☆5・レベル20

 スキル:変化+、風魔法


『シンセサイザー』

 ☆8・レベル17

 スキル:奏者


『精霊聖痕・アポロ』

 ☆9・レベル27

 スキル:精霊王+

 備考:物理攻撃無効、魔法攻撃無効


『リライフ』

 ☆1・レベル1


『フルドラムシンセ』

 ☆8・レベル12

 スキル:ミキシング、アンプリファイアー、サウンドウェーブ


『空母クイーン・ウィルマ』

 ☆10・レベル3

 スキル:水生成


『魔王サキュバス・フフ』

 ☆10・レベル18

 スキル:夢狩


ティニー・銃型スタイル

『聖銃・ティニー』

 ☆11・レベル23

 スキル:モデルチェンジ(4)、リロード

 備考:アンデッド特効、人型特効


ティニー・人型スタイル

『レディガンナー・ティニー』

 ☆4・レベル23

 スキル:必中、弾丸練成

 備考:狂化


『創造神・クイーズ』

 ☆1・レベル808

 スキル:モンスターカード創造

 備考:天敵・カードモンスター


 となっている。


 モンスターカードがいくらでも出せるようになった所為か、備考欄から通常カードの文字が消えた。

 大きく変わったのは、ダンディのレベルが20を越え、使用不可となっていた天啓のスキルが使えるようになった。

 同じく、竜王ニースの輪廻転生も使用不可から(1)という文字に変わっている。


 一回だけ使えるようになったという事だろうか?


 あと、カシュアの蘇生については相変わらずグレー文字。

 こいつのだけは(使用不可)とかも書かれてないのだが、再使用についてはレベルだけじゃなく何か条件でもあるのかもしれない。

 まあ蘇生なんてインチキスキル、そうホイホイ使える訳もないか。


 輪廻転生もたいがいアレだとは思うけど。


 そういやハーモアの両親は今頃、何しているんだろうな?

 まだ3歳ぐらいだろうけど、あの性格だし、そろそろ噂になっていてもおかしくない。

 ハーモアも何も言わないし放置していたんだが、探したほうがいいのだろうか。


 それにしてもパワードスーツがまったくレベルが上がらない。

 遠距離攻撃はパワードスーツには経験値が入らない模様。

 まあそりゃそうだよな。使ってないし。


 近接戦闘はラピスが決して許してくれない。


 クリスタルカードを今は切らしているので、早々に40レベルにしたいのだが。

 まあ暫く、アポロがダンディの元で精霊魔法について学ぶらしいから、その間、ここらのモンスターを倒してレベルでもあげるかな。


『クイーズさん、またなんか怪しげなのが寄って来てるッスよ』

「相変わらず治安が悪い街だな」


 サヤラは大丈夫なのか? なんかしょちゅうパシらされていると聞いたけど。

 えっ、アクアが居るから問題ない?

 まあアクアに勝てるのはそうそういないからなあ……うちのサウとは大違いだ。


 イダダダ、冗談だって。


「それにしても耳障りな音ばかりが集っていますよね」


 ギターちゃんがパンパンと手を払いながら、のしたならず者の上でそう呟く。


 確かに、あちこちから工事現場の様な大きな音が響いている。

 ダンディの無茶な政策により、一気に工業都市へと変化している最中。

 人々は慌しく動き回り、余裕の欠片も見当たらない。


「ここヘルクヘンセンの首都には凄い勢いで人が集って来てるようですよ」


 サヤラの話では、ここ一ヶ月程度で人工が3倍になったとか。

 街の外周では溢れた人々により無数のテントが張り巡らされている。


「ここに来れば職に溢れる事はありません。短期間のアルバイトでも辺境の一年分の給金が稼げます」

「なるほどなあ……近くの農村が全滅しそうだな」

「その辺りはなんか、足元を見られる前にと、前金でごっそり渡して、現状価格で10年単位の輸入契約を結んだらしいですよ」


「………………」


 ほんと抜け目がないなアイツ、敵に回したらどうなる事やら。


「味方で居ても禄でもないんですけどね」


 遠い目をしてそう呟くサヤラさん。

 オレも思わず「そうだなあ……」と、スモッグで曇った空を見上げる。

 これ確実に、環境破壊アンド公害が進んでいるよなあ。


 と、暗い雰囲気になりそうなところでサヤラがポンと手をたたく。


「そうだクイーズさん。ここでライブ、とかやってもらえません? 久しぶりに演奏が聞きたいです!」


 なるほど、ソレはいいかも知れない。

 よし、ギターちゃん、ちょっとやってやろう。

 この暗い空を、オレ達の音楽で照らしてみせようじゃないか!


「はいっ!」


 オレの胸にギターちゃんが飛び込んできて一瞬にして姿が変わる。


「聞かせてやるぜ! 魂をシャウトするハードな音楽を!」

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