レベル227 第十四章完結

「確かに、筏になりたいとは言いましたが……」


 筏の中央には円柱形の水の水槽があり、その中に、人型の海神ウィルマの姿があった。

 しかし残念な事に、水の中だってのに服を着ていた。

 普通ここは裸じゃないのか?


「いったい何を期待しているんですか、何を」

「いででで、いやだって、カプセルの中に浮かんでいる場合、そういうのがお約束じゃないの?」

「ガウガウ、コノスケベメ」


 いででで! お前までケツを齧るなよ!

 えっ、勝ったらうまいものをたらふく食わしてくれるって言ってた?

 うまいものってオレの事かよ!?


 さっきのは半分ぐらいはオレが倒したも同然!


 だったらおめえの尻尾を食わしてもらうぞ!


「ガウガウッ!」

「いでで、このクソドラゴン!」

「ほんと二人とも仲が良いですねえ」


「「ヨクナイ!」」


 そうやってロゥリと喧嘩していると、ウィルマさんが水槽から出てきた。

 なんだ普通に出られるんですか。

 そして辺りを見回して呟くのが没頭のセリフでございます。


 いや、オレの所為じゃないよ。ないよね?


「クックック、希望が叶って良かったではないかウィルマ」

「はぁ……まあ、この姿でも行動はできるようですし、本体はまあ、我慢するしかありませんわ」


 うん、筏はないよね?

 仮にも海の神とまで言われていた存在が、筏。

 かっこがつかないどころの話ではない。


「よし! ようは見た目をなんとかすればいいんだよな!」


 オレはそう言うと、パンと手を合わせた後に筏に手をつく。

 そしてオレの手から徐々に広がって行く鉱石M。

 それは筏の表面を包みこみ、さらに広がって行く。


 見た目だけを整えるのならこれでいける!


 徐々に空母の姿を形どる鉱石M。

 甲板にはラインまで作り、小さいが艦橋まである。


「おおっ……さすがお坊ちゃま! と言いたいところですが、ちょっと小さすぎません? あとこのブリッジ、人が入れませんよ」


 本来の空母は全長300メーターは超える。

 しかし、我が空母、30メーターが限界でござった。

 なお、出来たのは上辺だけで、下は丸太がむき出しでござる。


 うん、鉱石Mの擬態ではこれ以上は広がらない。

 しかも随分薄くしたので、ちょっと押せば穴が空いてしまう。


「微妙ですねえ……」

「空母にこだわらなければ、もっと他の形にできないこともないだろうが」

「そうですねえ」


 ラピスがなにやら瞳を閉じて考え込んでいる。

 暫くしてエフィールさんがやってきた。

 どうやら近くに居るカイザーに言伝を頼んで、エフィールさんに来てもらった模様。


「買えるだけ買っては来ましたが、何に使われるのですか?」


 エフィールさんが時空魔法で何かを取り出す。

 それは山盛りに盛られた鉱石M。の元の素材、メタル鉱石であった。

 ラピスが敷き詰めていた鉱石Mを一旦元の姿に戻す。


 そしてその鉱石Mをメタル鉱石に埋め込む。


「何やってんのお前?」

「いえ、こうすれば、鉱石Mの容量が増えないかと思いまして」

「面白い事考えるなお前、とりあえず試してみるか」


 鉱石Mで包んでみたり、穴を開けて内側から吸収できないかどうか試しているときだった。


 突如浮かび上がる鉱石Mのカード!

 鉱石Mは変形を繰り返すだけでも微量だが経験値が入る。

 そして先ほどの海竜王戦で、結構な経験値が溜まっていたおかげか、40レベルに到達した模様。


 しかしながら、鉱石Mはそもそもクラスチェンジ自体がない。

 40レベルになっても鉱石Mは鉱石Mのまま。


『鉱石M』

 ☆1・レベル40

 スキル:素材変化・変形、素材吸収・破棄

 備考:モンスターカード+2、モンスターCカード+1


 レアリティも☆1のまま変更はない。

 その代わりと言っては何だが、スキルが色々変わっている。

 擬態+が消えた代わりに、素材変化に変形が加えられている。


 まあ、擬態って文のほうがおかしかった訳だが。


 それに素材吸収・破棄が追加されている。

 おかげでエフィールさんが持ってきたメタルを全て取りこむ事に成功!

 結構大きな塊になりました。


 しかし破棄はなんだろな?


 重くなったときに分離するぐらいにしか使えないんじゃ?

 と、思ったわけだが、これが実は神性能!

 なんと、破棄出来る訳ですよ!


 作った素材を!


 たとえば鉱石Mで刀を作る。

 で、作った刀を破棄する。

 するとまあ、普通に刀が量産出来る訳です、ハイ。


 吸収できる素材はメタル鉱石のみなので、素材変化をした破棄後の商品は再度取り込めない。

 破棄された商品は変化・変形は行えない。

 だが、十分ですよね?


 これで鉱石Mを使った錬金術が可能になった訳ですよ!


「しかしお坊ちゃま、この刀、すぐに刃こぼれするし、簡単に曲がっちゃいますよ」

「ううむ……なんちゃって知識じゃ碌なもんが作れない訳だな」

「それじゃ、私がこれを預かりますね。空母も作らないといけませんし」


 いやいや何言ってるのキミ?

 それないとオレの防御力がだだ下がりですよ?


「はい、ライオットシールド」

「いやこれが欲しいわけじゃないんだ。ほら、変形とかで色々形が変えられるから良い訳で……」

「お坊ちゃまは最近、装備に頼り過ぎだと思います」


 何お前までペンテグラムと同じような事、言ってるの?

 さてはおめえ、空母に目がくらんだな!


「お坊ちゃまだって空母欲しいでしょ? それに……」


 なにやらラピスがウィルマさんと話しこむ。

 すると暫くして筏が浮かび上がる。

 おおっ、コレ、空も飛べるのか!


「どうです、空飛ぶ空母ですよ? 欲しくはありませんか」

「欲しい、ぜひ欲しい!」


 ほんとお坊ちゃまも、人の事言えないぐらいチョロイですねえ。と、こっそり呟くラピスであった。

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