レベル209 『モンスターカード!』で、ゲットしてみたら魔法王になりました。
アポロが祈りを捧げるように、胸の上で両手を組む。
そんなアポロに様々な色の光が集る。
虹色ではない、はっきりとした色の色素が光となってアポロに向かって行く。
真っ白な光、真っ黒な光、赤や青、緑や黄色。
そんな色達がアポロに向かって吸い込まれて行く。
最後に、そんな光達がアポロと共に弾け飛ぶ!
そしてアポロが居た場所に、一枚のカードがゆっくりと回転しながら浮かび上がってくる。
オレはそのカードを手に取った。
『聖痕・アポロ』
☆9・レベル1
スキル:魔法王
備考:物理攻撃無効
はい、失敗。
うん、なんだか凄そうな文字が並んではいるが、どうみても人間ではない。
ラピスたんお願いします。
「まあまあ、とりあえず使ってみてはどうです?」
「いやこれは確実に失敗だろ? 仮に擬態が生えたとしてもそれはもう人間じゃない」
「でも一回ぐらいは使ってあげて欲しいです。アポロも相当な決心をして挑んでいます、まったく役に立たなかった、なんて知ったらどれだけ落ち込むか……」
ううむ、確かにサヤラの言う通りかもしれない。
おいラピス、別に時間が経っても問題はないんだよな?
だったら少しぐらいはいいかも知れない。
なんだったらコレで戦って、ペンテグラムをボコボコにして、凄かったぞアポロ。とでも言えば納得がいくかもしれない。
いや、逆効果になりそうだから止めておこう。
物理攻撃無効なんてチートにも程があるだろう。
コレがあれば、どんなにロゥリに齧られても、痛くも痒くも無い! はず。
『出でよ! 聖痕・アポロ!』
突き出したオレの手の先に、乙女が祈りを捧げているかのような紋章が浮かび上がる。
そしてそれが、オレの胸に向かって飛び込んでくる。
服を開いて見てみると、ちょうど胸の中心に先ほどの紋章がタトゥーのように描かれていた。
「どうですかお坊ちゃま、何か変わったところはありませんか?」
「いや、特には……てっきり魔法の術式でも頭に浮かんでくると思ったのだが……」
とその時、オレの目の前に炎の玉が浮かび上がる。
炎だけじゃない? 幾つもの丸い宝玉のようなものが浮かび上がり、その中には、火、水、雷といった様々なものが入っている。
これは……一体?
『……私が作り出した』
ふと、頭の中にアポロの声が響く。
アポロが……!?
そんな姿になっても意識が残っているのか?
『……大丈夫、私はしっかり私であることを認識できる。それに、こうすれば人にも戻れる』
周りの玉が消えたかと思うと、まるで3Dプリンターの様に足元から人が作られていく。
最後には、生まれたままの姿でアポロが現れる。
ちょっとアポロさん、服! 服着てください!
「えっ……キャッ!」
急いでそのアポロに駆け寄るサヤラ。
「服の再現は……難しかった……」
どういうことでしょうか?
「……私が今まで持っていたスキルは魔力操作というもの。魔力を操作できる事により、どんな属性の魔法であっても習得が可能」
そして魔法王のスキル、これはどうやらその上位に位置するスキルのようらしい。
今までは意図的に魔力を操作して魔法を生み出していた。
しかし、このスキルでは、使用したい魔法に必要な魔力を自動的に集めてくれる。
「……これにより、使える魔法の幅が大きく増えた」
その増えた魔法の中に失った体を再現する魔法がある。
年をとった魔法使いが、若い頃の体を再現したりするアレだ。
その魔法を応用して自分の体を作り出したようだ。
「はいダウト。胸の再現がおかしい」
「何を言う! 私は元からこれぐらいあった!」
ギターちゃんシビアですね。
アポロさんも抑えて。
「ほんとになんともないのアポロ?」
「やせ我慢は駄目ッスよ」
二人の心配そうな顔に力強く頷くアポロ。
そしてアポロは体を消して聖痕に戻る。
『私を通じてクイーズは魔法が使えるようになる。私の魔力をクイーズが操作出来るようになっている』
「そうなのか?」
『でも、出来るようになっただけで、実際に使うには修練を重ねなければならない』
なるほど、魔法の才能があっても、その使い方が分からなければ意味が無い。という奴か。
『私自身もこの姿のまま魔法が使える、それだけでも、クイーズの役に立つと思う』
「とりあえずは、何が出来て、何が出来ないか。まずはそれを知ってから解放するかどうか考えてもいいのではないでしょうか?」
「そうだな……よし、ロゥリでも起こして試してみるか」
で、試した結果。
「ガウガウ、ヒャクネンハヤイ」
ええ、ボロボロにされましたよ。
物理攻撃無効、なのはアポロ本体だけ。
ええ、そうなんですよ、あの聖痕部分だけ。
意味ねえ……
しかもパワードスーツとの相性が最悪だ。
ロゥリの魔法を止めるため魔法無効エリアを発動すると、アポロの魔法まで止められる。
で、魔法戦メインにすると遠距離戦になるので、身体能力向上の意味が薄れる。
アポロも魔法王のスキルを使いこなせて無いらしく、うまく連携もとれやしない。
ロゥリのスピードに翻弄されているうちにあっというまにボコボコにされた。
うん、最初からロゥリに挑むんじゃなかったな。
まずはカシュアからにしとけば良かった。
「また禄でもない事考えてない? 回復魔法止めるよ」
いえいえ、何も考えていませんよ?
『……今回は本領を発揮できなかった。でも、今度はもっと役に立って見せる、だから……私をずっと傍に置いてください』
「いや、十分役に立ってくれた。オレだって魔法が使いたかったんだ、アポロ……これからもよろしく頼む!」
『………………うん、任された!』
そんな少し泣き笑いな声が、オレの頭の中で響くのであった。
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