レベル205 試練の洞窟

「という事で、二人にも協力してもらいたいんだけど、どうかな?」


 二人の少年に、少し控えめの上目遣いで問いかけるレリンちゃん。

 少年達は、そんなレリンちゃんに見つめられて少し顔を赤くしている。


「なんだソイツラ、役に立つノカ?」


 サウがレリンに問いかける。

 片方の少年がダイギリ、現剣聖の息子で、剣の腕だけならロゥリ部隊の中でも一番の実力。

 もう片方は、最近仲間入りした烏天狗のムハク。


 レベルが1になった事により、能力はグリフォンドールの時より下がってはいるが、その知識、技術は健在で、モンスターが相手ならかなりの戦力になりそうだ。

 それに、クイーズがラピスに作らせた、錫杖という武器を用いればダイギリにさえ引けは取らない。

 しかし本人は、刀に固執しているので模擬戦ではいつも負けてばかりだが。


 レリンは自身の可能性を伸ばす為に、ロゥリ軍団や二人に混じって剣術の練習まで始めた。

 そのおかげかスキル候補に剣術も現れるように。

 それを見て益々精力的に練習に励むレリンちゃん。


 軍団の中でも数少ない女の子、頑張り屋で気が利く。


 エクサリーと一緒にお弁当の用意をしたり、疲れた皆にタオルを配って歩く。

 そんなレリンちゃんにニコッと笑いかけられて、コロッといく子が続出。

 それはこの二人も決して例外ではない。


「ああ、まあ、別にいいけどよ……なんだそのカード? それになれば良い事があるのか?」

「そりゃ良い事がありまくりだ! こんな風に望んだ姿になれるし、努力さえすれば確実に力は上がっていく!」

「……私も努力しているんだけど、あんまり上がってないのは、まだまだ足りてないのかな?」


 あっ、いやっ、レリンはきっと大器晩成なんだ。とシドロモドロに答えるムハク。

 みんなそう言って励ましてくれるけど、目線が明後日なんだよね。と落ち込むレリン。


「心配するなレリン、たとえ力がなくとも、この俺の傍に居れば傷一つ付けさせはしないぜ」

「お、俺だってお前一人ぐらい守って見せる!」

「ありがとう二人とも、そう言ってもらえると嬉しいよ」


 首を傾けて二人に微笑を返すレリン。

 さらに顔を赤くしていく二人の少年。


「ケッ、スっかり悪女が板にツイテルナ」

「天然は怖いな。まあいいんじゃねえか、戦力は増えそうだし」


 二人とも聞こえてるよ。と呟いた後、少年達に問いかける。


「問題はレベルを上げる場所なんだけど……」

「それなら任しとけ! 良い場所があるんだ」


 ムハクが言うには、アンダーハイトの山奥に高レベルのモンスターが居るダンジョンがあるらしい。

 そしてそこは常に封鎖されていて、アンダーハイトの山岳に登ってくる人間もいない。

 すなわち、少々暴れても誰にとがめられる事もないという訳だ。


「おい大丈夫なのか、そんな危険な所へ連れて行って?」


 ダイギリがムハクにそう耳打ちする。


「なんだ、自信がねえのか? だったら留守番してていいんだぜ」

「ムッ、そんな訳無いだろう。言っとくがこの中で一番強いのは俺だぞ」

「剣の腕がいいからってダンジョンでも役に立つとは限らねえぜ」


「ほらほら、もう喧嘩しないの。明後日から学校も連休だし、その時にでも行ってみようか?」


 ああ、任しとけ。といい返事を返す男の子達。

 しかして三日後、5人プラス、ミニアクアはムハクの里帰りに付いて行くと言う名目でアンダーハイトの山奥に到達するのであった。


「おい、いいのかほっといて?」

「可愛い子には旅をさせろとも言うだろう。説教は帰ってからでも出来る」

「相変わらずのスパルタな」


 しかして、そのメンバーの後を付けるオレとペンテグラム、アポロ達三人娘。


 アポロが、ちょっと小さくなって挙動不審なアクアを問い詰めたところ、子供達だけでダンジョンに向かうと言う。

 急いでオレに知らせにきてくれたのはいいが、止めさせようとしたオレに待ったをかけるペンテグラム。

 自分達の実力を知る良い機会になるだろう、いつまでも大人が引率していたのでは子供達の為にならん。などと言って。


 うちの子達は最悪何かあってもカードに戻るだけだが、ダイギリはそうはいかないだろう。

 他所様から預かった子を傷物にも出来まい。と言ったら、ならばこっそり後をつけて、危険そうなら手を貸すことにしようとなった。

 しかし、あの構成でまともに戦えるのか?


 戦力として数えられるのはダイギリとハーモアぐらいだろう。

 ムハクもレベルがまだまだ低く、グリフォンドールだった頃より力も落ちている。

 何より、人の体になってまだ日も浅い。


 刀と言う未知の武器を使う事もあり、戦力に数えるには心もとない。


 一応、うちのリーサルウェポンであるアクアの分身体がついているとはいえ、戦うのはレベルアップが必要な子供達である。

 しかも何やら怪しそうなダンジョンに潜って行く。

 ラピスから借りているスカウターで見たところ、難易度はAマイナスと表示される。


 Bがおそよ20レベル、Aが30レベル台。その間だから20後半ぐらいの敵だろう。


 せめてハーモアが、20超えていれば可能性はあるだろうが……

 やはり、今からでも止めたほうがいいのでは?


「やられてもカードに戻るだけなのだろう。なに、ダイギリは俺が見ておく」

「いやしかし」

「まったく、お前は少々過保護なところがある。自分の限界を試すには自分以上の敵にあたらねばならん」


 確かにペンテグラムの言う事にも一理ある。

 よし、カシュアを呼び出して、いつでもリミブレ使えるように……


「だからそれが過保護だと言うておるのだ」


「そうですよクイーズさん、もっと子供達を信じて上げましょう」

「…………大丈夫、いざとなれば私が魔法で援護する」

「うちの銃もあるッスよ」


 だったらオレは何をすればいいの?

 えっ、黙って見てろって?

 そんな殺生な。

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