レベル194 アンダーハイト王国・スプートニク砦

 ああ、そういやそうだった。

 今回の仲裁の件、オレが主導した事になっているんだった。

 うん、じゃあオレが交渉しなくちゃね。


 嫌だよぉおお! なんでだよぉおお!


 おまっ、見ず知らずの人に奴隷になれって、どこの悪役だよ!

 やばいな……なんでこんな事になったんだ?

 かといって、またラピスに放り投げたら、とんでもない事になりそうだし……


 気乗りはしないが、とりあえず、言うだけ言ってみるしかないなと思い、その国に作ったという砦に向かった訳だが。


「……随分立派な砦だな。突貫工事にはとてもみえないのだが」


 断崖絶壁を背にグルッと円形に組まれた壁のような砦。

 かなりの規模で、砦内には城の様なものまで建っている。

 そしてなにより、随分古臭い。


 なんていうか……千年ほどの年季が入ってるかのよう。


「この地の攻略には千年前も苦労しましてな、蜂起や反乱に備え、地の下に砦を埋めておったのですよ」


 なんてバルデスさんが説明してくれる。

 どうやら古代王国の遺跡を復活させた模様。

 砦の前には堀があり、そこが元々砦が埋まっていた場所だそうな。


「どうやって掘り起こしたの?」

「王城アルバトリオンに眠っている魔道具を使用いたしました」

「そこの宝物庫、伝説級のブツがいっぱい眠っていましたよ」


 なるほどなあ。

 しかし埋まっていたのは砦部分のみ。

 中の建物はほとんどが絶賛建設中である。


「小さな城もあるにはあったのですがな、さすがに千年の月日には耐えられなかったようです」

「砦が千年残ってるってだけでも立派な物だ」

「あっ、そうだお坊ちゃま、なにやらバルデスが、珍しいモンスターを捕らえているって言ってましたよ」


 ラピスがそう言うとバルデスが頷き、とある場所へ案内される。

 そこには、なにやら巨大な鳥篭のようなものがあり、中に一匹のモンスターが座り込んでいる。

 それは、上半身は鷲、下半身はライオン、のような姿をしたモンスターであった。


「グリフォンの子供?」

「見た目は近いですが、別物です。まあ一節には、グリフォンと人の合いの子と言われていますがな」

「大きさは成人しても人より少し大きい程度、二本足で歩き、人並みの知能を誇る。そうですね、ハーモアの鳥版と言えばわかりやすいでしょうか」


 ふむ、鳥の獣人みたいなものか?

 この国を囲む山脈にしか生息しないモンスターで、名をグリフォンドールというらしい。

 滅多に人前に姿を現す事は無く、その存在は伝説上のものとされているとか。


「千年前、ここを侵略する際にも苦労させられましたよ。姿が見えないのに、どこからともなく魔法が飛んでくる」


 国を守る守護者のような感じでもあったらしい。

 それが、自分達の頭を超えて急に国内に砦なんて出来た物で、慌てて偵察にきたのだろう。

 バルデス以外なら見過ごしていたかもしれないが、千年前に実際に戦ったバルデスには、その気配を察知する事が出来たそうだ。


「まず、来るだろうとも思っておりましたからな」


 ささ、どうぞ。と言ってオレを誘導する。

 えっ、これゲットしろっていうの?

 すげ~勢いで睨んできているんだが、これまたロゥリのようにならないか?


「動きはとても素早く、隠密に長けます。風魔法にも精通しており、かなりの戦力となりますぞ」

「まあ、とりあえずゲットしてから後の事は考えたらどうですか」

「いや、もう敵愾心の高い奴はいらないんだが?」


 ホウオウの時もびびったよ。

 エクサリーが燃やされるかと思った。

 なんだかんだで仲良くなったようだから良かったものの。


「ふうむ、ならばどうしますかな」

「山に帰してやれば?」

「もったいないですよぉ」


 まだ子供のようだし、別に人様に迷惑かけてた訳じゃないんだろ?


 オレはとりあえず、鍵穴に鉱石Mを差し込む。

 そして変形させてカチャリ。

 鍵を外し扉を開けてやる。


「……随分器用な真似しますね、お坊ちゃま」


 グリフォンドールの奴は、オレの方をジッと睨みながらソロソロと鳥篭から出てくる。

 オレが山の方へ向けてあごをしゃくると、何やら頷いたふうな仕草をして飛び立っていく。

 何度かチラチラと、こちらを警戒しながら山に帰って行った。


 そしてグリフォンドールを見送ったオレはバルデスにとある場所へ連れて行かれる。

 随分、広い、そして天井も高い。

 まるでそれは、古代王国王城アルバトリオンの王座があった部屋のごとき。


「わざと似せて作りましたからな。こちらの方が、脅しが効くでしょう」


 脅すのかよ? 気が重いな。

 と、なにやら奥の方からハーモア、サウ、レリンが歩いてくる。

 ハーモアはなぜか獣人化済みだ。


「どうせ脅すなら徹底的にやろうと思いましてね。サウ、お願いしますよ」

「任せとけ、ケケケ」


 サウがレリンに両手を向けると、とたんレリンが妖艶な美少女エルフに変身する。

 幻惑か!?

 そしてサウはオレにも手を向けてくる。


 オレが纏っているパワードスーツが、何やら黒くてトゲトゲした感じへ変わっていく。


「おおっ、なんかかっこ良くなってきたな」

「ケケケ、これで迫力が3倍マシダ」

「あら、いい感じじゃないですか。馬子にも衣装って感じで」


 おい、馬子にも衣装は褒め言葉じゃないんだぞ?

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