レベル154 古の大地セイントガーデン

「というか、ピクサスレーンから来てるのか、その暗殺者」

「いやいや、あんな手練れのアサシンは見たこと無いよ! ボクの国は対人より対モンスターに力を入れているからね。アサシン雇うお金があれば、モンスター討伐する冒険者を雇うよ!」


 そもそも、あんなのいたらとっくの前にボクは昇天しているよ! と言う。

 そういえばコイツ、兄弟に命を狙われてたんだっけか。


「ん? カシュアちゃんはピクサスレーンの内情に詳しいのかな」


 そりゃ元王子様ですから。

 つっとこの話題はまずい。


「オ、オレもピクサスレーンじゃアサシンなんて見たこと無いし! というか、王族がそもそもアサシンレベルじゃね?」


 実勢カユサル本人から命を狙われたし。

 アサシン雇うぐらいなら自分でやるわ。みたいな?


「ま、どこぞの国が聖皇国とピクサスレーンの仲を裂きたいと目論んでいるんでしょうけどね」

「それと、最高峰のアサシンを仕向けたのは、お坊ちゃまに対する牽制ですかね」


 いつでもお前の首をかれるぞって事を知らしめたいらしい。


「確かに、カシュアがあんなに簡単にやられるなら、オレなんてひとたまりもないだろな」

「カシュア、いい加減追い返せるぐらいになりましたか?」

「無茶言わないでよ! 多少は持ちこたえる事が出来るようにはなってはきたけど、追い返すのは現状では不可能だね!」


 最近ではムキになって真正面から掛かって来る事もあるそうな。

 向こうは向こうで、何をやっても死なないカシュアに恐れをなしているのかも知れない。

 

「となると、やはりレベル上げが必要ですか」


 仕方ありません、と言ってラピスが立ち上がる。

 そのまま戸棚に歩いて行き、折畳まれた何かを手に取ってくる。

 そしてソレをバサリと机の上に広げた。


 それはこの大陸の地図であった。


「カシュアのレベル上げを目指しましょう」


 そう言って地図の上に幾つかのポーンを立てる。


「ここと、ここ、それにここ、これらがアンデットが多いとされる場所ですね。その中でも……」


 幾つかのポーンを赤い色の奴に差し替えて行く。


「この辺りがレベル的に理想な狩場ですかね」

「あら、それだったらおばさん、ここを推しちゃう」


 ユーオリ様が一つの場所を指差す。


「ほうほう、なるほどそこですか」

「どうせちょっかい掛けてきているのは、ここらへんの国でしょ? じゃあここのアンデット、殲滅してこの地を解放なんてしてみなさい」

「大荒れでしょうなあ」


 主もワルよのぉって感じで、二人顔を見合わせてクックックと含み笑いをしている。

 ユーオリ様が指し示した地、そこは南の国々を分断するかのように広がる肥沃な大地。

 古代王国の墓場が連なる場所。


「最も古き墓場、セイントガーデン」


◇◆◇◆◇◆◇◆


「フォオオオオ……見渡す限り墓、haka、ハカ! 地平線の彼方まで続いているじゃないか」

「正確な数は分かりませんが、一説には30億を超えると言われています」


 そりゃいくらなんでも眉唾物だろ? いや、積もり積もれば、それぐらいいってもおかしくないのか?

 オレは今、セイントガーデンと呼ばれる古代墓地の上空に来ている。ドラゴン(大)に変身したロゥリに乗って。

 今回は前回と違って快適な空の旅を満喫できた。


 どうやらコイツ、風圧調整やら温度調整やらを行う魔法を会得したらしい。

 らしいというか、どうやら前回は出来るのにやらなかった線が濃厚だ。

 まったく意地の悪いドラゴンだ。


 なんでも、


「えっ、自分の部下を紹介したい?」


 なんて事を言い出した。


 どうやらレリン達の学園だけでなく、色々な所で子分をこさえていたらしい。

 それを聞いてエクサリーさんが、是非とも紹介して貰いたいみたいな事を言ったようだ。

 エクサリーとしては、常日頃ロゥリと遊んでもらっているお礼を言いたかったようだが、


「……多いな、100人ぐらい居るんじゃね、アレ」


 数が尋常ではなかった。


 ドラゴン(大)の上に乗ってやって来た子供達、100人ぐらい居る。

 というか、コッチが行くんじゃなくて連れて来たのかよ?

 危ないだろ!


 えっ、100人乗っても大丈夫。だって?

 どこのコマーシャルだよ?

 そもそもお前、人を乗せられるような風圧調整と温度調整出来ないだろ?


 えっ、それは覚えた。だって?

 もしかしておめえ、前回、出来るのにやらなかった訳じゃあるめえな?


「ガウガウ、ソンナコトハナイ」


 ほんとかよ? 嘘くせえ。目線が泳いでいるぞ。

 えっ、自分も寒かったのでおあいこだって?

 おめえ……そんな口などこうしてくれる。


「ガウガウ!」

「いででで!」

「隊長が襲われているぞ! 皆、隊長を助けるんだ!」


「「オオッーー!」」


 イデデデ、止めろお前等!

 オレはちょっと嘘つきなコイツを懲らしめているだけだ!


「ガウガウ、ロゥリハ、ヨイブカヲモッタ」


 じゃねえよ!

 つってお前、確かロゥリが命を助けた宿屋の子じゃねえか。

 どうして居るんだ?


「ここに居る奴等は皆同じような奴等ばっかだよ。ロゥリ姉ちゃんに命を救われたり、家族を救ってもらったりしている。なんで皆、姉ちゃんに対する信仰が厚いから言動には気を付けたほうがいいぜ」

「そう言うのは先に言ってくれ!」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る