レベル148 第九章完結

 どうやら心当たりがあったようで暫く黙り込む。

 そうして暫くして、大きなため息を吐く。


「ハァ……こんな事を考えていたら、僕の行動は全て彼女に操作されているように思えて怖くなる」


 そう思っておいて間違いはないと思うぞ。

 それがそういう奴とつき会う時の心構えだ。

 うちにも一匹居るからな。怖いのが。誰とは言わない。


「それで、その大会に出たらどんな罰ゲームが待っているんだ?」

「別に罰ゲームなんてないよ! 上位入賞者には、名声が欲しいなら貴族位でも、お金が欲しいなら高額な賞金を、各地からそれ目当てで多くの人が集る」


 大会のルールは、スキルどころがどんな武器・防具・魔道具を持ち込もうと構わないとか。


「なんだよソレ? じゃんじゃん死人がでないか?」

「自分が今持てる全ての力を出しきって戦う舞台だからね。ただし、対人戦はほとんどないよ」


 基本は技術を見せて審査員が採点するとか。

 よく達人は寸止めも容易だろう勘違いされるが、斬る技術と止める技術はまったくの別物、真剣で切り合えばどちらかが死ぬ。

 死なれちゃ困るから、相手をモンスターに変えたり、大岩を割ったりして技を披露するとか。


 なんか大道芸みたいだな……参加するつもりはないが、ちょっと見てみたくはある。


「僕もね、手ぶらで来た訳じゃないんだよ」


 懐から、なにやら小さな子瓶を取りだす。

 その中には、小さな羽の生えた小人が入っていた。


「樹木の妖精ニンフだ。好きなんだろう、こういうのが」


 おまっ、また誤解されるような言い回しをしやがって。

 残念ながらつい昨日、カードは使いきってしまった。

 貰ってもどうしようもない。


「そうか、ならば仕方ないな、この子は処分するか」


 そう言うと、瓶の蓋に風を纏った手を近づける。

 オレは思わずソイツの手を掴む。


「ニンフと言うモンスターはね、危険害獣に指定されている。発見次第、殺さなくてはならない」


 なんでも、愛くるしい見た目に反して、非常に危険なモンスターなんだと。

 幻影を使って人を森に誘い出し、草木を操りそれらを捉え、食料とする。

 捕まった人間は数ヶ月に渡って生気を絞りつくされ、やがて死に至る。


 困った事に、ニンフは人の生気しか口に出来ない。

 即ち、ニンフと人は決して相容れない存在であり、発見次第、駆除する必要があるのだと。


「これも姫様の入れ知恵か?」

「いやこれは別の……まあ、大元がフロワースである可能性は否定出来ないがな」


 おめえ、そういうのは脅迫って言うんだぞ。


「餌と成る奴隷に付いては、こちらから提供してもいい」

「………………」

「おっと下手に自分の生気を与えるとか思わない方がいい。その昔、とある村でニンフを匿った事がある。数年後、その村の全ての住民が生きる気力のほとんどを失っていた。生気を吸い取られる、ということはそういう事だ」


 生気を吸い取られる、ね。

 ならばその生気をリセットされる存在ならどうだ?


「おいちょっとカシュア、コッチに来てくれ」

「えっ、またなんかの実験なの? もう勘弁してよ!」


 うう……なにやらごっそり減ったような気がする。と、ニンフに触ったカシュアが呟いている。

 そしてオレはカシュアを再召喚。


「どんな感じだ?」

「うん、さっき減った何かはもう感じないね!」


 とまあ生気の方は問題なくなったが……

 コイツに今後もこんな事されたら堪ったもんじゃないな。

 ぶん殴って追い出そうか?


「ま、待ちたまえ、今回だけ! このような事をするのは今回だけだよ!」


 なんて言っているがどうだラピス。


「信用なりませんね。ちょっと場所をお借りしますね」


 そ言うとラピスはそいつの正面に回る。


「ふむふむ、スキルは英雄の導き手以外に、嵐の呼び手、さらに広角認知ですか。ダブルどころかトリプルスキル。そりゃ強いわけですね」


 そいつの顔がサッと青くなる。

 さらにラピスは様々なパラメータを言葉に出していく。


「待て! 待ってくれ! 君は……鑑定・極でも持っているのか!?」

「さて、どうでしょうかね」

「おいお前、確か何を持ち込んでもオッケーって言ってたな。ならばオレは、このラピスを持ち込む!」


 というか、ラピスを選手にしたてればいいんじゃね?

 おっ、これ名案だな!

 オレは観客席で見物でもしておこう。


「なるほどコレが大会のチラシですか」


 あっ、これ凄い賞金が出ますよ。なんて勝手にソイツの鞄からチラシを取りだすラピス。

 ほうほう、うぉっ、億とか出るのか!

 もうかってんだな、お前の国!


「ま、待ってくれ、なぜここにチラシがあると分かったんだ!?」

「ラピス、やれるか?」

「任しといてください! ドラスレ持込オッケーなんでしょ? ちょっと負ける気がしません」


 ついでにパワードスーツも使うか?

 魔法無効にしたらさらに勝率アップだろ。


「さすがにそれはイージーモード過ぎますよぉ」


 これ毎年やってるんだよな?


 いい稼ぎ場所見つけたぜ!

 なんならラピス以外にカシュアとロゥリも付けるか?

 竜王とか出したら確実に勝てるよな!


 オレのスキルって事で、複数一気に出してカタをつけるのも有りだな!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る