第九章
レベル133
「……それはもう、とてもかっこ良かった」
アポロが上気した顔で、サヤラとティニーに熱く語っている。
普段あまり喋らないアポロが熱弁を振るうのを見て、私も見てみたかったなあと呟くサヤラ。
「クイーズさんが真面目に戦う事なんて滅多にないっすからね」
「なぜか何時も誰かに邪魔されているよね」
「クイーズさんの本気、見てみたかったッス」
「……また一つ、私は惚れなおした」
そう言って最後に握りこぶしを固める。
「ねえねえ、それでどうだったの旅の道中は? その……寝るときとか、二人っきりだったんでしょ?」
サヤラがニヤニヤとした顔でアポロを肘でつつく。
あそこまでお膳立てしたんだから、きっと何かあったよね! と興味津々である。
しかしアポロさん、先ほどまでの上気した顔はどこへやら、なにやら沈んだ雰囲気となり、
「……全部カシュアのおっぱいに奪われた」
と、ポツリと呟く。
そしてサヤラの胸をジッと見つめる。
サヤラさん、意外と巨乳でございます。
「……っく、同じモノを食べているはずなのに、どうしてこうまで違う!」
「いたっ、痛いよアポロ!」
サヤラの胸に掴みかかるアポロを、まあまあと宥めるティニー。
「しかしほんと不思議ッスよね。なんでサヤラだけがこんなにデカイのかと」
「べっ、別に大きさなんて、どうでもいいんじゃない?」
「……そんな事は無い、私にもっと胸があれば……今頃クイーズは私のもの」
その自信はどこからくるんすかねえ。と呟くティニー。
「まあ、そんだけ大きかったら、ちょっとは分けてもらえないかと思うッスけど」
「別にティニーは使う予定ないんだからいらないでしょ?」
「それどういう意味ッスか!」
などというやり取りがあったとは露知らず、オレはひたすら身を隠す。
「ふう、まともに寝れやしないな」
ロリドラゴンの奴、毎晩人の布団を鉄並に重くしていきやがる。
潰れるだろが!
えっ、寝てる間も体を鍛えられていいだろ。だって?
そんなわきゃねえ、寝れねえよ!
もう許してくれよぉ。
という事で、こっそりとエクサリーさんの部屋に逃げ込む事にした。
うん、下心はないのですよ?
「仕方ないわね。ロゥリちゃんには私から言っとく。今日は……もう遅いから、ここで寝る?」
そう言いながら、ちょっと恥ずかしそうな仕草をするエクサリーさん。
ズキューンってキタッす!
ルパンダイブしてもいいっすか!?
「あれ? エクサリー、ちょっと化粧している?」
「えっ、今はその……何もしてないけど、してた方がいい?」
そう言って恥ずかしそうに布団で顔を隠そうとするエクサリー。
それにしては、ちょっと見ないうちに、なんていうか、美人度が上がっているような気がする。
「もう、そんなお世辞なんていいから」
いや、お世辞じゃないって。
そういえば聞いた事が有る。
お化粧をする事により心理的影響を与え、顔つきを優しいものにするとか。
「そうですね、お化粧をする事により、脳の刺激、身体の運動、老化予防等の効果が得られます。また、鏡を見て理想の形にしようとする働きで、筋肉も自然とそれに近づくそうですよ」
「ほうほう、なるほどな。ってことは、この先エクサリーはどんどん綺麗になっていくという事か」
「そうですね、うかうかしていると横から攫われちゃいますよ」
あの、化粧後の顔が地顔になる可能性もあるのか……まずいな、レベル上げとかしてる場合じゃないぞ。
って、なんで居るラピス!?
えっ、当作品は全年齢向けなので、お坊ちゃまが期待しているような展開にはならない?
なんだよ当作品って? 単に邪魔しに来ただけだろ!?
「そうとも言う」
「そうとしか言わねえよ!」
「フフッ、じゃあ三人で寝ましょ」
ええ~い、ラピスの奴などカードに戻してくれる。
あれ? 何で戻らないの?
えっ、カード統率のスキル忘れたのですか。だって?
ええっ、オレの意思より優先なのソレ?
「もうお前が居たらオレ要らないジャン!」
「何言ってるんですか、お坊ちゃまが居てこそ、このラピスが居るんですよ」
さあ寝ましょって、オレをエクサリーの布団に押し込んでくる。
ちょっと待て、なんでお前がエクサリーとオレの間に入るんだよ?
違うだろ? 両手に花はオレの立場だろ?
「やだ~、なんだかんだ言って、すっかりノリ気じゃないですか~」
「ハッ、しまった、ついホンネが!」
いや違うんすよ! 自分エクサリーさんが居ればそれでいいんですから! うぉっ、や~らけ。
止めろっ、オレを誘惑するんじゃない!
だからエクサリーさん、そんな軽蔑するような目で見ないでください。
「別に軽蔑なんてしていない」
「ホントニ?」
「本当」
じゃあ両手に花でもいいですか? えっ、ダメ? ですよね~。
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