レベル130 英雄の導き手

「まあこのスキルは隠している訳じゃないからバラすとね、僕には人が輝いて見えるのだよ。その名も英雄の導き手という。このスキルは、才能有る人物を光り輝かせて見せてくれる」


 なので、森から来ようが空から来ようがバレバレなんだと。


「特にその二人の輝きは別格だしね」

「キミ、すごい兵士の数だよ! どうしよう?」

「…………問題ない、全部吹き飛ばせばすむ」


 うん、ちょっと落ち着こうか。

 こちらは唯、呼ばれたから来ただけですよ?


「君は呼んでいないのだがね」

「それは違うね。カシュアとアクア、この二人を呼ぶという事は、オレを呼ぶと同じ事」


『戻れ! プリンセスナイト! ウィンディーネ!』


 二人をカードに戻す。そしてそのカードを見せ付ける。


「二人とも、オレの所有物だからな! オレが召喚して異界より呼び出しているのだ!」

「フフッ、とんだ寸劇だ。僕のスキルはね、その人物のスキルも込みで判別するのだよ。君の輝きは、お世辞にも強くは無い。そんな君の所有物では有るわけが無い」


 なるほど、なるほど。


 あくまで個、個人の能力を判別する訳か。

 しかしてオレのモンスターカード、カシュアが別個の存在と認識されているという事は、カードを出すとこまではオレの才能で、カードから呼び出した存在は別個とカウントされる。

 うん、欠陥品だね。そのスキル。


「その昔、才能だけ見れば、人という種は全ての動物において劣っていた」


 なのに今はどうだ?

 道具を使い、知恵を絞り、持って生まれた性能の差を覆す。


「才能がないからこそ努力をする、そしてその努力は、いずれ才能が有る奴を抜く事になる」

「天才は努力をしないとでも思っているのか? 確かに努力する人間は優れた性能を発揮する。しかし、努力する天才には到底敵わない」


 努力ねえ……最初から強い奴が、さらに強くなろうと努力をするかね? 必要で無いのに? 目標もないのに?


「ならば試して見るかい。才能の無いオレに、その努力した天才が勝てるかどうか? 居るんだろ? そんな天才、かかって来いよ」


 オレはカシュアとアクアを再度召喚しアポロを守らせる。

 そして一歩前に出る。


「いいだろう。どうあがいても、天才には敵わぬことを知るがいい」


 そいつがそう叫んだ瞬間、そいつを中心とした嵐のような風が巻き起こる。


「ダブルスキルか?」

「そうだ、僕は2つのスキルを持って居てね、唯導くだけじゃない、障害は排除する」


 さらに勢いが強くなって竜巻が巻き起こる。

 後ろにいる兵士達まで吹き飛ばされている。

 おいおい、味方まで巻き込んでるぞ。


 その勢いはオレの体を包みこむ。だが!


「涼しい風だな」


 そうビクともしない。

 背中にしょったドラスレの重量軽減を解除し、鉱石Mで体を固定する。

 どんな強風だろうとへっちゃらさ!


「フンッ、何時まで強がって居られるかな」


 そいつが腰の剣を抜く。

 それを掲げた瞬間、剣に雷のような稲妻が巻き突く。

 まるでリアルストームブリンガーだな。


 そいつが剣を素振りした瞬間、剣に纏わり付いた雷がオレに向かって迸る。

 だが、背中から伸びた鉱石Mが避雷針の形となり地面に雷を逃がしていく。


「なに!?」

「どうした、大道芸はもう終わりか?」

「ぬかせ! その魔道具のおかげだろう! それはおまえ自身の力ではない」


 確かに鉱石Mのおかげだ。

 だが、その鉱石Mを作り出しているのはオレだ。


「ならば聞こう! 国を滅ぼすほどの力を持った天才が居たとする。それに対抗する為に、その力を反射する魔道具を作った凡人が居たとする。さて、どちらが必要な人材かな?」


 道具を作り出すのは、いつだって力ない人達だ。

 力がないからこそ、道具に頼る。

 その道具を作り出すのにも才能はいるだろうが、あんたにゃ、その才能を見抜けない訳だ。


 孤独な天才は、いずれ対策をとられて滅ぶ事になる。

 戦いに勝つには、唯、強い奴だけを集めればいいってもんじゃない。


「あんたは上っ面しか見てないんだよ! 人の才能が見抜けても、人の性質は見抜けない。そんなやつがスカウトなんて鼻で笑うぜ!」

「黙れッ!」


 全身を嵐で纏い、雷の剣を持ってオレに襲いかかってくる。

 だがしかし、その勢いはオレの数メーター先で止まってしまう。

 嵐も消え、雷も消滅する。


 どうやら、パワードスーツの魔法無効能力で掻き消された模様。

 ふむ。スキル、自体は消せなくとも、スキルによって起こされた物が魔法であれば無効化出来るようだ。

 コイツのスキルは断続して風と雷を起こし続ける。しかし、魔法無効エリアではそれが止まるというからくりだな。

 オレは驚いた顔のソイツの腹を蹴り飛ばす。


 おうおう、どうしたよう。努力してんだろ?

 魔法が切れたぐらいでボロボロじゃねえか?

 あんたの剣技、カユサルと比べたら赤子同然だぜ!


 あんたがどれだけ努力したか知らないが、10歳の頃から実力以上の敵と戦ってきたオレより努力しているとは思えないな!


 スキルが無ければ凡人以下もいいところじゃねえか。

 ドラスレを抜くまでも無く素手でぶん殴る。

 奴の剣は全て空振りだ。


「クッ、何故だ! どう見てもそんなに強そうに見えないのに!」


 悪かったな! 強そうに見えなくて!


 こちとら毎日、元ドラゴンのドラゴンナイトと追いかけっこしていんるんだ、あんたの動きなんてミエミエだぜ?

 いい様にあしらわれて憤慨している。

 ちょっと離れればまた魔法使えるのにな。バカな奴だ。


「しょせんはあんたも三流だってことだ!」


 オレは鞘からドラスレを抜き、そいつの剣を真っ二つに叩き折るのであった。

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