レベル124

 えっ、何コレ? 桁がちょっとおかしくね? えっ、あの魔道具、一個兆単位? うそだろおい……

 聖皇国の宝物庫の被害額、とんでもない桁の数字であった。


「こんなもの請求されてみなさいよ。ほんと私が間に合ってよかったわ」


 オネエ言葉になっているぞ骸骨。


「コホン。とにかく主も、多少は周りに気をつけてもらいたいものである」

「そうは言われてもなあ……」


 やらなきゃ、やられてたぞ?


「お坊ちゃま、私、何度も言いましたよね? 必ず護衛を付けろと」


 ああ、うん。聞いた気がする。


「気がする。じゃないでしょ!」

「はひっ!」


 カシュアはどうしたんですか。と言う

 いやアイツ、森ぐらいならボクは必要ないよね! なんて言いながらゴロゴロしてポテチ食ってた。

 あとで泣かす。って呟いている。合掌。


「ところであの子達三人はどうしました? 怪我でもしたのですか?」


 いや、説教聞かすのも悪いかなと思ってカードに戻した。

 オレは三人を召喚しなおす。


「ふむふむ、獣化に幻影ですか」


 ラピスがハーモアの奴に、獣化してみるように言っている。

 ちょっと待て、服脱いでからにしろよ。破れるだろ?

 えっ、召喚し直せばいいじゃないって? そりゃそのとおりですね。


「随分大きいですね。もっと小さくなれないのですか?」


 シュルシュルっと小さくなっていく獣人化娘。

 なにやらラピスが、ポンポンと体を叩いて調べ事をしている。


「お坊ちゃま、カードを見せてください」

「ふむ?」


 獣人化しているときのハーモアのカードの裏面。なにやらパラメーターゲージにプラスで赤いゲージが付け足されている。

 獣人化によるパラメーター増量が分かるのか?

 大きくなったらちょっと短くなった。


「体を大きくすればするほど威力が落ちる。小さければ各能力が上がりますが……スピードは歩幅も影響しますしね」


 体の大きさによって能力値が微妙に変化する訳か。


「元に戻っていいですよ」

「どうだったハーの獣人化!」

「ああ、なんか凛々しくてかっこよかったぞ」

「ほんとに!?」


 嬉しそうにしてオレの腕にしがみついて来る。

 うん、とりあえず召喚しなおそうか。大事なとこが丸見えだぞ。

 ラピスは次にサウの幻影について検証している。


 こちらはまんま立体映像だな。


「人間サイズが限界ですか」


 アリバイ作りにはよさそうだな!

 なんだかレリンが、そんな二人を羨ましそうに見ている。

 大丈夫さ、お前にもすぐスキルが生えてくる。


「でももうレリンは強くならないんでしょ?」

「なんでだよ?」

「だってあの透明なカード使っちゃったから」


 別にそのままでも十分強くなれるさ。ロリドラゴンを見てみろ、あんな成りでも十分強いだろ?


「お坊ちゃま、先ほどちょっと聞き捨てられない台詞があったのですが?」

「だから、小さいままでもレベルを上げれば強くなると」

「その前ですよ」


 ふむ。ああ、


「クリスタルカード使った事か? ゲッフゥウ!」


 おっ、おまっ、主人にボディーブローはないだろう?


「何使っているんですかお坊ちゃま!」


 いやだってピンチだったし?

 またこんなネタカード作って。って、いや意外と使えるかもしれないぞ?

 ちょっと備考欄が邪魔かもしれないが。


「仕方ありません、とりあえずカシュアで試してみますか」


 カシュアで試すのね。あいつも災難だなあ……

 そして呼び出したカシュアに鎧を着せたところ、鎧から黒い霧が現れ、それが全身を包み込み刺青のような紋様に変わる。

 なるほど、鎧部分は普通に防御役で、パワードスーツの本体は黒い刺青か。


 随分見た目が禍々しく成ったな。ブラックプリンセスナイトって感じか?

 おっ、これなんだが、オレの思う通りに動くな。

 なぜだかそのカシュア、オレが思い描いた通りに体を動かす。


 どうやら他人に着せれば遠隔操作が出来る模様。


「私の命令も聞くようですね」

「ちょっとやめてよ! ボクの体で遊ばないでよ! ハッ、さてはキミィ! それを使ってこのナイスバディな体を弄ぶつもりだね!」


 ウザッ。

 お前なんてこうしてくれる。

 ちょっ、ちょっと、ヒギィイイ! そっちには曲がらない、曲がらないからぁああ! と目に涙を溜めている。


「我輩も! 我輩にもやらしてくれたまえ!」

「いやっ! 骸骨はやめてぇええ!」


 骸骨には無理でした。

 どうやら、オレとカード統率を持っているラピスだけのようだ。


「使えそうで使えなさそうですね」

「そう言うなよ、ほらカードの裏面のゲージも伸びてるぞ」


 微増ではあるが。

 ハーモアの時と同じように、ゲージの先に赤い色で長さが増えている。


「微増ですねえ」

「レベルを上げれば増えていくんじゃね」

「ちょっとカシュア、モンスター倒して来なさい」

「ええっ!?」


 心は嫌がっているが体は正直だ。なんて、ラピスに操れているだけだけどね。

 ほら、お坊ちゃまを放置した罰ですよ。なんて蹴られて行ってる。頑張ってくれ。


「どうした骸骨」


 骸骨がジッとパワードスーツのカードを見つめている。


「主の世界には、魔法という物は存在しなかったのであるな」

「空想の産物だとされていたのは確かだな」


 なるほど、なるほど。と頷く。


「ならばあのダンジョンコアの魔封の能力、このパワードスーツの魔法無効、これらは主の影響で有る。と言えない事も無い訳か……」


 そしてさらに、今後、魔法を封じるスキルが多々現れる可能性も有るかもしれぬな。と呟くのであった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る