レベル121
少々まずい事になった。
数日間草原でレベル上げをして、いよいよ森デビューとなったのだが、レリンの奴がなにやら変な彫像物を見つけて来た。
木に埋もれるように地面から突き出している。明らかに人工物に思えるその存在。
そのてっぺんにサウが腰掛けた瞬間であった。
突如地面に魔法陣が描かれる。
そして気が付けば、薄暗い地面に囲まれた場所。
どうやらどこかへ飛ばされた模様。
それだけならまだ良かったのだが……どうやらこの場所、魔法が使えない。スキルも使えないっぽい。
カードを呼び出そうとしてみたが、まったく反応がなかったのだ。
「サウ、悪くないモン!」
ハーモアとレリンに責められてサウの奴はそっぽを向いている。
ちょっと覗くだけだから脅威はないだろうと、ロゥリもボウリックさんも付いて来ていない。
オレとこの三人のみである。
ピクニックがてら、様子を見に行くだけのつもりだったんだがなあ。
「何か向こうからやってきます!」
ねずみ型のモンスターが現れる。
ハーモアが任しとけって飛び掛っていくのだが……
「なんだこいつら! 強いぞ!」
あまりダメージが出ていない上に押されている。
おかしいな……ここいらじゃそんなに強くないはずなのに、このレベル、ピクサスレーン並みだぞ?
「ヒッ!」
オレはハーモアに飛び掛ってきたモンスターを切り伏せる。
「大丈夫か?」
「うっ、あ、ああ! 大丈夫!」
怖かったのかちょっと顔が上気している。
しかし、ロゥリにドラスレを借りていて良かったな。
なお、あいつは久しぶりに羽が伸ばせられるってどっかへ飛んで行った。
なんだかんだで、いいお姉さん役をしていた模様。
「オレが前衛をやる! レリンとサウは援護、ハーモアは二人を守ってくれ」
「分かった!」
「うん!」
魔法が使えないのでレリンは弓を構える。
サウの奴も責任を感じてか石を一杯抱えている。頼むからオレには投げないでくれよ。
ちょっと歩くたんびに次々とモンスターが現れる。
エンカウント率が某クソゲー並みに高い。
「くっ、多過ぎるぞココ……」
天敵で有る冒険者が居ない所為か、わんさか出てきやがる。
唯一の救いは、こっちの魔法が使えない分、向こうも魔法を使えないって事だ。
ダンジョンは縦長い作りをしているようで、まるで通路の様だ。
「あそこで真下に移動したとなると……街に向かっているのか?」
だんだん嫌な予感がして来た。
このダンジョン、街に向かって伸びているのか……はたまた、街から伸びて来ているのか……
状況によっては凄くまずい気がするぞ。
「魔法が使えないって事は、魔法的探知も利かないって事だろう。だからニースの結界も役に立っていない可能性がある」
「キャッ!」
おっと! 考え事をしていたらレリンの方へモンスターが回り込んで居た。
かじろうて迎撃をするオレ。
「すまない、考え事をしていた」
「えっ、いえ! 大丈夫です!」
レリンの奴もなんだか顔が赤いな?
(今日のお兄ちゃん、なんだかカッコいい気がする)
(あいつ……本当は強かったんだな)
(サウは知ってタ、ウッシッシ)
三人がなにやら後ろでコソコソと内緒話をしている。
(良し! ハーだっていいとこ見せてやる!)
(私も! ……でももう矢が無い)
(ウッシッシ、皆働ケ)
だいぶ進んだな……この距離だと、もう街の下に来ているか?
ん、お前マッピングなんてやってたのか、えらいそサウ!
「あっコイツ、やる気の無い振りして、こっそり点数稼ぎしてやがった!」
「プウゥ」
「ウッシッシ、騙されるホウガ、悪イ」
サウに貰ったマップを見てみると、まさしく一本道。
多少入り組んではいるが、向かう方角は同じ。
「よし、このまま先に進むぞ」
「はいっ!」
嫌な予感は当たった様で、突き当たりには一つの巨大な魔法石。
「どっかで見たような気がするなあ……あのダンジョンコア」
そしてコアの前には王座の様な物があり、そこには、黒い霧の様な物が鎧を纏って鎮座していた。
さらには、部屋の中には無数に犇く、顔の無い鎧達。
「どっかで見たようなシチュエーション。そういやあのダンジョンコア、宝物庫に厳重に保管するって言ってたな」
部屋の隅には金銀財宝ざっくざく。と言わないまでも貴重そうな品々が並べられている。
ここで暴れても怒られないかなあ……
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