レベル107 『モンスターカード!』で、ゲットしてみたら森の妖精さんになりました。

「ギャッ! ギャッギャッ!」


 次々と、ティニーのゴム弾の餌食になっていくダークエルフ達。

 反撃にと弓矢を放ってくるが、その全てはアポロの魔法と、ラピスのドラスレによって受け止められていく。


「あ、あんたら確かBランクのパーティだと言ってなかったべか!? 嘘だったんべ!」

「いいえ、嘘じゃないですよ」

「Bランクのパーティが、こんなに大量のダークエルフに勝てる訳ねえべ!」


 そうか? ピクサスレーンじゃこれぐらい普通だよな?

 ちょっとキツイダンジョンだと、次から次へと無限沸きぐらい沸く。

 あと、ロゥリ連れて行くと毎回トレインして大量にモンスター連れてくるし。


 まあ、ピクサスレーンのモンスターは他所の国とは比べにものにならないほどレベルが高いのは確かだが。


 そんな中、ラピスが一匹のダークエルフを捉えて尋問している。

 何やってんのお前?


「当初の目的をお忘れですか? 現在のモンスターの勢力図を聞いているのですよ」


 とはいえ、何も知らないようですが。と続ける。

 確か当初は、友好的になって情報を聞きだすんじゃなかったのか。

 それで態々エルフを選んだんだろ?


 尋問するんならエルフじゃなくてもいいだろ。

 こないだ温泉に浮かんでいた奴とか。


「ああ、その点はぬかりはありません。下っ端でしたから何も知らなかったんですけど」


 怖いよ、ボクは君が怖くて仕方ないよ!

 そんなに酷い事はしてませんよ? と答えるラピス。

 ホントかよ?


「それじゃとりあえずこのまま、ダークエルフの拠点を落としてしまいましょう」

「とりあえずでやる仕事じゃないな、それは」


◇◆◇◆◇◆◇◆


「ギャッギャッギャ!」(人間達が攻めて来たぞ!)

「ギャギャッギャ!」(たった数人だと聞いているぞ、先遣隊はどうした!)

「ギャッ!」(全て行動不能となっております!)


「ギャギャ……」(バカナ……)

「ギャギャギャギャ」(きっと人間達のいうSランクと言うやからかも知れませぬ)

「ギャギャギャ」(このままでは、この里は全滅してしまう)


「ギャギャー、ギャギャギャギャー!」(イケニエじゃあ、イケニエを捧げるのじゃぁああ!)


◇◆◇◆◇◆◇◆


 と、なんか突然ラピスが小芝居を始めた。

 えっ、ダークエルフの里でそのような状況になっている?

 いや、ギャッギャじゃ何言ってるか分からんのだが。というか翻訳してくれよ。


「どうやら来たようですよ」

「だから何が?」


 森の奥からドンドコという音と共に何かがやってくる。

 複数のダークエルフに担がれた御輿のような物の上に、大量の果物と、一匹のダークエルフが乗っている。

 それを担いで来たダークエルフ達は、オレ達の目の前に御輿を置くと、平伏して地面に頭を垂れる。


「ギャッ、ギャギャ」

「貢物、森の希少な果物と里一番の美少女、と言っていますよ」


 どうやらこれで許して欲しいって事らしい。

 ラピスがなにやらダークエルフと話をしている。

 えっ、配下にする? いや、やめてください。要らないッス。


 あと、その里一番の美少女さん、森の希少な果物をガツガツ食ってんですが。

 それくれるんじゃなかったの?

 ラピスがこっそりと耳打ちしてくる情報によると、里一番の美少女とは真っ赤な嘘で、身寄りのない子で、毎日、悪戯ばかりして手の付けられない悪ガキだとのこと。


 里の方で、こういう時にしか役に立たないんだから仕方ないとか、厄介払いが出来てちょうどいいとか言われているらしい。

 ひどい話だ。


「どうせ我等の美しさは人間には理解できないだろうとか、酷い言われようですよ」

「ちなみに奴等の美しいは、オレ達にとって逆のパターンか?」

「さてどうでしょうかね。とりあえずゲットしてみたら分かるんじゃないですか」


 オレは御輿の上のダークエルフの少女に近づく。

 ソレ全部食っていいから、オレと共に来る気があるかラピス伝えに聞いてみる。

 そしたら笑顔で、ギャギャッと言いながら頷くダークエルフ。


 エルフがダークエルフになった訳だが、ダークエルフと言えば、普通のエルフよりエロい場合が多い。

 これはこれで良かったのかもしれない。

 などという下心は決してありませんよ? と、誰に言い訳する理由でもなくモンスターカードを取り出す。


『モンスターカード!』


 オレのモンスターカードから照らされる強い光を浴びて、徐々に光のシルエットに変わるダークエルフの少女。

 その光のシルエットは、目を見張るほどのグラマラスなボディを形取る。

 おおっ、これは期待出来るのじゃ! って思って居たところ、なにやらどんどん小さくなっていくシルエット。


 えっ、もしかしてグラマラスはグラマラスでも、またロリキャラになるんじゃ……


 そのシルエットは、最後にはサッカーボールほどの丸い球体になって空気に溶け込むように消えていく。

 その途端、モンスターカードに光の奔流が集ってくる。

 そして光の奔流が収まった後、真っ黒になったカードに記載されていたものは……


『ダークエルフ・サウ』

 ☆2・レベル1


 レアリティ低っ! エルフの癖に☆2とか。そして、スキルも何もついていない。

 所詮はゴブリンの亜種ってところか。

 あと名前はサウって言うんだね。


 まあそれはいい、それはいいんだ……問題は、――――なんなんだこの見た目!?


 前世の世界のダークエルフどころか、こっちの世界のダークエルフでもない。

 美少女? グラマラス? さっきまでのシルエットはいったいどこいった!?

 そこに描かれていたものは……


「森の妖精は妖精でも、いたずらな妖精って感じですね」


 全体的にこげ茶色で、体長は数十センチ。

 小熊をちょっとデフォルメしたぬいぐるみのような姿。

 パタパタと蝙蝠のような羽に熊の耳、ギザギザの歯、先のとがった尻尾。


 そう、小悪魔って見た目がピッタリの妖精さんでござった。


 カードから呼び出したダークエルフさん、一心不乱に御輿の上の果物を食べている。

 あの小さな体のどこに入っているのだろう?

 そのうち、ゲフゥって息を吐くと、ゴロンと横になって寝始めた。


 これまた自由な奴が現れたな。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る