レベル99 第六章完結

「輪廻……転生……?」

「そうだ、記憶と魂を持ったまま、別の存在として生まれ変わる」

「そうすれば……もう一度我が子をこの手に抱けますか?」


 そう聞いてきた奥さんに、可能であろう。と優しげな表情で呟く竜王。


「ほんとうに……もう一度……」

「ふむ、この付近で一番近い転生先は……」


 竜王が何かを考え込む。

 暫くした後、口を開く。


「白銀の王よ、輪廻転生を行うに当たり、一つだけ約束をしてもらえるか」

「なんでもしよう」

「人を傷つけないでくれないか? 確かに救いようの無い者はたくさん居る。だが、それだけではない」


 竜王がオレの方をチラリと見る。


「かつて居た、お前の英雄もまた、人であっただろう」

「……そうだったな。人もまた、変わらぬ者も存在するという事か」


 そう言ってオレの方へ顔を向けてくる白銀の獅子王。


「生まれ変わったなら、やりたい事が在る!」

「子を抱くこと以外にか?」

「誇り高きライオンは義理堅いのだよ」


 そう言ってニヤリと笑う。


「ならば、最適な転生先を与えよう。お前達が転生する先、それは――――人の子だ」


 竜王がそう言った瞬間、辺りが真っ白に染まる。

 二つの大きな輝く塊がゆっくりと空を登っていく。


(待っておれ、すぐに成長し、ヌシの下へ我等は駆けつける)


 そんな台詞が聞こえた気がした。

 そんな光の中、頭の中にとあるビジョンが浮かんでくる。

 二人の騎士に守られた、少し歳をとったオレの姿が……


◇◆◇◆◇◆◇◆


「人間は敵だ、ブチコロスベシ!」

「イダダダ! 引っ掻くんじゃねえ!」


 このクソ猫、懐かねーのなんのって。

 借りてきた猫って言葉どこいった?

 家に連れ帰って暫くしたあと目が覚めたのだが、そりゃもう暴れるのなんのって。

 服を着せても片っ端から脱いでいく。こりゃ躾が大変そうだ。


「ニンゲンハトモダチ、オマエバカ」

「なんだとこの爬虫類が!」


 ガウガウッ、ファーッと共に威嚇する二人。

 随分相性が悪そうではある。

 オレは魔道電話でとある人物と連絡をとる。


「ちょっと骸骨、手のかかる悪ガキがもう一匹増えたんで躾をお願いしたいのだが」

「…………我輩、非常に忙しい身の上……もう飼育係はコリゴリでござる!」ガチャン!


 やはり駄目か……骸骨に調教を断られる始末。

 それにしても、父親から随分人間の悪口を聞いていた模様。

 レベル1と攻撃力が無いのが幸いだが、誰彼構わず突っ込んで行く。

 頼むから、怖いお兄さんに噛み付こうとするのはやめてくれ。


 ふう、仕方ない。

 懐かない猫にはコレだ!

 必殺、ねこじゃらしー! ペッケペー!


 フリフリ、どうだ、ほうらこっち来い~。

 ハーモアがピッと手を上げた瞬間サッと引き上げる。


「フー、ファーッ!」


 サカサカサ、ふはは、どうだ、取れるものなら取ってみろ!


 ――ガブリ


「イダダダ! なんでお前が噛み付くの!」

「ロゥリヨリ、ソイツガイイノカ!」


 どうやらロリドラゴンが嫉妬した模様。

 イデデデ、その隙に手に食いつくハーモア。

 カシュア、カシュアさん、ちょっと回復魔法を!


「ハナレロ、コノネコモドキ!」

「ニャッ! ハーは猫じゃねえ! ライオンだ!」


 いたい、いたい、いたい。君達、互いに喧嘩するのはいい。だが、なぜオレに噛み付く。

 オレはおまえ達の歯磨き役ではない!

 ちょっとラピえもん、なんとかしてよ。


「誰がラピえもんですか。お坊ちゃまが拾ってきたんだから、ちゃんと世話はみましょうね」


 いや、あの流れで拾わない選択肢はないだろ?

 ちょっとは協力してくれよぉ。

 仕方ありませんねぇ。と言って部屋を出て行くラピス。

 暫くしてエクサリーを連れてくる。


「私に用時って何?」


 ラピスがエクサリーの耳元でなにやら囁いている。

 そしたらビクッとして後ずさる、ロリドラゴンとロリネコ。

 えっ、何? なんでそんなに般若なの?


 そのままロリネコの前に来て頭に手を当ててニッコリと笑う。

 ロリネコちょっと白目向いて気絶しそうだ。


「ねえクイーズ、」


 振り返ろうともせずオレの名を呼ぶエクサリー。

 表情が見えない事がこれほど怖い事だとは思わなかった。

 ロリネコがなにやら痙攣している。

 

「はっ、ハイ!」


 思わず声が裏返ってしまう。


「隠し子って何の事」


 バッとラピスの方を見やる。既に居ない。あのクソラビット……


 だがそれが功を奏したのか、それ以来、人間をやたらと襲う事は無くなった。

 むしろちょっと人間コワイ、みたいな感じになったかもしれない。

 知らない人が来るとすぐ奧に引っ込んでしまう。


 しかし逆に、オレに対しては超攻撃的である。

 今日も人の朝飯を持って外に駆けていく。

 オノレッ、オレのエクサリー弁返しやがれ!


 ――ガブリ


「イダダダ! なんなんだよお前は!」

「モットロゥリヲカマエ!」


 それどころじゃないんだよ! オレの朝飯が消滅の危機なんだよ!

 アダダダ! 戻って来たハーモアがオレの手に噛み付く。


「楽しそうですね、じゃあ私も」


 そう言ってカプリ、ペロペロとするヒメリアさん。

 その瞬間、それまで微笑ましい目つきだったエクサリーの目の色が変わった。

 あっ、やべっ、ヒメリアさんはこう見えて結構なお歳の淑女。

 その他二人の様な本物のロリではない。


「ちょっとクイーズ、後でお話しましょうか」


 その日の朝食はガクブルで味がしませんでした。

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