レベル80 堕ちたグリフォン
「さて、今後の予定でありますが」
そう言いながら骸骨が3本の指を立てる。
「ひとつ、貴族共が逃げ込んだ国を完膚無きまでに叩き潰す」
そうする事により他の同盟国への牽制となり、次に同じ事をすればこうなるぞ、っていう見せしめにもなる。
これが一番手っ取り早くて、後腐れがないんだと。
これで後腐れがないとか他は一体どうなんだよ?
「ふたつ、全方位に向けて一斉侵攻を開始する」
主に今回ヘルクヘンセンを打ち倒した方法を用いる。
行き着く先は大陸の覇者しかありえない。なんて恐ろしい事を言う。
随分自信があるようだが、現実的に可能なのか? えっ、容易い? だったらおめえ、なんで骸骨になる前にそれをしなかったんだよ。
「我輩の目的は人類の領地拡大でありましたからな。それに、理想とする技術も随分と足りなかった。しかし我輩とラピス殿の力を合わせれば、今なら容易な事かと思われる」
しかも今の我輩は不老不死であると言える。
どんなスキルを持って我輩を屠ろうとも、何度でも蘇り、障害はいずれ全て取り除かれるであろう。
と言いながら、酒杯を高々と持ち上げる。まるで魔王のセリフだな。
「もっと穏便な方法はないのか?」
「ふうむ、みっつめでありますが、長い目で見れば一番犠牲が多くなりますぞ」
その方法は、専守防衛。
戦わずして守りに徹する。
侵攻する技術が有るのだから、当然守る技術だって有る。
しかしながらそれは、この先ずっと戦時状態が持続されるという意味でも有る。
「小さな小競り合いでも、数が増えれば大戦並みの犠牲となる」
憎しみもまた、積み重なるがごとし。
「さっさと勝負を付けたほうが、翻って犠牲は少なくなると言う訳か……」
と、突然ラピスが机の上にバサァっと地図を広げる。
「ならば、このラピスが4つ目の提案を差し上げます」
そうして地図の一点を指差す。それは、この大陸でも一番広大な土地を持つ、聖皇国と呼ばれる場所。
「どうせ裏で手を引いているのはこの国でしょう。そうであるのならば、この国を先に落としましょう」
その国は、今回同盟を組んで攻め込んできた国々の宗主的立場にあるらしい。
ここを先に抑えてしまえば、小さな国々は言う事を聞かざるは負えない。
自分だけ手を汚さずに漁夫の利を得ようなど、このラピスが許しません。なんて言っている。
「出来るかダンディ」
「さすがにそんな離れた所を急には……ラピス殿、何か考えがありもうすか?」
今度は一冊の本を棚から取りだしパラパラとめくるラピス。
そして、とあるページを開き机の上にバンと置く。
「この国では、神獣と言われる存在がおります。尊き獣として崇められて居るそうですよ」
それをどうしようと? あっ、なんか嫌な予感がしてきた。
「もらっちゃいましょうよ、その神獣。お坊ちゃまのモンスターカードで」
ソレを聞いて骸骨がニヤリと笑う。
「なるほど、なるほど。その神獣を我らのモノとすれば、その国は我らの言いなりになる」
「いい案でしょう」
「神獣は不老不死となる代わりに、主が死ねば喪失してしまう」
骸骨の笑顔がどんどん邪悪になって行く。
コイツがこんな顔をしだした時は禄でもない事になる気がする。
いやしかし、その神獣を捕らえるとかどうやって……?
「実はこの神獣、随分年をとっているのですよね。今じゃ寝たきりでまともに起きられない状態」
最初からヒットポイントは減っていると?
「数千年の時を生きた伝説のエンシェントドラゴン。全盛期は、人々を支配下に置き、巨大な帝国を作り上げたという」
「そんな奴ゲットして大丈夫なのか? 骸骨より手に負えないんじゃないか」
「我輩は会った事があるぞ。人間を支配どころか、すっかり利用されるだけの愛玩動物に成り下がっておったわ」
どうやったら会えるんだその神獣。えっ、任しておけって? 任して大丈夫なのだろうか……
「クイーズ! 待たせたな、ヘルクヘンセンのダンディからお前を連れて来いとの伝言だ!」
それから暫くしたある日の事、店の前に巨大なグリフォンが舞い降りる。
ああ姫様、乗れるようになったんですね。
しかしそのグリフォン、なにやら、やつれているような気がする。
どうしたグリフォン! お前の力はその程度じゃないだろ! もっと頑張れよ!
えっ、次はお前の番だ。だって? いやいや……マジで!?
おい、まだまだやれるだろ! えっ、ムリ? そんな事言わずに! ねえ!
グリフォンが首を左右にブルブルと振る。
「さあクイーズ、後ろに乗ると良い!」
「えっ!?」
姫様の影がオレを捕らえる。
グリフォンの奴がなんか哀れみの瞳で見てきている。
おい! 二人乗りなんてムリだろ!? ちゃんと拒否しろよ!
えっ、何言っても無駄だからあきらめろ? って。マジですか……
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