レベル77
「なんだか外が騒がしいな、ちょっと見て来てくれね~か?」
「うい~す」
有る晴れた昼下がり店の前が大層騒がしい。
「やっと来たか! よし、裏庭に回せ!」
なにやら、エルメラダス姫様宛ての荷物が届いたようで裏庭に回している。
ということでオレも裏庭に回る事にした。
そしたらびっくり、
「空の暴君、天空の皇帝と呼ばれる……グリフォンですか」
ラピスがソレを見て呟く。
そう、そこには、なんと! 巨大な鉄格子に入った一匹のグリフォンが居るじゃ有りませんか。
しかも! その毛皮は様々な色合いをしている、所謂、アイリスブラッドと言われるレア種のグリフォンであった!
「良く来たなクイーズ! ちょうど今から呼びに行こうかと思っていた所だ!」
姫様がオレを見かけてそう言って来た。
「欲しいと言っていただろう、さあ受け取れ!」
「ええっ!?」
いや、いくらなんでもこんなの貰えないッスよ!
一体いくらしたの? えっ、50億!? 戦闘機買えるじゃないッスか!
ああ、そういえばこっちの世界じゃ、飛竜やグリフォンは戦闘機扱いだったっけ。
というか、いくら好きな相手でも戦闘機送るのはないんじゃない! アラーな王子でもそんな事はしないよ!
いいじゃないですか! 貰っちゃいましょうよ! って目を輝かせてせっついて来るラピス。
幾らなんでも重過ぎるだろ?
というか貰ったらお婿さん一直線じゃね?
「…………物で釣るのはよくない」
「フッ、良くないと決め付けてやらない事よりも、やってみて良くないと言われる方が好印象になる場合が多いのだ!」
「……っ!」
行動力がとんでもないなこの姫様。
そういや、うちのプリンセス(笑)も突然オレの子供が欲しいとか迫って来たな。
王族はみなせっかちなのだろうか?
しかしコレは受け取れない、どうやって断ったらいいものだろうか……
「グリフォンは飛竜とは違い非常に機動力が高い。竜はスピードは速いが旋回性能が良くない、その点、グリフォンは自由自在に空を駆け巡る。騎獣としてこれほど優秀な存在はないぞ!」
「姫様は乗られないので?」
「ん、私か? 空は苦手でな。空には影が出来ん、態々苦手な戦場で戦う気は起きん」
「この機会に乗って見るというのはどうでしょうか?」
空に影が出来ないというのなら、作り出せばいい。
木の板でもなんでも吊らしゃあ、光の当て方次第でそこに影は出来る。
結局、戦争って奴は、最終的に空を制した奴が勝つ事になる。
「なるほど……なければ作れば良い訳か。私の影で空から一方的に攻撃出来るとなると戦況は一気に有利になるな……」
よし! いい感じだ。
このまま姫様に持って帰ってもらおう。
「よし! すぐさま私用のグリフォンを用意させるとしよう!」
「いやいやいや! あるじゃん! 目の前に!」
何言ってんのこの姫様! さらに無駄遣いする気? 大丈夫かこの国。
「ハッハッハ、私のような影女にはこんな煌びやかなモノは似合わん。真っ黒な奴でも用意させよう」
「姫様、影はどうして出来ると思います? 光が有るから影は出来るのですよ。そんな影を自在に操るあなたは光そのものではありませんか! そしてその光の下には虹色に輝く土台が必要な訳ですよ!」
「そなたは、こんな影女が光の差す元だと言うのか……!? そんな風に言われたのは始めてだ…………ポッ」
よし! あと一押しだ!
「あっ、それ! 姫様の、ちょっといいとこ、見て見たい! はい! 皆さん、お手を拝借!」
オレのよいしょに気を良くしたのか、いいだろう、ちょっと乗っているとこを見せてやるって檻の中に入って行く。
ふう、これで一件落着だ。と思ったのだが、
――ベチッ!
背中に乗ろうとした姫様を尻尾ではたき落とすグリフォン。
「………………」
「あのぅ姫様、コイツは愛玩用で騎獣には向いてねえ奴だべさ」
だがこの姫様、決して諦めない。
今度は力を込めてグリフォンの背中を掴む。
そしてそのまま乗ろうとして……頭から落ちた。
グリフォンの奴、突然お尻を持ち上げて上手に払い落とした。
「………………」
「あのぅ姫様、やめたほうがいいだべさ」
ダダダダッって走った姫様、勢いを付けてグリフォンに飛び乗る。
かに思えたが、素早い動きでそれを交わすグリフォン。
尻餅をついて苦痛に悶えてございます。
グリフォン、鼻でフンッと笑う。
「おのれぇええええ!」
あれからどのくらい経っただろう。
もうすぐ日が沈む。
「師匠、オレに用事ってなんですか?」
「ああ、アレ持って帰ってくれないかな」
オレが指差す先、ボロボロになった姫様とグリフォン。
姫様、とうとうスキルまで出して押さえつけようとしたのだが、グリフォンの奴も死に物狂いで抵抗する。
結果二人ともあちこちぶつけて悲惨な状態に。
「…………いったい何が?」
察して。えっ、無理? ダヨネ。
「こないだの涙の件といい、今回の件といい……いったい姉貴はどうしちまったんだ? アレ、本当に俺の姉貴なのか? 誰か影武者がやっているんじゃないよな?」
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