レベル62

 次の日の朝方、なにやら布団があったかい。

 ふと見ると、どうやら誰かが入って来ている模様。

 またラピスでも、悪戯しているのかなと思っていたら、


 ――ガブリ


「イダダダダ!」


 思わず飛び起きた。

 隣を見ると、肩に食いついて寝ている、まっぱのロリドラゴン。

 おまっ、いつの間に!


 つーか、あったかいと思ったら、コイツ、おねしょしやがってる!


 オレの下半身と布団がぐっしょり濡れている。

 起きろこのクソドラゴン!

 引っぺがしてブン投げる。


「ガウッ?」


 くるりと回転して着地する。

 おい骸骨、なんでコイツがココに居るんだよ!

 オレ、寝ぼけて召喚でもしたっけ? いや、それは無い。

 じゃあラピスか?


「やってませんよ?」


 騒ぎを聞き付けてラピス達がオレの部屋に入ってくる。

 すぐに枕元にある魔道電話で骸骨に連絡を取る。


「ふうむ……昨日の晩はそりゃもう、うまそうに大量に食材を消費していたはずなんだがなあ」


 そう言う骸骨。

 ちゃんと就寝した所も確認した模様。

 と、いうことは、夜中に帰って来たのか?


「どうやって帰って来たの?」


 ってエクサリーが問いかけると、空を指差すロリドラゴン。

 空?

 と、ロリドラゴンが光ると姿が徐々に変わり始めた。


 そうして最後には……小さな本物のドラゴンに。


「かわいいぃ~」

「…………なでなで」

「なるほど……人になれるということは、ドラゴンになれてもおかしくはありませんね」


 ドラゴンの姿になって飛んで帰ってきたと。ほんと自由だな!

 オレにも触らせてくれよ。


 ――ガチンッ!


「ヒィイイ!」


 おまっ、さっきまで同衾してた仲だろが! ちょっとぐらい触らせろよ!

 えっ、くさいから寄って来るなって?

 これお前の、おねしょの所為だろが!


 ええい! なすりつけてくれる。

 ロリドラゴンは人間の姿になって逃げ回る。


「ちょっとクイーズさん、その絵づらはやばいッショ……」

「裸の女の子を追いかけているなんて……まるで変態だね!」

「仲が良いんだか悪いんだか……」


 なんて事があった日のお昼頃、


「えっ、サヤラの親父さんが帰って来ない?」


 などと相談を持ち掛けられる。


「そうなんですよ。パパどころかママもほとんど家に寄り付きません」


 サヤラのご両親は、元は魔法銃作りのプロフェッショナルである。

 なので、現在オレ達が作っている銃の作成過程を見てもらったのだが……

 工房から出てこなくなった。


 鍛冶屋さん達と、朝から晩までずっと頭を突き合わせてあーでもない、こーでもないと議論を繰り返している。

 最初はまあ、仕方ないか。で済ませていたのだが、一ヶ月以上経った今でも家に帰って来ないそうな。

 ちなみに今、アポロ達三人娘は、店の近場に簡単な修理が出来る、小さな工房付きのお店を建ててそこに寝泊りしている。

 そろそろ独立もいいだろうと、こっそりおやっさんが用意してくれたようだ。


 アポロの両親もサヤラの両親もそれを聞いて、そりゃもう大層おやっさんに感謝していた。


「アポロのご両親はどうなんだ?」


 アポロの両親は共に魔法スキルの持ち主であった。

 なので、アポロに変わって魔法銃作成の為の、魔法パートを担っている。

 最初は元領主様に、そんな事させて大丈夫かなと心配だったのだが、働けば働くほどお金が入ってくる事に大喜び。


 どうやら収監時代に強制労働させられていた模様。

 どんだけ働いても、一銭にもならなかったあの時代に比べれば天国だと言っていたらしい。

 まあ、偶に魔法を使うぐらいなのでさほどの重労働でもないし、無職で娘に養ってもらうよりマシなのかもしれない。


「…………私のとこは普通に帰って来てる」


 アポロの両親は夕方には戻って来てるそうな。

 時々話しに付いていけなくて困るわ~。みたいな事を言ってんだと。


「とりあえず様子見に行くか?」

「おねがいします」


 そうして工房に向かったのだが、


「ここだ! ここに風の魔法を込めれば! サイズ様! ここですよ!」

「うむ、落ちつこうか。お前は少々銃の事になると周りが見えなくなる」


 なにやら揉めているご様子。


「ああっ、火牛が居れば! もっと弾を量産できるのに!」

「いや、もう時代遅れだろう、魔法弾は?」

「そんな事は無い! サヤラの練成に頼らなくとも鉄の弾丸はもう作れる! ならば! さらにそれを改良して」

「うん、落ち着こうか。元主人の胸倉を掴むのはどうかと思うぞ」


 オレはサヤラとアポロの顔を見渡す。

 随分ひょうきんなご両親だな。

 アポロがはずかしぃって顔をしてる。

 サヤラに至っては目から光が消えている。


「あのう、エキサイトしているとこ申し訳ないのですが……娘さん達が心配しているそうでしてね」

「おや! これは若旦那! ごぶさたしてシャス!」

「いやすまないね、どうもコイツは昔からこんな感じでね。ほら、サヤラも心配していると言っているだろ、偶には帰ってやれ」


 アポロの父親とサヤラの父親はどうやら幼馴染らしい。

 どうりで仲がいい訳だ。

 そこへ、鍛冶屋の親父さんが現れてオレに言ってくる。


「クイーズ、カギュウってモンスターを取ってくるつもりはないか」

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