レベル57 第三章完結

 オレはゆっくりと用意されている椅子に腰掛ける。


「それじゃあ、交渉といきましょうか。おい骸骨、そこの邪魔な兵士をつまみ出してくれないか」

「ほほう?」


 ダンディが、王様を押さえつけてる兵士を持ち上げて放り投げる。


「どうしたんですか王様、早く座らないと交渉が始まりませんよ?」

「クイーズ……何を言って……」

「そちらの内輪揉めは正直どうでもいいんですよ。オレ達は今回の戦争の落とし前をつけに来ただけですからね」


 貴族連中がざわめく。


 ――――ドンッ!


「こっちゃ多くの血が流れてんだよ! お前らだけ無事で済む訳ないだろがっ!」


 一瞬静まり返ったかと思うと、貴族連中が、話が違うとか喚きだした。


『出でよ! ドラゴンスレイヤー!』


 机の上に出したドラスレがドスンと机を真っ二つにする。


「誰からこうなりたい?」


 ねえねえ王様よう、なんでまたこんなことしちゃった訳?

 えっ、隣の芝生は青く見えたって? だからって奪っちゃダメでしょ。

 うちも結構な人が死んじゃったんだよね。ちょっと引けない訳よ。わかる?


 などとウザい問答を繰り返した結果、


 即時王位を退去、第3国で幽閉。

 次期王は一人娘のパセアラが付くことになる。ただし、王としての権限は全て後見人であるダンディが行う。

 次に貴族連中。基本財産没収、特に今回クーデター起こした奴ら。信用ならん。

 貴族としての爵位も剥奪、したい所だがそれはやめた。窮鼠猫を噛むと言うしな。


 ダンディならうまいこと扱うだろう。


「ブン投げましたねお坊ちゃま」

「誰がなっても結局奴の操り人形だ。オレはごめん被る」


 あの骸骨も信用ならん。出来る限りレベル上げさせないようにしよう。


「2枚も使ったのに勿体無いですね」

「カードはそのうちまた増えるさ」

「でも一つだけ障害がありますよ」


 だよなあ……なんにも言ってこないのが翻って不気味だ。あの姫様。


◇◆◇◆◇◆◇◆


 私はほてった体を抱きしめる。

 最初奴が貴族と内通し、王を捕らえたときは、なんという卑怯者だと軽蔑したものだが……

 その全てが計算だったとは……


 今もまぶたを閉じれば鮮明に思い出される、ざわめく貴族達を剣の一本で黙らせたのを。

 アレこそ私の求める物ではないか!

 なんというか……かっこよかった……ポッ。


 イヤイヤ何を考えている私、コレでは内外に示しがつかんではないか!


 現体制がほぼ残っている上に、我が国の影響はとても少ない。

 ん、ダンディ殿ではないか。なになに……仕事の内容をわが国の……そうして用済みになると……お主、とんだ悪よのぉ。


「いやはや、さすがは我が主、完全にひっくり返されたどころか、それを利用して最善の一手を打ってこられましたな」

「どういう事だ?」

「王家の者をそのまま王位につかす事により、国民の不満を和らげ、しかしてその実、裏では我が国が実権を握る」


 しかし、本来ならそこにクイーズが付く事になる予定ではなかったのか?


「こう言ってはなんですが、貴女に我が主を御しきる自身はおありか?」


 ……出来る! と言いたい所だが甚だ疑問だ。なにせ私の心はすでに揺らいでいる。

 しかも次期王であるカユサルは奴に惚れ込んでいる。カシュアだってすっかり奴の下僕状態だ。

 ……はっきり言って勝てる気がしないな。イヤイヤ何を弱気な事を! 私らしくない!


「我々にとっては最善ではなくとも、我が国にとっては最善な結果となった」


 とはいえ、我輩はすっかり嫌われてしまったようですがな。とガッハッハと笑う。


「そなたは一体何者だ?」


 今回のやり取りと言い、互いを見る目と言い、どう見ても一介の上司と部下には思えない。

 それに、どことなく誰かに似ている気がする。


「遥か昔の開拓の民、とある国の始祖と呼ばれ、魔都サンムーンが王であった者、そう言えばお分かりになりますかな?」


◇◆◇◆◇◆◇◆


「……っ! 父上! 母上!」

「パパ! ママッ!」


 アポロとサヤラがご両親との感動のご対面でござる。

 どうやら子供が隣国に逃げ込んだのを危惧して、いざという時の為に生かされていたらしい。

 そしてオレは現在土下座中。


「面をあげてクイーズ」


 アポロの声が聞こえる。オレはそっと顔を上げる。

 すると、頬に暖かい感触が。

 ふと見ると離れて行くアポロの唇。


「…………ありがとう」

「私からも」


 今度は逆のほっぺに暖かい感触が。

 サヤラまでもがオレのほっぺにチュウをしてくる。

 マジですか! ハーレムはここにあった!


 あっ、すんません! 冗談ス! 自分エクサリーさん一筋ッスですから!

 そんな、どうやって殺そうコイツみたいな目で見ないでください!


「殺そうなんて思ってない……こともない」

「えっ!?」


「……クイーズがゼラトース家の長男だって気づいてた」


 こっちからも衝撃のお言葉が。


「気づいてないのはティニーぐらいです」

「「ええっ!?」」


 ティニーとオレが顔を見合わせる。

 だってよティニー、マジっすかクイーズさん。

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