レベル51 ☆

 えっ、いやあ、そのですね……姫様が勝手にですね……なんでも戦争が始まるそうでして……


「戦争と婚約と何の関係がある?」

「えーと実はオレ、その敵対している国の貴族だったんですよ」


 オレは、アポロ達にバレないかヒヤヒヤしながら語る。


「なるほどな、侵略後の国を治めるのにお前を利用しようとしている訳か……しっかし、戦う前から勝った気でいるのかその姫様」


 ええ、そりゃもう自信家なお方で。


「まあ、だったらそれほど難しく考えなくてもいいか。第一条件が他国の侵略なら現実味が無い上に、当分先の話になるだろう。その前においちゃんの娘と式を上げてしまえ」

「ウィッス!」

「でも姫様に、うちらの店が睨まれないッスかね?」


 む、それはまずいな。

 いっそのこと別の国で店を開きなおすとか?


「その姫様となんかあったのか?」


 なんかって? えっ、色恋沙汰? いや、ないッス。そんな雰囲気には一度もならなかったッス。


「じゃあ大丈夫だろ。そんなの別にクイーズじゃなくても代理はいくらでもいる」

「そうッスか。しかしこの時期に攻めて来るって言ったらやっぱあそこッスかね。で、クイーズさんは王様の代わりになれるぐらいの高位の貴族と。ん? なんか引っかかるような……」


 おっと、それ以上はまずい。

 ちょっとちょっとティニーさん、お話があるのであっちに行きましょう。


「ええっ、クイーズさんがあのバカな貴族の長男だってぇええ!」

「シッ、バカおめえ、声がでけぇえ!」

「モゴゴモモ・・」


 アポロとサヤラは両親が直接被害を被っているが、ティニーにおいては普通の使用人だったらしく、両親もいない孤児だったらしい。

 なので、まずはティニーにと打ち明けて見たのだが……


「領主様はうちにとって恩人ッスよ! 行く当ての無いうちを拾って雇ってくれた」

「正直すまんかったあ!」

「ちょっ、土下座なんてやめてくださいッス! クイーズさんほんとに貴族だったんスか?」


 またいつもの冗談でしょ? って言ってくる。

 誠に残念ながら本当の事だったりする。


「マジで?」

「マジマジ」

「いやでも貴族が土下座なんてしないっしょ。あいつら、たとえ自分が悪くっても、ふんぞり返っているッスよ」

「ほんとに冗談だったら良かったんだがなあ……」


 まあうちの主人はアポロ一人だし。

 領主様達からは奴隷同然に扱われていて、正直、ザマアと思わなかったこともない。

 なんて事を言っている。


 おまっ、さっきと言ってる事が違うぞ!


「それでもアポロの悲しい顔見るのはつらいッスよ」

「正直すまんかったあ!」

「だから土下座はやめて欲しいッス!」


 どどど、どうしよう。

 やっぱり、アポロとサヤラにも言ったほうがいいかな?


「いや、サヤラはともかくアポロには今は止めといたほうがいいッス」


 というか最後の最後でとんでもない爆弾落としてくれったッスね……と呟くティニー。


「これはさっきの修羅場どころじゃ済まないッスよ……クイーズさんは責任を持ってアポロを幸せにする義務があるッス」


 うっ、ごもっともで。

 と、なると、アポロにも一発逆転の目が残されて……とかブツブツ呟き始める。


「とりあえず今の所はうちだけの胸に秘めておくッス。あ、これリーダーは知って……るんでしょうね。今思えばそんな動きをしてたッス」


 ほら見ろラピス、怪しまれていたじゃないか!


「とにかく! クイーズさんは絶対アポロを幸せにする事! これだけは守ってもらうッスからね!」

「当然だ!」


 絶対ッスよ、と言って念を押しながらティニーは戻って行く。

 そこへ入れ替わりにラピスが入って来た。


「とうとう話しちゃったんですか」


 ああ、ティニーはどうやら勘が良さそうだからな。これ以上隠しておくのは無理だと判断した。

 サヤラはしっかりしているようでどこか抜けているし、アポロはあんな調子で向こう見ずだし、その分、ティニーがしっかりしている訳だ。

 まあ、ティニー以外はお嬢様育ちのようだから仕方ないといえば仕方ないが。


「さて、それでは今回の反省と今後の育成方法です」


 そう言ってカードを机に並べる。

 今のオレの手持ちのカードは……


『ラピス・オブ・アイリスブラッド』

 ☆7・レベル23

 スキル:超繁殖、カード統率

 備考:モンスターカード+1


『ドラゴンスレイヤー』

 ☆10・レベル6

 備考:竜種特効


『メタルスライム・スラミィ』

 ☆2・レベル14

 スキル:擬態


『プリンセスナイト・カシュア』

 ☆7・レベル11

 スキル:未来予見

 備考:天敵・オーク、アンデッド特効


『マンドラゴラ・ギター』

 ☆7・レベル4

 スキル:オート演奏


 となっている。

 尚、カシュアの10レベルのボーナスはラピスと同じく、ボーナスポイントが倍になっているだけだった。

 ギターが多少レベルが上がっているが、別にどっかのゲームのように、こいつを使って殴った訳じゃない。

 演奏していると自然にレベルが上がるようだ。


「やはり、圧倒的に使えるモンスターが少なすぎます」


 実質、戦闘可能なのはラピスとカシュアの二人きりだもんな。

 しかもラピスはともかく、カシュアはやっと物になってきたって所だし。


「5分の3がネタってどいう事でしょうかね?」


 スラミィまでネタ枠に入れてやるなよ。

 最近じゃ、単体でモンスターが狩れるようになったと言っていたぞ。

 というか、オレに言わせればスラミィ以外がネタじゃないかと思うんだが。


「早急に行わなければならないのは、カードの量産とカシュアのレベル上げですね」

「どうしてカシュアなんだ?」


 ラピスが言うには、カシュアは聖属性の魔法に適正が高く、回復魔法や解毒魔法を高いレベルで扱えるんだと。

 もっとレベルを上げればその効果も高くなり、今回の場合のような事態に陥っても対処が可能になるだろうと。


「私達にとってお坊ちゃまこそが生命線。いざという時、治療要員が居ると居ないでは大きく違います」


 となると、なんとかカシュアのレベルを20にしてカードの増産も狙うしかないか。

 だとすると、あそこに行くしかない訳で。

 結局あのダチョウもどき、あんま役にたたないんだよなあ。カードに戻す事が出来ないから、モンスターがウヨウヨ居る所には連れて行けない。


「大丈夫ですよ。きっとエクサリーも分かってくれます」

「お前の大丈夫は当てにならないからなあ……」

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