レベル31

 なんでも今回、2週間ぐらい会えなかった事が堪えたらしい。

 確かに、今までそんなに一緒に居なかった事はなかったからな。

 しかも、パーティメンバーはオレ以外全員女性? ときた。


 どうも気が気でなかったらしい。

 なので先ほども、おっぱい議論に発展したようだ。


「確かその、魔都サンムーンだっけ? 片道だけでも3日かかるんでしょ?」


 そうだな、行き帰りだけで一週間近くかかる。

 おいそれと行けないから、今回一週間の泊まり込みで稼ぐことにしたのだった。

 これが仮に、1日で行ける場所であれば……そんなに長期間店を開ける必要もないだろう。


「なるほどな……しかしパーティメンバー全員を運ぶだけの力を持つとなると……」

「そうです! ベビーベヒモスとかどうですか?」


 いや、無理だろ? なに言ってんのお前。

 下位とはいえ、仮にもドラゴン種、逆に返り討ちにされるわ。


「それならグリフォンとか! その翼で、高速移動ができますよ!」


 だからなんでそんな無理目なモンスターを選択するんだ?

 Sランクパーティですら手古摺るんだぞ。オレ達でなんとか出来る奴にしてくれ。


「え~」

「え~言うな」


 やっぱ定番は馬型なんだろうか?


「いや、馬はやめといたほうがいいよ、手間が掛かるからね。専属の人を雇うなら別だけど」


 カシュアがそう言ってくる。

 そういや前世でも、馬の飼育は難しいって言ってたような気もする。

 定期的に蹄のメンテナンスをきちんとしないと駄目だし、エサ代も半端じゃない。というかここらで馬のエサなんて売ってない。草原に出そうものなら逆にモンスターの餌となる事必須。

 最後に出すものの量が半端じゃないとも聞く。


「何々? 移動に適したモンスター? だったらおいちゃんにとっておきのお勧めがあるぞ」


 そこへ、商品の仕入れが一段落したおやっさんが部屋に入ってくる。

 そして一冊の本を持ち出し机においた。


「こいつだ。ダチョウ型のモンスターでビックフットって奴だ」


 なるほど、ファンタジーには定番の乗り物、ダチョウ型モンスターですか。


「でもこんなのじゃ、一人分にしかならないじゃないですか?」


 だったら数を増やせばいい。とおやっさんが言う。


「この国じゃ行商は危険なのであまり見かけないが、内地の国ではこのビックフットが大人気なんだ」


 なんでも、体はさほど大きくないが足の力が半端じゃなく、少々重い物でも引いて走る事が可能だとか。

 また、雑食で燃費が良く、非常に手間が掛からないモンスターとして人気があるとか。

 商人を始めるにはまずこいつを一匹買って荷台を引かせ、あちこちに売りに回る。

 金が溜まってきたら数を増やし、荷馬車のようなものを作りそれを引かせるんだと。


「別に全部をカードにしろって訳じゃない、最初の一匹以外は普通のモンスターでも問題ないだろう」


 なるほど、カードにした一匹をボスとして群れを引かせると言う訳ですね。

 さすがおやっさん、冴えていらっしゃる!

 さっそく明日からビックフットを求めて冒険の旅に出発だ!


 などと思っていたその日の深夜、ドンドンと店のドアを叩く音に目が覚める。

 なんだろなって出て見るとそこには――――アポロを担いだサヤラとティニーが、血まみれで立っていた!


「どうしたお前達!」

「アポロが、アポロが……クィーズさん! どうか、アポロを助けてください!」

「お願いしますっ! アポロが死んだら……うちらは生きてる意味が無いッス!」


 どうやら3人に付いてる血は全部アポロの物らしい。

 そしてそのアポロは顔から血を流してぐったりとしていた。


「おやっさん! おやっさん! ちょっと来てください!」


『出でよ! ラピス・オブ・アイリスブラッド!』


 オレはすかさずおやっさんを大声で呼び、ラピスを強制召喚する。

 呼び出されたラピスはすぐに状況を把握し、アポロを担いで医務室へ走る。


「お坊ちゃまカシュアを呼び出してください」

「あ、ああ」


『出でよ! プリンセスナイト!』


「カシュア、回復魔法を!」


 なるほど、カシュアはどう見たって聖属性。カシュアの回復魔法なら!


「え、ああ、分かった! よし、任せてくれたまえ! ……回復魔法ってどうやって使うの?」


 使えないんかい!

 ラピスは自分も回復魔法を唱えながら、カシュアにその方法を説明している。


「先生を連れて来たぞ、それとコレ、ありったけのポーションだ!」


 おやっさんが近場の診療所から医者を連れて来てくれて、さらに店のポーションまで用意してくれた。

 だが、その甲斐もなく、徐々に体温を失っていくアポロ。


「アポロッ、しっかりしてアポロ!」

「ぐすっ、アポロが死んじゃう……」


 くそっ、なんとか出来ないのか!

 オレのモンスターカードで……しかし、それにはアポロをアンデッドにする必要がある。

 カシュアは偶々だったが、そんな事……

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る