レベル20

「……随分な自信だね、このカードがあれば、もしかしてそこを脱出が可能だと思っているのかい?」

「どうでしょうかね。無いよりは有ったほうが可能性が上がるのは確かですね」

「ならば、尚の事、これは渡せないね」


 まあ別に、くれなくてもいいけど。普通に取り戻せるし。


「それではせめて、武器と防具ぐらいは頂けませんかね」

「どうしても私の部下になる気はないと?」

「信頼関係が築けない上司はちょっと……」


 不機嫌そうになったその人物は、そうなればこれは用済みだな、と言って、手に持った輪っかを投げつけてくる。


「そいつは使い捨てでな。一つにつき一人だけしか設定できん。おい、その鎧と剣をくれてやれ、餞別だ」

「えっ、コレ結構な掘り出しモンなんですが」

「ずべこべ言うな。私の命令が聞けないのか?」


 隣の兵士さんが、シブシブといった表情で鎧と剣を投げつけてくる。

 よしっ、結構な掘り出し物の装備をゲットだぜ!

 オレはその武器と防具を身に付ける。

 その後すぐに、飛んできた輪っかとチョーカーを剣で斬りつけて壊してやった。


「さてと、それじゃあ、それも返してもらいますか」


『モンスターカード!』


 オレがそう言った瞬間、兵士がもっていたカードが消滅し、オレの目前に3枚のカードが浮かび上がる。


「なにぃ! 貴様!」

「あれ、言ってませんでしたっけ? このカードはどこでも自由に出し入りが可能だって」


 ふふっ、慌てている、慌てているな。

 一泡ふかしてやったぜ!

 とはいえ、これでどうにかなるとは思えないのだが。


「く、クイーズ君とかいったか、そ、そのカードがあれば、ここを脱出する事が可能なのかね?」

「……言おう言おうとしていたのですが、実はこのカード、すべて埋まってしまっているんですよね。なので、これ以上モンスターをゲットする事が出来ません」


 ガビーンって表情を向けてくる王子様。

 面白いんでやめてもらえませんかね?


「フッ、驚かせおって。まあ精々頑張るんだな。おい、魔方陣を止めろ」


 魔方陣の輝きが止まり、その上に居た兵士も消えて居なくなる。

 とたん薄暗くなる部屋の中。


「ど、どどど、どうしたら……」


 慌てふためいた王子様が縋り付いてくる。


「ききき、きみぃ、なんとか、出来ないのかね?」


 なんとかと言われましてもね。

 幸い部屋の中まではモンスターは居ない模様。

 しかし、扉を開けると雪崩れ込んでくる事請け合い。


「とりあえず、明かりとかなんとかなりませんかね?」

「ど、道具は全部、兵士達が持っていたんだ。ボクにはこの剣ぐらいしか……」


 とりあえず王子様、働けないんで、その剣貰っていいですか?


「えっ、いや、この剣は由緒正しい物でね。ボクが王子である証にもなるもので……」

「命あっての物種でしょ?」


 剣を抱いたままイヤイヤって後ずさる。


「きっ、君には、すでに剣があるじゃないか」

「ああ、今から一人召喚しますので、その者に持たせようと思いましてね」


 なんせ呼び出した時は――――レオタード一枚ぽっきりだからな。


『出でよ! ラピス・オブ・アイリスブラッド!』


 オレ達の前に光が集まり、そこにポンと一人の女性が現れた。

 その女性はオレを目にすると、突然抱き付いてきた。


「お坊ちゃま! 心配しました! ご無事で何よりです!」

「いや、そんな大げさな」

「なにが大げさですか! どんだけ心配したと思っているんですか! エクサリーなんて形相がもう人間のソレじゃなくなって居たんですよ!」


 アレはもうオーガか怨霊かってレベルでした。って力説する。

 いや、今そんな力説されてもな。


「いや、あれは怖かったです。まあ、私も表のドラスレ(笑)も無事だったので、命に別状はないと思っていましたが……」


 (笑)って入れてやるなよ。

 アレはアレですごく役に立っているだろ? 武器としてじゃないけど。


「それでも心配で心配で。とにかく何かあれば私を召喚するだろうと、部屋で全裸待機していた次第」


 なぜに全裸?


「だってカードになったら全部脱げちゃうでしょ?」


 いやまあそうだけどさ。

 おやっさんとか入ってきたらどうするんだよ?


 と、そこへ震える指をオレ達の方へ向けて来る王子様。

 コラコラ、人を指差しちゃダメですよ?


「な、な、な、なんて破廉恥なカッコをさせているんだ、君はっ!」


 えっ、そっちですか?

 いやまあこれ、自動的にこうなっちゃうんでしょうがないんですよ。

 とりあえず剣、頂けますかね?


 動揺しているのか素直に剣を差し出してくる王子様。


「鎧は頂けないのでしょうか?」

「お前、そんな成りでもオレより防御力高いだろ?」

「いやまあそうですけど」


 レオタード一枚で戦うのはどうなんですかねって言ってくるラピス。

 いや、オレの前世では、女戦士は基本レオタードだった記憶があるぞ。なぜか。

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