『モンスターカード!』で、ゲットしてみたら
ぬこぬっくぬこ
プロローグ
レベル1
『モンスターカード』
そう水晶に文字が浮かび上がっている。
それを見た瞬間、オレは雷に打たれたような衝撃があったかと思うと、様々な事が思い出される。
そうオレは、異世界転生を果たしていたのだったのか。
◇◆◇◆◇◆◇◆
スキル、というものが存在する。
それは、持っていない人も居れば、複数持っている人も稀にだが居る。
そのスキルは『封印』という形で人々の中に眠っている。
赤子が無意識に使わないよう、子供がお遊びで使わないよう、厳重に封をされていると聞く。
その封印を施したのは、神か悪魔か。はたまた賢者と呼ばれる遥か高みに居る者達か。
それは分からない。
だが、誰しもが封印された状態で生まれてくる。
その封印を解く方法は一つ、最高難易度の解呪の儀式、解呪の宝玉と呼ばれるものを用い、最高レベルの神官達の魔法による開放。
無論、それには高額な料金がかかる。
それでも、スキル持ちになれれば世界が変わる。
ただスキルがあるというだけで、無一文から億万長者になった者も居る。
あるかどうかも分からないスキルの開放に、大金をつぎ込む者は後を絶たない。
数年先まで予約がギッシリだ。
そんな儀式に、オレは家の力を持ってねじ込んでもらった。
しかもだ、本来成人と認められる15歳からしか受けられないものを、10歳のこの時に。
なぜなら、オレにはスキルがある。という自信があったからだ。
しかも普通のスキルではない。
数多くあるスキルの種類に『天啓』というものがある。
別に神様のお告げを聞けるとかそういうものじゃない。
このスキルは、ここではないどこか、そう別世界の知識を知る事が出来るものなのだ。
とある『天啓』の持ち主は、この世界に、魔法という存在をもたらせた。
とある『天啓』の持ち主は、この世界に、未知なる鉱物の作り方をもたらせた。
その誰もが、国の王となり人々を率いていく事になる。
それほど絶対的なスキル。
オレにはそれが備わっている。そう確信していた。
幼少より、ふと思い出される、見たこともない景色。
海には城のような鉄の船が浮き、大地には馬の数倍の速度で走る鉄の箱があり、空には数百人を乗せた鉄の鳥が飛ぶ、そんな世界。
ふと夢の中で、ふと空を見上げていたときに、ふと友人との会話中に。
だからオレはそれを、封印からもれている『天啓』のスキルだと、そう信じ込んでいた。
だというのに……
『モンスターカード』
そう水晶に文字が浮かび上がっている。
全然天啓関係なかった。カスリすりゃしていない。
いや待てよ、スキルではないが、オレの頭の中には前世での異世界知識が詰まっている。
ということはだ、天啓のスキルなしでも、それと同様の事が可能なんではないだろうか?
それにモンスターカード、たぶんオレの予想では、モンスターと戦い、敵を弱らせればカードとしてモンスターを使役できる。
前世で某ゲームをさんざんやりつくしたオレにとって、理想的なスキルではないか。
強力なモンスターをどんどんゲットしていけば、どんな敵がいたってへっちゃらだ。
数をそろえれば一軍だって編成できる。
しかも、カードつーことは、モンスターにかかる餌代、飼育代、はては移動費だってかからない。
これがあれば、それこそ一国を作る事だって夢じゃない。
だがオレは、その事を正直に告げたことを後悔する事になる。
「モンスターカード? 聞いた事あるか?」
「どうやら初出のスキルのようでございますな」
「初出ということは、天啓のスキルと関係があるのか!?」
天啓のスキル保持者が生まれた近辺では、新たなスキルが無数に生まれると言われている。
魔法が世界に生まれた時には、その魔法に関するスキルが百近く生まれたとも。
期待を込めて、神官の一人がオレにスキルの効果を尋ねてくる。
「えっ、モンスターを操る……? それだけですか?」
「えっ、それだけって、これがあればですね」
その瞬間、オレは右頬を殴られ吹っ飛ばされた。
振り向いたオレが見たのは、鬼の形相をした一人の少女だった。
「信じて、いたのに。どんなにダメでも、嘘だけは、言わない人だって思っていたのに……」
その少女はこの国の皇女、オレの婚約者となる人だった。
「全部、全部、嘘だったの? 鉄の船が空を飛ぶとか、戦争のない平和な世界とか」
「ちっ、違う、それは前世の記憶で」
「まだ、まだ、嘘を重ねるの?」
オレは必死になって弁解する。
天啓のスキルなんてなくたってオレには、異世界で暮らした前世の記憶がある。それがあれば……
あれば……なにか出来るのか? ふと、思い当たる。
天啓のスキルならば、その原理まで知ることが出来る。
だが、オレの記憶はどうだ。
鉄が空を飛ぶことを知っている。だが、その作り方は?
ペチリと、オレの左頬が力なく叩かれる。
いつの間にか俯いていたオレの顔が上がる。
その目には、涙を湛えて悲しそうな顔の少女が映る。
「さよなら」
そう言うと少女は走り去って行った。
それと同時、周りの人達からも非難の声が上がる。
どうやら現世のオレ、だいぶやらかしていたようだ。
冷静になって思い返してみる。
自分は天啓のスキル持ちだと選民思想の塊であった。
友人には威張り散らす。
家族には自分に期待して当然とばかり振舞っていた。
少々、いやかなり、性格の悪い子供になっていたかもしれない。
ああ、そういやオレ、前世でも調子にのりすぎて、いっぱい失敗したっけかなかあ……調子にのりやすいとこは転生しても変わらないっすかぁ……
今回も家族に無理言って大金をださせ、順番待ちをしていた貴族を蹴落として……やべえ、オレ生きてここから出られるかな?
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