増えすぎ! 共同戦線!
ちびまるフォイ
戦隊ヒーローにも物申す
ついに戦いはクライマックスを迎えていた。
「グハハハ。最初の町でゴブリンを倒すのがやっとだった貴様が、
今ではワシに剣を向けるまでに成長しようとはな。
冒険者よ、正直に貴様の成長は驚いたぞ」
「はぁっ……はぁっ……!」
「しかし、ワシに歯向かうにはまだまだ力が足らぬようだな」
「くそっ……こんなところで……!!」
「せめて苦しまないように、一瞬で仕留めてやろう!!」
魔王は上級魔法を唱え、冒険者を消し炭に変えようとしたそのとき。
颯爽と人影が二人の間に入ってきた。
「おっと、そうはさせないぜ!!」
「お、お前は……!! ライバル!!」
「フッ、てめぇのことはまだいけ好かなくて大嫌いだが、
てめぇが死んじまったら俺たちの決着がつけられねぇからな」
「フン、人間ごときが1人増えたところでッ……!」
「冒険者、言っておくがてめぇの仲間になるつもりはねぇ。
ただしこの場だけは力を貸してやる」
「ありがとう、ライバル!! いくぞ!! うぉおおお!!」
冒険者が力を放とうとしたその時、突然光が差し込んで人影が飛び込んできた。
「私の出番のようだね」
「あなたは……宿屋の店長!!!」
「お楽しみのようですな、私も力を貸しましょう」
「どうしてそこまでしてくれるんですか!?
正直、一泊しただけで関係はうすいんですけど!!」
「この世界を救うのと、女児が好きなことに理由がいるんですか?」
「っしゃあ! 全員で最強の攻撃をアイツに叩き込んでやろうぜ!」
「ああ!!」
冒険者とライバルと宿屋の店長は力を合わせて最後の攻撃を放った。
と、そのとき、ワープホールが現れて、中から人影が!
「僕の出番のようだね」
「途中で死んだマサトシじゃないか!! どうして!?」
「死んだと思っていたかもしれないけど、
胸ポケットに入れていたペンダントでなんとか一命をとりとめたのさ」
「でも、お前の死因って毒で死んでなかった?」
「ペンダントの力でよみがえったのさ! それに僕だけじゃないよ!」
マサトシが天に向かって手を上げたとき、次々にかつての仲間たちが空からやってきた。
「さぁ、世界を救おうか」
「最初は強かったのに弱体化してパーティから外れたタケル!!」
「あたしの魔法を見せてあげるわ」
「○○編だけで出てきて、以降の出番のないヒロインのマサコ!!」
「わんわん!」
「実家の柴犬!」
「ワレは炎帝ドラグニール!! 世界の終焉の告げるものなり!」
「この後の展開で出てくるボス!!」
次々に仲間たちが冒険者のもとに集った。
「みんな、ありがとう!! さぁ、魔王を倒そう!!」
「「「 おぉーーー!!! 」」」
「待って待って! ストップ!!」
魔王は慌ててイケイケな空気を止めた。
「え、ずるくない? そっち多すぎない? こっち1人だよ」
「お前は魔王だろ」
「いやいやいや、だとしてもそっち多すぎじゃん。
すでに魔王城の魔物よりもお前らのほうが多いからね! ずるいよ!」
「うるさいな、さっさと死ねばいいんだよ」
「いや、この人数じゃリンチだよ! 世界を救う方法がリンチってどうなの!
後世までこの戦いは語り継がれるとして、総勢何百名の人間が魔王フルボッコだよ!」
「うっ……それは確かにイマイチだな……」
冒険者も自分の名誉が傷つくのだけは避けたかった。
のちに建てられた銅像に「ひきょうもの」とか落書きされてほしくない。
「ということで、ズルなしの代表者同士のタイマンで決めようか」
「世界の半分をやるとか提案する前にそういうこと言い出すんだ」
「半分とかいいながら、お前70%くらい持っていきそうじゃん」
魔王と冒険者は相談の結果、お互いの一騎打ちで勝負を決めることにした。
これなら助けに来てくれたというか、手柄欲しさに合流した過去の仲間たちも納得。
「じゃ、最初から……こほん。
グハハハハ!! せめて苦しまないように、一瞬で仕留めてやろう!!」
「くっ……このままじゃ負ける!! みんな、持っているすべての魔力と装備と
アクセサリーとアビリティと、なんらか力に変えられるものを貸してくれ!!」
冒険者は仲間たちからすべての力を引き継いで、完全体へと覚醒した。
全員で倒しにかかる以上の力を手に入れる。
「おまっ……!! 一騎打ちって言っただろ!!」
「ルールは守っている。すべての仲間から力を貸りただけだ!!
さぁ、魔王よ!! このまま消し炭となって消えろーー!!」
冒険者はまがまがしい巨大な魔法を魔王に向けて放った。
魔王が光に包まれチリへと化す。
その瞬間!!
光の中から颯爽と登場した。
「魔王様、あっしの出番のようですなっ!!」
「最初に冒険者に倒されたゴブリン!! 生きていたのか!!」
ゴブリンの参戦に冒険者たちは一斉に声を上げた。
「「「 おい! 仲間を増やすなんて卑怯だぞ!! 」」」
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