百合る。
鳴響 杏
異世界系百合 Lv1
魔族と人間の戦いが終結して早二年。
魔王である私は勇者の監視下に置かれていた。
それ自体は構わない。
いや、構わない訳じゃない。
魔王の誇りが許さないが今は置いておく。
私は魔族の中でもサキュバスという種族だ。
体からフェロモンを出し、相手を誘惑して喰らう。
そのフェロモンは魔力があれば魔力とフェロモンが互いに干渉し合って制御されるのだが...。
今の私は勇者に敗れ、魔力をほとんど失った状態。
つまり何が言いたいかというと......。
勇者「魔王、好き......。」
同性である勇者を魅了してしまう程度にはフェロモンがダダ漏れということだ。
幸い(?)私は勇者宅に幽閉されており、被害は勇者だけで済んでいるのだが...。
勇者「魔王、ご飯できたよ...?」
魔王「ん、ああ今行く。」
勇者「今日は魔王の好きな春巻きを、作ってみました...!」
魔王「おお、これは嬉しい。」
勇魔「「いただきます。」」
魔王「......。」パリパリモグモグ
勇者「...おいしい?」
魔王「ああ、美味い。」
勇者「そ、そっか...。えへへ......。」
魔王(可愛い。)
二年間一緒に暮らしてみて分かったのだが、この勇者は新妻感がすごい。
料理も上手だし、全体的に家事スキルが高い。
というか甲冑を身にまとっているよりエプロンを着ている方がしっくりくる。
風呂を共にすることがあったり、この前は布団に潜り込んできたりもした。
魔王「なんだ夜中に...。」
勇者「えへへ......魔王のにおいがする.........。」ゴソゴソ
魔王「なんだ?寝ぼけているのか。」
勇者「.........。」スウスウ
魔王(可愛い。)ナデナデ
いや、それはいい。
新妻力が高くて可愛い勇者がいても別にいいだろう。
一番の問題は何かというと...
魔王(何で私まで、惚れちゃったかなぁ......。)
だんだんと勇者にほだされ、惚れていっている自分が居るということだ。
考えてみれば身勝手な話だ。
種族の特性上仕方ないとはいえ、今の私たちの関係はフェロモンによって強制的に勇者の好意を私に向けているだけ。
しかも同性同士だ。
なんと歪な関係だろう。
勇者ほどのいい女なら私のような者ではなくもっと良い相手も簡単に見つかるだろうに。
そんなある日の事だ。
勇者「ねえ魔王、結婚...しない......?」
魔王「!?」
勇者「今度、同じパーティーにいた娘が結婚することになって...。」
魔王「......それで私たちも...ってことか?」
勇者「うん。私たち両思い...だよね?だからそろそろって思って。」
勇者から結婚が持ちかけられた。
サラッと好意がばれていた旨の発言があった気がするがそれは今はいい。
私なんかが勇者と結婚するわけにはいかない。
このままなし崩しに結婚なんてしてしまったらそれこそ戻れなくなる。
なんだかんだ理由をつけて後回しにしてきたが、説明をするときが来たのかもしれない。
魔王「な、なあ勇者。」
勇者「うん。」
魔王「私と勇者は結婚するべきじゃないと思う。」
勇者「え...、」
魔王「私の種族のことは勇者も知ってるよな?」
勇者「うん、サキュバス...だったよね...?」
魔王「勇者の私への好意は、たぶん、私によって作られた物なんだ。」
勇者「作られた...物......?」
魔王「ああ、勇者との闘いで魔力のほとんどを失って、フェロモンが制御できなく なって...。」
勇者「そのフェロモンに私があてられちゃったってこと...?」
魔王「そう...なるな。」
勇者「でも、私は魔王のこと、好きだよ...?」
魔王「だからそれは作られた感情で...」
勇者「......あのさ、いくらなんでも二年間の間全く魔力が回復しないなんて事は無い と思うんだけど...。」
魔王「え...、」
勇者「確かに、この感情の始まりはフェロモンだったのかもしれないけど、私は今で も魔王のこと、好きだよ...?」
魔王「でもそれは...!」
勇者「魔王は、私の事嫌い...?」
魔王「ぐ...それは......。」
勇者「じゃあ魔王、キスしよ?」
魔王「え...、」
勇者「いいから、誓いのキス。」
魔王「い、いくらなんでも急すぎじゃないか!?」
勇者「魔王がへたれてるのがいけないんだよ?」
魔王「そ、それは私のようn...んむっ!」
不意に、唇に桜色が触れた。
その日から、勇者と魔王は夫婦になった。
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