月人ともに

 久しぶりに家でのんびりしている。

 これが本来のあるべき姿なんだろうけど、ここ最近は新規開拓に手を出した会社の残業続き。この時間にいることが奇跡に感じる。

「家に早く帰れるのと隕石に当たる確率どっちが高いかねー」って笑った先輩もいた。

 そんな先輩も今日は

「久しぶりに遊べるぜー」

 飛んで帰って行った。

 隕石に当たらなきゃいいけど。

 早く帰れる理由なんて知らない。どうせ聞いても分からないし。

 それよりもただのんびりと空を眺める。取り柄無い僕の大好きな時間。つまらない、なんてつまらない人間の去勢だろうよ。

 そんなもの僕には関係ない。

 家にいながら、家族の声を聞きながら、空を眺めるのが大好きなんだ。

 別に孤独だとか独りの強がりなんかじゃない。

 ほらトタトタと、足音がやってくる。

「お兄ちゃん何見てるの」

 本日のお客は都市離れた従兄弟だ。

「今日お兄ちゃんがいてよかった」

「今日は偶々早く帰れたからね」

 都市が離れた従兄弟の家族は時たま家に遊びに来る。向こうにこっちの予定は話してないから、こうして会えたのは運がいい。僕にこそ隕石が落ちるかもしれない。

「今日は綺麗に見えるね」

 指差す先には、誰もが知ってる星。その昔はお姫様もあの星に行って帰ってきたらしい。そんな昔話を利かしてくれたのは誰だっけ。

「いつかあそこまで行っていたいなぁ」

「そうだね、大きくなったらいけるだろうね」

 昔の人はよくあの星に行っていたらしい。今は誰も行けない、行ってはいけない特別な星だけど。いずれまた行けるようになるかもしれない。

「その時にはお兄ちゃんも一緒にね」

 隣で笑う従兄弟の頭を撫でる。当たり前だけど、僕と従兄弟の知識、常識は違う。

「うん、一緒に」

 小さな子供の無邪気さは今の僕にはとても眩しい。それでも嬉しくて、だから僕もつられて笑った。

 僕らはしばらく。

 青に白が渦巻く綺麗な月を眺めてた。

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