第25話 里見内乱
早雲が死んだ。北条初代は歴史通りの英雄だった。
風魔の四人は主人あるじの言葉が間違っていなかったことを知る。
北条氏が関東の覇者となるのもそう遠いことではないだろう。
「どうしてご主人様はあんなことを知っておられるのでしょうか。」
「あるじ様は、人間を超越しておられるからな。未来のことを知っていたところで私は驚かない。」
「それもそうですね。」
そんな風に語らう小太郎と愛だったが、はたから見ると大層仲睦まじい。
銀孤と使用人達はほっこりしていた。
将門はまだ察していなかった。
だめだこいつ早くなんとかしないと。
北条家を継いだのは嫡男氏綱ちゃくなんうじつなだった。
早雲の時代からの善政を守っているため、住民からの評判は上々である。
ここでこの時代の勢力図について説明しておこう。
相模は北条氏の支配下である。
伊豆以西の静岡は今川。山梨は武田。
東京は
千葉は上から
今川の武将として身を起こした早雲から続く関係上、北条家は今川家と密接な関わりを持っている。
同盟を結んでいると言っても差し支えない。
そのため、次に狙うのは東京の扇谷上杉氏一択であった。
国内は安定している。ならば外を狙うだろう。
東京は大和杉のお膝元だ。
置いてきた形となってしまった風魔の四人にとって、負けることのできない戦いである。
四人は奮起した。みるみるうちに扇谷上杉氏は追い詰められて行くのであった。
が、その快進撃が周辺諸国の警戒を呼ぶ。
扇谷上杉の当主の外交調略により、北条氏を囲む武田氏、山内上杉氏、小弓公方、真里谷武田氏、里見氏。
この5つの勢力が敵となってしまった。
まさに四面楚歌状態である。頼れるものといえば西の今川だけと言った有様だった。
どうしようもなくなった氏綱は風魔小太郎を呼んだ。
仕えるようになったきっかけは警戒すべきものであるとはいえ、すでに40年の長きにわたり北条を影から支えているのだ。
当主と二人っきりで面会しても構わないと思われるくらいには信頼されていた。
「しかし、小太郎。お主は歳を取らぬのう。私が子供の時からその姿のままだった気がするぞ。」
「お戯れを。私とて人間。老けておりますよ。」
軽く流す小太郎。内心では歳をごまかす対策を考えなくてはと考えていた。
「してじゃ。今日お主を呼んだのはほかでもない。今我々を包囲している勢力に内紛を起こして欲しいのじゃ。」
「内紛と言いますと?」
「お家騒動と言い換えても良い。家臣中に疑心を撒き散らすのじゃ。力が削がれれば我々にも活路はある。」
「なかなか危険な任務ですな。」
「だからこそお主らに任せるのじゃ。風魔なら朝飯前じゃろう。」
「過分なお言葉、感謝いたします。」
「順番は、そうじゃのう。里見、真里谷あたりを頼む。あそこは勢力も小さい。潜り込むのに苦労はせんじゃろう。」
「はっ。」
小太郎は頭を下げた。
もともと丁寧な小太郎にとっては本当の主人以外に頭を下げるのは朝飯前であった。
輝夜とか将門とかはこの限りではないので、彼がリーダーでよかったのだろう。
四人は夜半こっそり東京湾を渡り、房総半島についた。
いつものごとく愛の技能「諜報」をフル活用していく。
どうか休ませてあげて欲しい。
まあ、戦国の間は休む暇などないだろうが。
情報は集まった。
彼らは行動を開始する。まずは
北条の人間である風魔にとってはまことしやかに語ることなど簡単だった。
銀孤の正体は九尾の狐である。彼女は様々な人物に化けて噂を流していった。
里見義豊は
将門である。
これに対抗して、
小太郎である。
暗殺者も護衛も身内であった。里見家の危機管理はガバガバだ。
逆にいえばこの四人が優秀すぎるのだろう。
将門による暗殺は成功した。小太郎は護衛の仕事をしなかったのだ。
重臣を守ることと殺すこと。
どちらの方が里見の力を削げるかといえば簡単だろう。
小太郎の人外じみた実力を完全に信用していた
正木通綱もまた、将門の凶刃の元に倒れた。
こうして、里見家の力はかなり削がれた。
だが、それだけでは満足しなかった。やるのならば完璧に、だ。
彼が親の
愛が接触する。忍術の有能さは異常。
仇討ちならば、北条が後押しするという文書を渡した。
これは技能「雲乗り」で一旦小田原に戻った小太郎が氏綱からもらってきた本物である。
まだ計画段階だった反乱が軌道に乗った瞬間であった。
この反乱が実を結び、「仁者必ず勇あり」と謳われた里見五代目、
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