第16話 SS 避雷針

 

 ゴロゴロゴロ。


 空が不気味に鳴っていた。


 天気が悪い。暗い雲が俺の上を覆っている。


 運が良かったのか、神様の加護か。


 まだ、俺の上に雷が落ちて来たことはない。


 だが、いつ落ちてくることか。俺は戦々恐々としていた。


 林業に従事していた間に、雷に打たれて折れた木は何回も見ている。


 確率は低いが、当たったらアウトだろう。


 第一俺はこの広い関東平野のど真ん中にポツンと立っている。どうして今まで当たらなかったのか。


 実は俺は超高校級の幸運だったのか。


 だが、今まで当たらなかったからといって、これからも当たらないとは限らない。


 今も上でゴロゴロ言ってるし。


 バリバリッッドガァアアアアン

 音と光が一気に来た。


 俺の中を電気が通り抜けていく。


 ビリバリとしびれを残して地面に達する。


 折れなかった。運が良かった。


 だが、もっと強ければ確実に死ぬ。


 避雷針を作らないと。


 頑張れ俺の頭脳。思い出せ。


 あれはどんなものだったんだ⋯⋯!


 マンションの講習会の記憶が蘇って来た。


 うつらうつらしながら聞いていたが、避雷針の仕組みについて解説していたはずだ。

 確か。確か⋯⋯。


 まず、金属の棒を一番高いところに取り付ける。

 それにケーブルをつけて、地面の金属体に接続し、電気を通す。


 抵抗の少ない方に電気は流れるので被害はない。


 確かこんな感じだったはず⋯⋯!


 金属なんてどう用意しろってんだよ。無理だよ。

 俺は諦めた。


 俺は運がいい。俺は運がいい。


 自己暗示をかけて恐怖を減らす。


 さあ今日も雷に立ち向かうぞ!


 ●


 輝夜の技能「黄金生成」が使えると判明した。

 お願いしてみる。

 避雷針、作ってくれない?


「なにそれ。」


 それはそうだ。わかるわけない。

 俺はわかる限りを説明した。


「なるほどね。」


 理解したみたいだ。この子頭いいな。

 俺は感動した。


「すごいぞ輝夜!」


 口に出した。


「とっ、当然よ!」


 照れてる。可愛い。


 避雷針に最適な黄金を作るのは大変みたいだ。


 それでも輝夜は頑張った。金の棒。金の糸。金の塊。必要なものがちゃんと生み出された。


 技能「雲乗り」が使える小太郎の協力を得て、彼女は俺の一番上に金の棒を設置した。


 そして金の細い糸を地面まで垂らす。600mもの長さを誇る金糸だ。見つかったら大変だ。

 早いとこ樹皮の中に取り込もう。


 最後に金糸の先に金塊をつける。それを地面に埋めて、避雷針の用意は完璧だ。


 全部純金でできた避雷針という謎物体ができてしまった。なんだこれ。見つからないようにしよう。



 塗装をいい感じにすれば見えなくなるはず。



 あ、やべえ。見つかった。俺の樹皮についている金の線がひっぺがされる。

 金太郎効果で集まって来た金の亡者の嗅覚が半端ない件について。

 うん。ほとぼりが冷めるのを待とう。



 また今度同じものを作ってくれ。よろしく。




 これから1000年ちょっと世話になる純金避雷針はこうして作られたのだった。

いや、早く置かせてくれ。雷怖いんだが。


 愛に頼んで、近づかないようにしょう。技能「諜報」ならいけるはず。


「かなり無茶振りですからねそれ。」


 愛は文句を言いながらも実行してくれた。


 有能である。

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